2019年11月1日に行われた、豊田通商株式会社2020年3月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:豊田通商株式会社 取締役社長CEO 貸谷伊知郎 氏
豊田通商株式会社 取締役CFO 岩本秀之 氏
連結決算概要
貸谷伊知郎氏(以下、貸谷):社長の貸谷でございます。どうも本日はお忙しいなか、説明会にお越しいただきまして本当にありがとうございます。また、日頃よりマーケットと我々会社をつなぐ役割として、いろんな情報発信をしていただいていることに、あらためて感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
現在は、環境が非常に激しく変化する状況でございますが、国際情勢だけでなく、自動車だけでなく、いろんな業界の変化が起きております。その変化をリスクであると同時にチャンスと変えていくために、我々も日々努力しております。今日はその一端をみなさまにご理解いただけるように、ご説明いたしますので、どうかよろしくお願いいたします。
岩本秀之氏:みなさんこんにちは、岩本でございます。豊田通商の2020年3月期第2四半期連結決算概要について、パワーポイントに応じて、ご説明いたします。
まずは損益計算書についてです。売上総利益は、前年同期比で19億円の減益となっております。主にアフリカのセグメントで、アフリカ本部においては自動車販売が好調に推移して増加しています。一方で、化学品・エレクトロニクスビジネスの利益率が低下したことなどにより、マイナス19億円になったとみております。
営業利益は、売上総利益が減少しましたが、一方で為替差損益が良化したことにより、結果として12億円の増益となっております。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、持分法による投資損益が悪化した一方で、関連会社株式の第1四半期での売却益があり、結果として純利益がプラス5億円と増益になりました。
なお、参考までに、791億円という数字は3年連続の過去最高益でございます。進捗率は、純利益ベースで53パーセントになっております。
当期利益(全社増減要因)
階段表で利益増益の要因について説明しておりますが、営業利益について具体的にご説明いたします。左から3本目の1,074億円と、右から3本目の1,086億円の差額12億円の明細を記載しております。
主に為替に関しては、27億円のマイナスでございます。また、化学品・エレクトロニクスでマイナス19億円が出ております。需要はそれほど減ってはいませんが、利ザヤが減ったことで、このようなマイナス影響が出ています。
自動車販売は、大きくプラスの56億円となっておりますが、主にアフリカのマーケットが好調であったことや、トヨタ自動車さんからの移管部分もプラスに寄与するなどしております。
いわゆる営業利益以外では、金融収益費用でカナダの電力事業の関連会社株式売却益、持分法で金属資源等の減損等がございますが、本業は前期よりややプラスで推移しております。
当期利益(本部別)
本部別(セグメント別)の当期利益の増益要因を記載しております。
金属がマイナス96億円ですが、金属資源ならびにアメリカのアルミ鍛造事業の一過性の減損を取り、持分法による投資損益が悪化しております。
機械・エネルギー・プラントプロジェクトは、第1四半期で売却した、カナダの電力会社の売却益が約130億円ほど入っております。それ以外の部分はいわゆる通常ビジネス、オーディナリーなオーガニックビジネスの増益でございます。
なお、各本部ごとの前期比実績からの増減額は後段の補足資料に添付しておりますので、ご参照ください。
連結財政状態
こちらのスライドはバランスシートでございます。2019年9月期末の総資産は4兆4,985億円となっており、前期末と比べて微増となっております。自己資本は1兆2,137億円となり、179億円の増加となっております。
これは利益剰余金が600億円ほど増加していますが、いわゆる為替調整勘定等で、ユーロが円高になるとマイナスになる影響などもあり、386億円ほど減少しております。
