何をやっても続かない人は「始め方」が間違っている

科学的に目標を達成する方法

 ラグビーのワールドカップや野球の「プレミア12」など、この秋は世界的なスポーツイベントで日本のチームが大活躍しました。トップクラスのスポーツ選手ほど、地道な日々の練習を欠かしませんが、そうしたレベルの話でなくても、私たちはなんとなく「日ごろの習慣」がとても大切だということを知っています。

 でも実際のところ、読書や勉強、運動や健康的な食生活など、「いい習慣」を身につけようと頑張るものの、なかなか続かないという人も多いのではないでしょうか。

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『科学的にラクして達成する技術』の著者で、行動科学の専門家である永谷研一さんは、「習慣というのは、意識しなくても自然にできている無意識の行動です。なので、気づいてないかもしれませんが、みなさんも『よい習慣』をすでにたくさん持っているはずなんですよ。それを利用すると、習慣化は意外と簡単です」と話します。永谷さんに、三日坊主から卒業するための「習慣化のコツ」を教えてもらいました。

習慣を変えるのは、本来「気持ち悪い」こと

 みなさんは、どんな「よい習慣」を身につけているでしょうか? 出かける前にしっかり歯を磨く、上下2階以内の移動はエスカレーターではなく階段を使う、社内で上司から呼ばれたらメモを持ってすぐ行く……など、ちょっとした「よい習慣」は誰でも持っているものです。

 たとえば、いつも元気にあいさつをする人は「あの人は明るいね」と好印象を持たれることが多いでしょう。ただ、多くの場合、本人はとくに意識しているわけではありません。「元気にあいさつをする」ことが習慣化しているのです。

 ひとつ実験をしてみましょう。まず、両手で腕組みをしてみてください。このとき、どちらの腕が上になっていますか? 私の場合は左腕が上になります。

 では、上下を逆にして腕を組んでみてください。どんな感じがしますか? 違和感があって、気持ち悪いのではないでしょうか。実はこの違和感が「新しい行動が続かない原因」のひとつでもあるのです。

 何か新しい目標を立てて、それを達成するためには、今までやっていなかったことを「新たにやる」必要があります。そして、より高い成果を求めていくためには、それを続ける「新しい行動習慣」を身につける必要があります。そのときに知っておきたいのは、新しい行動を習慣化することは、決して「自然なことではない」ということ。むしろ、最初は「違和感」があるはずです。それは、今までしていなかった「新たな意識」が必要となるからです。

 そこでまず、「新たな習慣を加えることや今までの習慣を変えることは、気持ちが悪いものだ」と割り切って考えることが大切です。重たい車を押すときのように、行動の習慣化にも、最初は少し力が必要だからです。しかし、いったん動き出してしまえば、あとはわずかな力で押すだけで進み続けてくれます。

タイミングは「ついでに」

 ではこの「最初のひと押しの力」を自分に与えるためには、どうすればいいのでしょうか? ここで、簡単に行動を続けられ、習慣化できる技術をひとつ紹介しましょう。

 行動を習慣化するためには、「いつ、その行動を行うか」というタイミングこそがカギです。「毎日○○する」「毎週○○する」「週末に○○する」というように、実施するタイミングも含めて行動計画を立てる人は多いのですが、残念ながらそれを習慣化して続けていくのは現実にはなかなか難しいものです。理由は簡単。「行動することをつい忘れてしまうから」です。

 たとえば、ダイエットをしているときには、毎日、体重を測って自分の状態を知る必要がありますよね。しかし「体重を測る」という行動を、つい忘れてしまうのです。

 そこでおすすめなのが、「何かの『ついでに』やること」です。

 具体的には、「すでに習慣化している行動」に着目します。たとえば、「毎日お風呂に入る『ついでに』体重を測る」ようにするのです。よほどお風呂嫌いな人でない限り、お風呂に入ることを忘れる人はいないでしょう。だから、「すでに習慣化している行動(=お風呂に入る)の『ついでに』に行動する(=体重を測る)」ようにすれば、忘れないで習慣化しやすくなるということです。

 これは考えてみれば当たり前のこと。新しいことをやり続けようとしているのですから、「新たに覚えておくこと」が増えます。これはちょっと大変なことですよね。ですから、すでに習慣化していることにくっつけて、「ついでに」してしまうのです。

「ついでに」の実行アイデア3選

 とはいえ、読者の方々の中には「毎日、忙しくて『ついでに』やる時間もないよ……」と思う人もいるかもしれません。そこで、たとえば忙しく働いている人にとっても、すぐに始められる「ついでに」の行動を3つ紹介します(もちろん、主婦や学生の方でも、「ついでに」のタイミングを見つけるための根本的な考え方は同じです)。

