人見知りでもうまく会話を乗り切る科学的な方法

自分を変えるサイエンス

「大勢での会話の輪に入れない」「話を盛り上げられない」など、コミュニケーションにまつわる悩みを抱えている人は多い。中でも、「親しい人なら平気なのに、初対面の相手だと緊張して会話が続かない」といった、いわゆる「人見知り」に悩んでいる人は多いだろう。

 そうした人見知りでも、会話に参加し、相手と打ち解けるにはどうすればいいのか? 明治大学の人気教授であり、「言葉とコミュニケーション」を主軸に幅広い研究を展開する堀田秀吾氏の著書『科学的に自分を変える39の方法』(クロスメディア・パブリッシング)から一部抜粋してお届けする。

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実は世の中、人見知りだらけ?

 ある日、あなたは上司の代役で取引先のパーティーに出席することに。会場はホテルのバンケットで立食スタイル。すぐ帰るわけにもいかず、いたたまれない思いのまま、なんとなく丸テーブルにドリンクを置き、料理をつまんでいると、周りの人たちは初対面なのに、程よい距離感で会話を楽しんでいた。会話に入りたいけど、どうやって入っていいかわからないし、引き続きいたたまれない気分で時間を過ごし、疲労困憊。達成感はゼロで帰宅した……。

 似たような経験がある人は、少なくないのではないでしょうか?

 以前、バラエティ番組の「人見知り」がテーマの回で、お笑いコンビ・オードリーの若林正恭さんが、「楽屋など、大勢の人がいるシチュエーションでは、飲み物のパッケージの裏側の文字をひたすら読んでいる」という自身の人見知りエピソードを披露されていました。俳優の中井貴一さんも、若い頃は人見知りであったことを公言されていますし、実は世の中、人見知りだらけなのかもしれません。

 ただ、それをネタにすることで笑いに変えたり、克服したり、なんらかのテクニックで人見知りがコミュニケーションの障害にならないよう努力している人も多いんじゃないかと思います。

まずは「アイコンタクト」から始める

 自分が人見知りだという人は、往々にして「相手の目を見ることが苦手」ということはないでしょうか?

 実は、「あえてアイコンタクトを増やすと会話への参加度合いが高まる」ということが、カナダにあるクイーンズ大学のローエル・バーテガールらの実験でわかっています。

 実験では、3人の被験者に、パソコンの画面を通してビデオチャット的にグループ会話をしてもらい、会話への参加度合いを比較しました。被験者以外の2人の参加者はサクラです。結果、「話しているときに聞き手が適宜アイコンタクトした被験者は、あまりしなかった被験者よりも、会話への参加度合いが22%も高かった」のです。

 つまり、会話の場面で適宜アイコンタクトを増やすと、相手がよりたくさん話してくれるようになる、ということです。

 また、テキサス州にあるコミュニケーション分析を専門とする企業、クォンティファイ・インプレッションズによると、「人は会話をしているとき、相手の目を見ている時間は通常30~60%程度だが、アイコンタクトの時間が60~70%になると、より深い心理的なつながりを感じ始める」という調査結果もあります。

 アイコンタクトによって、自然に会話の量が増えて場もあたたまっていけば、人見知りなあなたでも打ち解けやすくなるはずです。

自分から会話に参加する経験を積む

 このように、「人見知りで話したくても話せない」という人は、まずアイコンタクトを増やすことから始めてみてはいかがでしょうか?

「目は口ほどに物を言う」のように、目で訴えかけることで、「あなたと会話したい」「親しくなりたい」という気持ちも伝わりやすくなります。

 また、脳は「体の動き」にだまされる特徴があるので、「アイコンタクトをしたら会話する」ということを自分の中でルールづけしてしまえば、いずれ「目を見たら会話に参加する」ことが臆することなく、当たり前のようにできる可能性は高まります。

 さっきまでひとり熟読していた「飲み物のパッケージの裏側」の話題でもなんでもいいので、自分から会話に参加していく経験を積んでいきましょう。

 ほかにも、自己紹介などで「私、人見知りなんですけど、みなさんと仲良くしたいと思っています」と、自ら明かしてしまう、という方法も奥の手です。

 これはセルフ・ハンディキャッピングといって、自分で予防線を張って、心を安定させるテクニック。「私って少食だから」「私って時間守るのが苦手だから」など、事前に告白してしまうことで、相手にも仕方ないなと思ってもらえる効果があります。

 ただし、これは自分で自分に限界をつくってしまうことになるので、どうしても……なときの緊急手段としておくのがいいでしょう。

話題に困ったときの対処法

 自分から会話に参加することができるようになってきたとして、さらなる問題は、「何を話すか」です。一生懸命に話しているのに、いまいち会話が盛り上がらない、そんな経験はありませんか? たとえば、次のようなシチュエーション。