また、ネット有利子負債には1兆325億円となっておりますが、いわゆるIFRS16号でオペレーティング・リースのリース負債計上の金額が930億円ほど入っております。アップル・トゥ・アップルで比較しますと、実際には前期よりも良化していると考えております。
ネットDERも去年の末は0.83倍でしたが、当期はこの1兆325億円で計算しますと0.85倍、アップル・トゥ・アップルでオペレーティング負債を抜きますと0.77倍で、バランスシート自体はそれほど悪くはなっていないと考えています。
連結キャッシュ・フロー
営業キャッシュ・フローは、上半期累計で1,122億円のプラスが出ております。前期は在庫が多かったことが原因で622億円となっておりましたが、当期は通常に戻っており、年間のターゲットがだいたい2,300億円ですので、ちょうど良い数字が出ているかと思います。
また投資活動によるキャッシュ・フローは、投資等の実現によって956億円のアウトフローでマイナスとなっております。結果、フリー・キャッシュ・フローはプラスの166億円となっています。
ただし、(スライドの)右下記載の明細のとおり、実際の投資のキャッシュ・アウトは777億円であり、一部3ヶ月以上の定期預金が投資の勘定に入っておりますので、実態のフリー・キャッシュ・フローは、166億円というよりも400億円程度の黒字が残っているとみております。
また、2020年3月期の業績予想は、全社としては4月26日の公表の当初予想から修正しておりません。
2020年3月期 本部別当期利益 修正予想
17ページにセグメント別の当期利益の予想だけ付けております。セグメントの中身は金属の一部一過性の損を取った一方、機械・エネルギープラントで売却益が実現しており、ここの部分を調整してセグメント公表をしております。
以上で、私からの説明を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
1. 注力分野の進捗報告
貸谷:あらためまして、こんにちは。社長の貸谷でございます。私からは2022年3月期の中期経営計画達成に向けての内容についてご説明いたします。
まず、当社の注力分野の進捗状況についてです。今年の5月に、2022年3月期中期経営計画の説明をいたしました。本日はそこで掲げた、「アフリカ戦略」「ネクストモビリティ戦略」「再生可能エネルギー戦略」の3つの注力分野について、この半年間の進捗状況をご説明いたします。
(1) アフリカ戦略 ~6つの柱によるトヨタビジネスの強化~
まずはアフリカ戦略です。ご覧の6つの柱を軸にして、トヨタビジネスの拡大を全方位で強化し、アフリカのGDP成長率の2倍以上の成長を目指しております。
6つの柱がありますが、今回はとくに進捗のあった、赤で囲っている2つの項目についてご説明いたします。
(1) アフリカ戦略 ~②KD(ノックダウン)事業の推進~
KD(ノックダウン)事業の推進ですが、アフリカ各国の政府支援あるいは税制上の優遇政策などを踏まえ、現地で作ったものを現地で使っていただく地産地消の体制づくりを進めております。
今回新たに、コートジボワールとガーナの2ヶ国で、トヨタ社の新工場設立について検討を開始しております。また、商品ラインナップの強化のために、エジプトとケニアにおいても、トヨタ車の取扱車種の追加検討を行っております。
なお、資料には記載していませんが、スズキ車についてもガーナやほかの国での生産を検討しております。
(1) アフリカ戦略 ~⑥-1 バリューチェーン拡大~
バリューチェーン拡大についてです。新車購入へとつながる中古車市場に関しては、人口の増加や経済成長による自動車ニーズの高まりを背景にして、急拡大をしております。
現在、その市場規模は新車市場の約10倍、新車1台に対して中古車10倍と言われております。しかし、このなかには非正規ルートでの販売による低品質な中古車も含まれております。
また、購入後の修理の際に粗悪な部品が使われることもありますし、技術不足による整備不良等も後を立ちません。
このような状況を受け、当社は自動車バリューチェーンの各段階において、進めている取り組みを次のスライドでご説明いたします。
(1) アフリカ戦略 ~⑥-2 バリューチェーン拡大~