1.通勤時間の「ついでに」

 多くのビジネスパーソンがすでに習慣化していることに「通勤」があります。その通勤時間の「ついでに」何かを始めるのはどうでしょうか。

 たとえば、スマートフォンで英語のリスニングの勉強をすることもできるでしょう。最近では5分程度の短い動画で、自己啓発やスキルアップの勉強ができるコンテンツが多く配信されています。そうしたものを利用して、新たな勉強習慣を身につけることもできるでしょう。勉強以外にも、通勤時間を活かせる行動はまだまだたくさんあると思います。

2.出勤直後の「ついでに」

 次に2つ目。出勤直後の時間を「ついでに」活用するというのはどうでしょうか。

 上司や先輩にホウレンソウ(報告・連絡・相談)を行うことは、多くのビジネスパーソンにとって必須の行動です。しかし、問題はそのタイミング。上司が自分より忙しい人なら、なかなかその時間を取れないのが現実です。そんなときに、出勤直後、朝のあいさつの「ついでに」というタイミングで上司と話すのです。

 たとえば、「おはようございます。ところで山田さん、いま、少しだけお時間をいただいていいですか? 先日の案件なんですが……」とホウレンソウを始めます。朝であれば、上司や先輩も比較的時間が取れるもの。もし、まだほとんど誰も出勤してきていないオフィスであれば、あなた一人のための時間となるでしょう。ホウレンソウといっても、通常は1、2分ほどの情報交換のはず。もしも長い話に発展するのであれば、そのときに別途、時間を取ってもらうように依頼するとよいでしょう。

 このように、ホウレンソウのタイミングを出勤の「ついでに」することによって、上司と部下のコミュニケーションが簡単に続けられるようになるというわけです。

3.会議が始まる「ついでに」

 最後に3つ目の「ついでに」の手法が効果的な事例を挙げます。それは、会議が始まる「ついでに」、今日の会議の「終了時間」と「得たい成果」を確認するというものです。

 あなたが会議の司会でない場合でも、司会や主催者に確認すれば、「今日の会議は1時間です。1時間後には、○○という成果を得たいと思いますので、みなさんよろしくお願いします」と始めることができます。このひとことがあるかないかによって、会議の生産性は大きく変わります。ダラダラと長引くこともなく、ビシッと終わることでしょう。

 これを会議の基本ルールに加えると、ビジネスの成果も上がることが期待できます。会議の冒頭の「ついでに」の行動が、いかに効果的か、ぜひ試してみてください。

筆者の永谷研一氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)

「コバンザメ作戦」で活用する

 以上、3つの「ついでに」できる効果的な行動の例を紹介しました。この3つに限らず、「タイミングは『ついでに』」という行動の習慣化ノウハウは、ほかにもさまざまなところで使えます。

 すでに習慣化しているものの代表例を挙げてみると、たとえば次のように「日常的に行われていて、すでに習慣化されている行動」があると思います。

・一般的なビジネスパーソンであれば、「通勤する」「会議に参加する」「報告を行う」「相談をする」「ランチを取る」など

・営業職であれば、「見積書を書く」「顧客と商談する」「アポイントメントを取る」など

・技術職であれば、「設計書を作成する」「開発を行う」「テストをする」など

 これらの行動にくっつけて、新しい行動を「ついでに」行うようにすればよいのです。すると、新しい行動も自然に続き、習慣化できるようになります。言うなれば「コバンザメ作戦」です。ぜひ、よりよい行動習慣を身につけるノウハウとして活用してみてくださいね。

 

■ 永谷 研一(ながや・けんいち)
発明家/行動科学専門家。株式会社ネットマン 代表取締役社長。1966年静岡県生まれ。1999年ネットマン設立。学校や企業の教育の場にITを活用するサービスのパイオニア。行動変容を促進するITシステムを考案・開発し、日米で特許を取得。アメリカでO-1ビザ(卓越能力者ビザ)が認められた。行動科学や認知心理学をベースに、1万5000人の行動変容データを検証・分析し、目標達成メソッド「PDCFAサイクル」を開発。三菱UFJ銀行、ダイキン工業、シミックHD、トリドールHD、日立グループなど130社の人材育成プログラムに導入される。また子供たちの自己肯定感を高める社会活動を行っている。4人の子の父。著書に『1日5分「よい習慣」を無理なく身につける できたことノート』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

永谷氏の著書:
科学的にラクして達成する技術

永谷 研一

参考記事

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発明家/行動科学専門家。株式会社ネットマン 代表取締役社長。
1966年静岡県生まれ。1999年ネットマン設立。学校や企業の教育の場にITを活用するサービスのパイオニア。行動変容を促進するITシステムを考案・開発し、日米で特許を取得。アメリカでO-1ビザ(卓越能力者ビザ)が認められた。
行動科学や認知心理学をベースに、1万5000人の行動変容データを検証・分析し、目標達成メソッド「PDCFAサイクル」を開発。三菱UFJ銀行、ダイキン工業、シミックHD、トリドールHD、日立グループなど130社の人材育成プログラムに導入される。また子供たちの自己肯定感を高める社会活動を行っている。4人の子の父。