4. いまのルール:70歳になる前後で、窓口の支払いは大きく変わる
4.1 窓口負担の割合は、年齢で3段階に分かれる
69歳以下は3割、70歳から74歳は原則2割、75歳以上は原則1割です。75歳以上は、一定以上の所得があると2割になります。どの年齢でも、現役並みの所得がある人は3割です。
厚生労働省の案内では、70歳になると、誕生月の翌月の診療から、3割が2割に変わります。1日生まれの人は、その月からです。平成26年4月2日以降に70歳になる人の案内で、古い資料ですが、線引きは変わっていないと考えられます。最新の扱いは、保険者で確認できます。
4.2 70歳以上の外来には、月ごとの上限がある
厚生労働省の案内では、2026年8月から2027年7月の外来(個人ごと)の上限は、次のとおりです。
【一般(年収約370万円以下)】月2万2000円。年間の上限は21万6000円です。
【住民税非課税】月1万1000円。年間の上限は9万6000円です。
【住民税非課税(所得が一定以下)】月8000円です。
この上限が、外来特例です。財務省は、これをなくすべきだとしています。
4.3 財務省の資料の例:医療費20万円で、69歳は6万円、70歳は2万2000円
財政審の資料には、医療費20万円のとき、69歳は窓口で6万円、70歳は2万2000円になるという例があります。1歳違うだけで、3万8000円の差です。
5. 仮に「原則3割・外来特例なし」になった場合の、父と母の増え方
5.1 編集部の仮の試算。実際の案ではない
年末の工程表の中身は、まだ分かりません。ここでは、財務省が提案する「原則3割」と「外来特例の廃止」を、そのまま当てはめた場合だけを計算します。骨太方針は、低所得者等の必要な受診が確保されるよう配慮することを前提としていますが、配慮の中身や、段階的な引き上げがあるかどうかは不明です。この試算は、配慮を考えずに一律で当てはめた場合です。また、上限額の表(月6万1500円など)は、いまのまま変わらない前提です。
5.2 父も母も、20万円の3割で6万円
3割で計算すると、父も母も6万円です。外来特例がなくなると、一般の区分の上限は月6万1500円で、6万円はこれを下回るため、上限は働きません。
5.3 増える額:父は3万8000円、母は4万円
【70歳の父】2万2000円から6万円。3万8000円増えます。
【75歳の母】2万円から6万円。4万円増えます。
2人合わせると、月7万8000円の増加です。この前提のときだけの数字です。
ここからは、住民税非課税の場合と、試算を見るときの注意点を見ていきます。
著者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部
元・厚生労働省担当記者(社会保障専門紙)
中央大学法学部を卒業後、東証プライム上場IT企業での法人営業を経て、厚生労働省記者クラブに所属する行政・自治体向けの社会保障専門紙記者として活動。
現在は「公的社会保障制度(年金・医療・介護)」の仕組みと、「私的資産形成(NISA・iDeCo)」の税制優遇制度を横断的に分析し、生活者のための家計防衛術を提供する編集者として活動している。
各省庁が公表する難解な一次情報(e-Gov法令検索の条文データや、総務省統計局の家計調査など)を読み解き、現役世代からシニア層までを対象に、事実に基づいた実用的な解説記事を継続的に執筆している。
このほか、専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』でも情報を発信している。
【経歴・専門性】
前職の専門紙記者時代には、厚生労働省本省および各地方自治体(保険者)を直接取材対象とし、現場の最前線で以下の重要政策の決定プロセスと一次情報に触れてきた。
これらの政策取材を通じ、「制度の複雑化が引き起こす、生活者のサイレントな不利益(申請漏れや制度の不知による経済的損失)」の構造を実務レベルで把握。役所の論理で構築された難解な制度設計を、IT企業時代に培ったデータ分析手法と掛け合わせることで、客観的指標(平均値ではなく中央値を用いた実態把握など)に基づく解説記事を執筆している。
【具体的な実績・保有資格・メディア掲載歴】
公的機関の一次データに依拠した客観的な記事執筆により、Yahoo!ニュース「経済ランキング」において多数の1位を獲得。具体的な執筆・担当領域における実績は以下の通りである。
- 公的年金・給付金領域:日本年金機構の公表資料に基づく「在職老齢年金による支給停止基準」や「年金生活者支援給付金の受給要件」の解説。また、国税庁のガイドラインに沿った定額減税や各種給付金の対象者判定フローの実務的整理。
- 医療・介護保険領域:高額療養費制度などの自己負担限度額の算出方法や、公的保障のセーフティネット範囲の図解解説。
- 資産運用領域:金融庁のNISA特設サイトや、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)のデータに基づく税制優遇メリットの数値化。特定の金融商品の購入推奨は行わず、公的年金の不足分を補うための長期積立投資の制度整理に特化。
- 貯蓄・家計管理領域:家計調査などの官公庁統計データに基づいた、年代別・世帯年収別の貯蓄実態の論理的解説、およびインフレ時代におけるリスク管理手法の情報提供。
- 保有資格・実務知見:東京商工会議所 ビジネスマネジャー検定試験®合格。上場企業での実務経験と当資格で培った「組織マネジメント」や「コンプライアンス・リスク管理」の視点を個人の家計防衛に転用し、ビジネスパーソンが納得できる論理的な解説の裏付けとしている。
【読者へ提供する価値と発信理念】
「役所の論理ではなく、生活者の視点で制度を翻訳する」ことを発信の基本理念としている。
複雑怪奇な社会保障制度においては、制度を知らないこと自体が直接的な経済的損失に直結する。この情報非対称性を是正し、「知っていれば救われたはずの人が損をする現状をゼロにする」ことが現在の活動における最大のミッションである。
そのため、記事執筆にあたっては個人の主観や推測、投資推奨は避ける。
そのうえで、読者の生活や資産に影響を与える領域であることを自覚し、読者が「国に頼りすぎず、国を賢く利用する」ための正確で安全な判断材料を提供し、生活者とその家族を守るための実用的な知見を届け続けている。