AUTOMARKブランドにより、認定トヨタ中古車の取り扱いの拡大を目指しています。現在、7ヶ国で事業を行っておりますが、3年以内に30ヶ国まで展開いたします。
汎用部品の取り扱いについては、一定の技能がある自動車修理工場を「Supported by Team Toyota」として認定し、デンソーやアイシン製品等の部品の提供を行っております。認定工場の技術者に対しては、デンソーさんと協力して技能トレーニングを行います。また、ケニアアカデミー受講者の活用も視野に入れてまいります。
最後はAutoFastです。アフリカ全土にガソリンスタンドを持っているフランスのトタル社とともに、車のメンテナンスや会員修理を拡大していきます。
以上の6つの柱を軸として、アフリカのモータリゼーションに全方位で対応し、自動車のビジネスの拡大を図ってまいります。
(2) ネクストモビリティ戦略 ~ネットワークの拡大~
ネクストモビリティ戦略では、活動をグローバルに展開するために、世界中でネットワーク構築を進めております。東アジアでは、電子生産が盛んな中国・上海の常熟に人を配置し、北米のシリコンバレーやイスラエル等に事務所あるいは駐在員を配置して、ネットワークを構築しております。
また、欧州・中東・アフリカなどにもおり、グローバルで総勢260名がネクストモビリティに携わっております。また、新たな試みとして、東和不動産さんが開発されていますが、名古屋近くの「なごのキャンパス」というシェアオフィスにも拠点を構え、ベンチャー企業やスタートアップ企業との協業を目指してまいります。
今後もグローバルなネットワークを通じ、新たなビジネスチャンスを機敏にキャッチして、新しいビジネスの創造を目指してまいります。
(2) ネクストモビリティ戦略 ~進捗報告~
当社のネクストモビリティ戦略では、グローバルネットワークを活用し、重要なプレーヤーあるいはスタートアップ企業との連携を進めております。
CASEへの対応も含まれております。今後はシナジーを創造し、量産技術を確立していくことで、ネクストモビリティ領域におけるマーケットリーダーを目指してまいります。
(2) ネクストモビリティ戦略 ~Connectedの取り組み~
今回はとくに、CASEの「Connected」の取り組みについてご紹介いたします。
「Connected」では、電子デバイス、次世代データセンター、OTA(Over The Air)、セキュリティの4つの領域に取り組んでおります。
すでに収益化も進んでいる電子デバイスでは、自動運転に必要なカメラや半導体などのさらなる取扱増加が見込まれております。
次世代データセンターでは、データの保管・分析に加え、将来的にはデータを活用した新しいビジネス展開を目指したいと考えております。
OTAソフトウェア配信の分野では、アメリカのAirbiquity社に出資し、OTAソフトの開発を共同で進めております。インフラサービスの提供に向けて取り組みを進めてまいります。
また、「Connected」のなかで重要な要素の1つとなるセキュリティにも取り組んでおり、将来のモビリティサービスの基盤となるインフラサービスの提供を目指してまいります。
(2) ネクストモビリティ戦略 ~ネクストテクノロジーファンド第2号~
ネクストテクノロジーファンドの取り組みについてご紹介いたします。
2017年4月に、意思決定のスピード感を持ってベンチャー投資への経営判断を行うことを目的として、ネクストテクノロジーファンドを設立しております。
2019年4月からは2号ファンドを設立し、2年間で60億円の予算を設定しております。今後もネクストテクノロジーファンドを通じて、新しい技術・サービスに向けた取り組みを進めてまいります。
(3)再生可能エネルギー戦略 ~グローバル展開の加速、新たな事業領域への挑戦~
注力分野の最後である、再生可能エネルギーの進捗状況をご説明いたします。すでに5月にご説明申し上げましたが、現在はグローバル展開の加速と新たな事業領域の挑戦を進めております。
また、将来は小水力などの新たな事業領域も、さらにグローバル展開できるよう検討しております。
(3)再生可能エネルギー戦略 ~グローバル展開の加速~
陸上風力発電のグローバル展開について、とくにアフリカ・欧州・国内の3つの地域での取り組みをご紹介いたします。