 課の飲み会では、上司はもちろん、両隣・向かいの人など、席が近い人との会話がいつも盛り上がらない、というか続かない……。結果、いつの間にか自分を避けるようにして、いくつかの会話のグループが出来上がっているのを見ると「ちょっとしたモーゼ気分♪」と自虐せずにはいられなくなる。さらに自分そっちのけで会話が盛り上がってくると、無力というかなんというか「切なさ」がすごい。

 このように、飲み会などで会話が盛り上がらなかった経験や、面接・提案などで上手に話せないことが続くと、ますます話すことが苦手になってしまうかもしれません。

 そんな感じで話題に困ってしまったときは、「季節」や「天気」といった、当たり障りのない話題を会話の糸口にして、そこから話を広げたり、出身地や趣味、ペットの話など、自分だけの「会話の持ちネタ」を用意しておくのがおすすめです。

 たとえば「自宅が八王子なので、通勤時間が結構かかるんです」「秩父のパワースポットのすぐ近くが実家です」「最近、保護犬を引き取ったんです」など、そこから話が広がるようなネタがあるなら、どんどんしゃべっていきましょう。

 そうすることで、「八王子ってユーミンやヒロミとか、有名人の出身者が多いよね」「秩父のかき氷屋さん、行ったことある!」「保護犬ってどうやって譲り受けるの?」のように、誰かが反応してくれて、そこから会話が盛り上がることも多いからです。

 また、苗字や名前について深掘りするのも有効です。相手の苗字の由来や名前に込められた思いを語ってもらうと、意外に会話がつながります。

「聞き役に徹する」のも有効なコミュニケーション術

 いったん話がつながり始めたら、あとは聞き役に徹して、ひたすらうなずいて相手にしゃべってもらい、会話を盛り上げるだけでもいいでしょう。

 東京大学(論文執筆当時)の川名好裕氏の研究によると、「会話中に相づちやうなずきを行うことで、対人魅力が増す」ことがわかっています。

 実験では、被験者である40人の大学生を対象に、「自作の話をする話し手の役割」と「その話を聞く、聞き手の役割」それぞれを演じてもらいました。その際、話し手は2人の別の聞き手に、同じ話を同じ調子で話しました。また、聞き手は「相づち・うなずきなどを交えながら、話し手の話を聞いた人」と、「相づち・うなずきをせずに話を聞いた人」に分かれました。その結果は次の通り。

(1)話し手……相づち・うなずいてくれる聞き手の方を、相づちのない聞き手より好意的に評価した
(2)聞き手……自分が相づちやうなずいた話し手の方を、相づちを打たなかった話し手よりも好意的に評価した

 そう、会話の中に、相づちやうなずきがあるだけで、話す方も聞く方も、お互いに好意的に感じることがわかったのです。

 私は大勢の前で話したりするときに、あらかじめ聴衆に「うなずいてね」と言ってしまいます。聞いてくれている人たちが、うなずいているのを見ると話しやすくなるからです。また、打ち合わせなどで、自分以外の誰かが話すときは必ず、相づちを打ったり、うなずいたりするようにしています。

「話し上手は聞き上手」とことわざにもあるように、口下手を自覚しているならまず、聞き上手を目指しましょう。

筆者の堀田秀吾氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)

聞き上手に必要な3つの「あい」

 聞き上手に必要なのは、3つの「あい」だと私は常々言っています。

 まずは「相づち」。「うん」「ふむふむ」「へえ」「はい」などの短い返事です。次に「あいの手」。「なるほど」「そうなんですか!」「うらやましいなぁ」などの、短い感想や感情を表す言葉です。そして最後に「愛情」。相手の話を、相手を好きになった気持ちで一生懸命聞いてみる。こちらから好意的に接すれば、相手も好意的に接してくれます。これは「返報性の法則」といって、「人は、相手にしてもらったことを返したくなる」という心理作用が働くのです。

 聞き役としての場数を踏んでいけば、いずれ話し上手な人の話し方や、盛り上げ方などの理解も深まり、トークスキルも上がってくるはずです。


■ 堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
 明治大学教授。言語学博士。熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程修了。ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了。言葉とコミュニケーションをテーマに、言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を融合した研究を展開。熱血指導と画期的な授業スタイルが支持され、「明治一受けたい授業」にも選出される。研究の一方で「学びとエンターテインメントの融合」をライフワークとし、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書等を多数執筆、テレビ番組「ワイド!スクランブル」のレギュラー・コメンテーター、「世界一受けたい授業」「Rの法則」などにも出演する等、多岐にわたる活動を展開している。

堀田氏の著書:
科学的に自分を変える39の方法

堀田 秀吾

参考記事

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明治大学教授。言語学博士。熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程修了。ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了。
言葉とコミュニケーションをテーマに、言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を融合した研究を展開。熱血指導と画期的な授業スタイルが支持され、「明治一受けたい授業」にも選出される。
研究の一方で「学びとエンターテインメントの融合」をライフワークとし、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書等を多数執筆、テレビ番組「ワイド!スクランブル」のレギュラー・コメンテーター、「世界一受けたい授業」「Rの法則」などにも出演する等、多岐にわたる活動を展開している。