そうなると、円を米ドルに替えてドルを持つしか残っていませんが、それには為替リスクがあります。

「明日までに日本政府が破産する可能性」と「明日までにドル安円高になって為替差損が発生するリスク」を比べれば、明らかに前者の方が小さいでしょう。それならば、日本国債を持つインセンティブとしては十分です。

実際には、ドルが値上がりして儲かる可能性もあるのですが、投資家たちはリスクを嫌う人が多いので、「儲かるか損するか五分五分ならば、ドルには投資しない」ということで日本国債を選ぶ人が多いのです。

こうして投資家たちは、「とりあえず国債を買って明日まで持っていよう。明日のことは、明日考えよう」という行動を取ります。明日も明後日も、同じ行動を取るでしょう。したがって、結局ずっと日本国債を持っている、というわけです。

社債であれば、金利が低くて倒産可能性が高い会社の社債を好き好んで持つ投資家はいません。国債購入という代替手段があるからです。しかし、国債には「為替リスクなしに使える代替手段」が無いので、消去法的に国債が買われるのです。

他の投資家も買うだろうから大丈夫だろう

投資家は考えます。「自分は、いろいろ考えて日本国債を購入した。他の投資家も、同様に行動するだろう。それなら、しばらくは日本政府は破産しないだろう」と。

借り手が破産するか否かは、借り手の借金が多いか否かによるのではなく、借り手の資金繰りが回るか否かによります。

したがって、いくら借金が多くても、皆が喜んで(消去法的であっても自発的に)金を貸してくれるのであれば、政府が破産することはないのです。