アフリカでは、エジプト初となる風力発電事業が商業運転を開始し、欧州では新たにオランダの3ヶ所で風力発電所の建設を開始いたしました。
国内では、道北での送電・発電事業が着実に進んでおり、2024年3月期に稼働する予定となっております。このほか、メキシコや台湾などでも事業の検討を行っており、グローバル展開の加速を今後も行っていきます。
(3)再生可能エネルギー戦略 ~今後3年間におけるユーラスの陸上風力、太陽光の展開~
陸上風力や太陽光の今後の展開についてご説明いたします。このスライドでご覧のとおり、当社は今後世界の各地域において、着実に再生可能エネルギー事業を進め、クリーンエネルギーの発電割合を増加させていく考えです。
なお、当社は自らリスクを取って事業に取り組んでおりますので、これらの総発電容量と持分発電容量とのあいだに大きな差がないことも、当社の特徴と言えるかと思っております。
2. 注力分野の掛け合わせ
中期経営計画で掲げた3つの注力分野の掛け合わせについてご説明いたします。3つの注力分野については、掛け合わせで生まれる新しい事例が出てきており、地域としてのアフリカ、技術やサービスとしてのネクストモビリティ、インフラとしての再生可能エネルギーの、強みと強みの掛け合わせを行うことで新しい事業の創出を進めてまいります。
注力分野の掛け合わせ事例:(1) アフリカ × ネクストモビリティ
最初に、アフリカとネクストモビリティの掛け合わせについてです。先進国では国の規制などにより段階的にしか進まない技術変化・技術移転が、新興国では一気に進んでいく「リープフロッグ」と呼ばれるような現象が起こっております。
アフリカにおいてもすでにこの現象が始まっており、当社は従来の自動車事業への取り組みに加え、シェアリングなどの新しい自動車事業にも手を打つべく「Mobility 54」を設立いたしました。
同社を通じ、アフリカで新しいサービスや先進技術を展開するスタートアップ企業へ投資し、アフリカにおけるMaaS/CASE事業への取り組みを加速してまいります。
注力分野の掛け合わせ事例:(2) 再生可能エネルギー × アフリカ
再生可能エネルギーとアフリカの掛け合わせについてです。アフリカは今後、人口増加に伴う電力需要の増加が見込まれます。再生可能エネルギーのポテンシャルがさらに拡大するものと考えています。
先ほどご説明しましたエジプトでの風力発電に加え、東アフリカ地域ではケニアの無電化地域への電力供給を目的としたミニグリッド事業や、タンザニアでの風況分析、発電量予測による風力事業開発なども行っており、これらを足掛かりに西アフリカへの拡大を目指してまいります。
注力分野の掛け合わせ事例:(3) ネクストモビリティ × 再生可能エネルギー
最後に、ネクストモビリティと再生可能エネルギーの掛け合わせです。電動化が進むに伴い、廃車リサイクルなどで回収できる電動車の蓄電池が増加するため、3R(リサイクル・リユース・リビルト)と呼ばれるものを活用しております。
再生可能エネルギーについては、当社はユーラスエナジーを中心とした知見が非常に深く、複数の小規模発電をつないで調整するVPP事業を進めております。
これらを掛け合わせ、電動車から回収した蓄電池を再利用し、再生可能エネルギー発電と組み合わせるV2G(Vehicle-to-Grid)事業の取り組みを進めていきます。また、新たな電力供給への取り組みも推進したいと考えております。
第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の狙いと結果
なお、アフリカに関しては「TICAD 7」が、8月末に横浜で開催されました。当社は、経団連や経済同友会のアフリカに関わる委員長という重要なポジションを持っており、「with AFRICA」「for AFRICA」の精神を持って、積極的に関与いたしました。
TICAD7の成果 ~アフリカ10カ国と16件のMOUを締結~
このスライドにあるように、合計10ヶ国、組織で16件のMOU(Memorandum of Understanding)を締結いたしました。このなかには、先ほども触れたガーナ・コートジボワールでの自動車産業育成が含まれております。
以上でございます。どうもご清聴ありがとうございました。