サミットを機に急速に露出度を高めているキーワード
「質の高いインフラ投資」は、今回のサミットを機に急速に露出度を高めているキーワードです。
サミット開催直前の2016年5月23日、安倍首相が2017年からの5年間に約2,000億ドル(約22兆円)を世界全体のインフラ分野に投じる考えを表明しました。また、アジア・アフリカなど7か国の首脳らが参加し、27日に行われたサミット拡大会合でもこのテーマを中心とした議論が行われたことが背景にあります。
インフラ投資という言葉は以前からありましたが、”質の高い”という枕詞付きで表現されるようになったのは最近の出来事です。
高品質で中国に対しての差別化を狙う
日本政府が質の高さを強調する理由は、資金力にものをいわせ、世界中でインフラ投資を展開している中国との差別化を図るためと考えられます。
高品質な日本製は初期投資は少し高いものの、将来に必要とされる保守・補修費用まで含めると経済的であることをセールスポイントにしたいという考えがあるためです。質の高さの強調は、政府の取り組み姿勢に一段と力が入ってきたと見ることができると思います。
関連銘柄を探る
インフラ投資の関連銘柄は、鉄道、道路・橋、空港・港湾、エネルギー・発電、防災など幅広い分野が想定されます。また、質の高いインフラ投資は、日本企業が長年築き上げてきた国内でのインフラ構築を海外に輸出・展開する取り組みであるため、多様な企業が関連します。
業種別に分類すると以下のようになります。
ゼネコン;大成建設(1801)、大林組(1802)
建機:コマツ(6301)、日立建機(6305)
電機・総合重機:日立製作所(6501)、三菱重工(7011)、IHI(7013)、商船三井(9104)
プラント:日揮(1963)、千代田化工建設(6366)
総合商社:伊藤忠商事(8001)、三井物産(8031)
国策に売りなし
興味深いことに、上記の関連銘柄の多くは昨年来の資源安や新興国経済減速のダメージを大きく受けてきました。今後、新興国経済が急速に回復するか現時点では不透明ですが、今回のサミットをきっかけに、改めてインフラ輸出が投資テーマとして浮上してきたという変化に注目したいと思います。
有名な投資格言に「国策に売りなし」というものがあります。質の高いインフラ投資も、まさに国策を反映しているため、相場の救世主になる可能性がありそうです。
とはいえ、これは”国策”が強力なリーダーシップにより遂行されることが条件です。このため、掛け声倒れに終わらないか、国や関連企業の取り組みを、今後、精査していくことも大切だと考えます。
LIMO編集部