朝の冷え込みもキツくなるこの時期、「なかなか布団から出られない」という人は多いのではないだろうか。仕事が憂鬱な気持ちから身支度が遅れて、「つい5分遅刻してしまった」という人もいるかもしれない。しかし、あまりに遅刻を繰り返してしまうと、周囲からの信頼を失ってしまいかねない。

 では、そうした「時間を守れない人」が遅刻グセを改善できるような方法はないのだろうか? 明治大学の人気教授であり、文系・理系の垣根を越えた研究を展開する堀田秀吾氏の著書『科学的に自分を変える39の方法』(クロスメディア・パブリッシング)を一部抜粋し、再構成のうえお届けする。

「5分前行動」とわかってはいるけれど……

 友達との待ち合わせ時間ちょうどに「ごめん、いま電車。〇〇駅通過中です! 電車の中も走っていくから、先に店に入ってて」とLINEしながら待ち合わせ場所に向かうのは日常茶飯事で、相手には「だいたい20分遅れてくるよね(怒)」といつも軽くムッとされている気がする……。いやいや、私のことではありませんよ、決して。

 友達との待ち合わせに当たり前のように遅刻する、朝はいつも出社時間ギリギリで少しでもダイヤが乱れようものなら遅刻になる、ランチに出かければ5~10分オーバーして戻ってくる、などなど……時間にルーズでいると、相手に迷惑をかけてしまい、周囲からは白い目で見られて、肩身が狭いですよね。これがビジネスの場面ならなおさらです。

「時間は守るもの」「5分前行動」とわかってはいるんだけど、ついつい遅れてしまう。あるいは、いつも間に合うように行動しているはずのに、なぜか遅れてしまう……。いずれにしても、遅刻しがちな自分を変えるには、昔ながらの「時計の針を5分進めておく」よりも効果的な方法を探す必要があります。

「時間通りにできる人」との違い

 ワシントン大学のマーク・A・マクダニエルらは、時間に関する実験を行いました。被験者にジグソーパズルなど集中して取り組む課題を与え、一定の時間内でそれを終えるように伝えます。課題を終えるためには、ペース配分を考える必要があるため、被験者は作業中も自由に時間を確認できるようにしておきます。

 しかし、実験では、「没頭するあまり、時間を確認するのを忘れて作業を進めてしまうような課題」を与えてありました。

 結果、与えられた課題を時間内に完成させた人は、「体内時計」をよりうまく使い、時間をより認識して作業できていました。人間の体内時計は実はすごく優秀で、自然と時間の感覚を認識したり、調整したりできることがわかったのです。

 朝の時間は限られているのに、テレビを見ながらSNSのチェック、身支度、朝食など、起床してすぐマルチタスクの嵐! 自分ではさまざまなことを同時に短時間でこなしているつもりでも、実際は数倍の時間が過ぎていた、という経験はありませんか? これは体内時計がうまく機能していないからだといえます。

体内時計の鍛え方は?

 ただ「体内時計」というと、なんだかプリミティブな本能・能力のような気がして「自分は持ち合わせていないから」……なんて思う人もいるかもしれません。でも、諦めるのは早すぎます。体内時計は鍛えることができるのです。

 誰でも簡単にできるのは、あらためて「時間」というものを体感してみることです。たとえば、

・スマホのストップウォッチ機能を使い、SNSのチェックを1分間してみて、それがどれくらいの長さなのかを実体験を通して知ってみる
・職場で席を立って飲み物を買いに行ったりトイレに行ったりする時間にどれくらい要しているのかを数字で確認する
・タイマーをセットしてゲームを10分だけする

などをやるのは、手軽に体内時計を鍛えるのに効果的です。

筆者の堀田秀吾氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)

まずはゲーム感覚で体内時計を養おう!

 ちなみに私は学生時代から、「55分勉強して5分ラジオを聴く」という習慣をずっと続けているせいか、時間の感覚が正確であることは自負しており、この長年にわたる勉強人生を乗り越えられてきているとも思っています。

「時は金なり」「光陰矢の如し」など、時間に関することわざが数多くあることからも、人間は、いにしえより「時間」というものを大切にしてきたことがわかります。

 とはいえ、体内時計の感覚を養うこと、取り戻すことは、今日やって明日すぐできるようになるわけでもないので、先ほどお話ししたようなやり方を参考に、まずは「ゲーム感覚」で楽しく鍛えてみてください。そうすることで、あなたの体内時計が育っていき、「なんか遅れちゃう」「気づいたら家出る時間を過ぎてた……」といった事態は減っていくでしょう。


■ 堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
 明治大学教授。言語学博士。熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程修了。ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了。言葉とコミュニケーションをテーマに、言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を融合した研究を展開。熱血指導と画期的な授業スタイルが支持され、「明治一受けたい授業」にも選出される。研究の一方で「学びとエンターテインメントの融合」をライフワークとし、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書等を多数執筆、テレビ番組「ワイド!スクランブル」のレギュラー・コメンテーター、「世界一受けたい授業」「Rの法則」などにも出演する等、多岐にわたる活動を展開している。

堀田氏の著書:
科学的に自分を変える39の方法

堀田 秀吾