公営住宅の名義人だった親が亡くなったとき、同居していた子は、これまでどおり家賃を払えば住み続けられるのでしょうか。公営住宅は名義人と事業主体(自治体など)の間の使用の関係なので、名義人が亡くなると、同居していた家族が住み続けるには手続きが要ります。

公営住宅の承継は、国の法律の上に自治体ごとの条例・規則が重なる手続きで、行政の現場を取材する立場からも、住んでいる地域の案内を先に確かめておきたいテーマです。ここでは、承継が認められる家族の範囲と期限を、国の法令と自治体の公表資料で確かめます。

あわせて、承継が認められずに民間の賃貸住宅へ移る場合の家賃と初期費用を、公営住宅の家賃と比べて試算します。

※家賃の平均は、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」の借家(専用住宅)の1か月当たり家賃(2023年・全国)です。初期費用の月数は、国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査」の民間賃貸住宅で最も多かった月数をもとにしています。

1. 公営住宅の名義人が亡くなったら同居の家族は住み続けられる?家賃を払い続けるだけではなく、事業主体の「承継」の承認が要る

公営住宅法第27条第6項は、入居者(名義人)が亡くなったり退去したりした場合に、そのときに同居していた人は、事業主体の承認を受けて引き続き住むことができる、と定めています。住み続けるための条件は「承認を受けること」で、家賃を払い続けることではありません。

  • 【根拠】公営住宅法第27条第6項(入居者の死亡・退去時に同居していた者は、事業主体の承認を受けて引き続き居住できる)
  • 【細かな条件】国土交通省令(公営住宅法施行規則第12条)と、自治体の条例・規則・要綱
  • 【手続き】名義人の死亡などを届け出て、承継(名義変更)の承認を申請する

承継は、預貯金や家のような相続とは別の手続きです。相続人であっても、承認を受けなければ公営住宅に住み続ける立場は引き継がれません。

2. 公営住宅の名義人の子は承継できる?国の通知は原則「配偶者と、高齢者・障害者など」で、東京都・西宮市は子なら60歳以上などの条件付き。大阪府営住宅は子・孫も原則1回に限り対象

東京都住宅政策本部「使用承継制度」によると、国は平成17年(2005年)12月の通知「公営住宅管理の適正な執行について」で、承継の範囲を「同居している配偶者及び高齢者、障害者等で特に居住の安定を図る必要がある者」に限る指針を示しました。入居を待つ人との公平を保つためです。

この指針を受けて、配偶者以外の子が承継できる条件は自治体ごとに決まっています。確かめた4つの事業主体の公表資料では、次のとおりです。

  • 【東京都(都営住宅)】原則は配偶者(パートナーシップ関係の相手方を含む)だけ。例外として、承継する人が60歳以上、障害(愛の手帳1〜4度・精神障害者保健福祉手帳1〜3級・身体障害者手帳1〜3級など)、病弱者に当たれば三親等以内の親族も可
  • 【西宮市(普通市営住宅)】2025年4月1日から、名義人の配偶者か、例外として満60歳以上・障害者手帳などの交付を受けている人など「特に居住の安定を図る必要がある方」に限る
  • 【函館市(市営住宅)】同居していた三親等までの親族のうち、配偶者・60歳以上の人・身体障害者手帳1〜4級の人・小学校就学前の子を扶養している人などに限る
  • 【大阪府(府営住宅)】配偶者に加えて、入居の際から同居していた子または孫、同居の承認を得ていた子または孫も対象(大阪府住宅供給公社の案内では、令和2年10月1日から原則1回限り)

同じ「名義人の子」でも、60歳以上か、障害者手帳があるかなどで扱いが分かれ、大阪府営住宅のように年齢を問わず子を対象にしている事業主体もあります。住んでいる住宅の事業主体(都道府県・市区町村)の案内で確かめることが欠かせません。

ここまでで、承継の仕組みと、子が承継できる条件を見てきました。

ここからは、同居の期間と収入の条件、申請の期限を見ていきます。