4. さかのぼって受け取るか、繰り下げるか。73歳なら年額の差は約35万6000円
73歳で手続きをするときは、さかのぼって受け取るか、繰下げを請求するかを選べます。どちらを選ぶかで、手元に入るお金の形が変わります。
- さかのぼって受け取る:一括で約530万円、その後は年約106万円
- 繰下げを請求する:一括はなく、その後は年約142万円
- 年額の差:約35万6000円
一括の約530万円は、年額の差の約14.9年分にあたります。73歳から約14.9年がたつ88歳ごろまでは、さかのぼって受け取ったほうが受け取る合計が多い計算です。
ただし、この比べ方には税・社会保険料が入っていません。年金額が上がると、所得税や住民税、国民健康保険料や介護保険料が増える場合があるため、手取りで見ると差は変わります。
※試算の前提:令和8年度の満額(年84万7300円)が変わらないものとしてLIMO編集部が計算。繰下げの増額率の上限は84%(120か月分)です。
5. 80歳以降の請求は特例の対象外。障害年金・遺族年金を受け取る権利がある人も
日本年金機構によると、特例的な繰下げみなし増額制度は、次の場合には使えません。
- 80歳以降に請求する場合
- 請求の5年前の日以前から、障害年金や遺族年金を受け取る権利がある場合
また、65歳以降に厚生年金保険に加入していた期間などがあり、在職老齢年金の仕組みで支給が止まっていた老齢厚生年金の額は、増額の対象になりません。老齢基礎年金だけでなく老齢厚生年金も受け取れる人は、年金事務所で見込額を確かめておくと安心です。
6. 5年分を一括で受け取ると、保険料や税金にさかのぼって影響する場合も
日本年金機構は、過去分の年金を一括で受け取ると、過去にさかのぼって医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金などに影響する場合があると案内しています。老齢年金ガイドでは、繰下げ受給について、年金生活者支援給付金に影響する場合があることにも触れています。
まとまったお金が入る一方で、あとから保険料や税金の通知が届くことがあります。一括で受け取るかどうかを決める前に、住んでいる市区町村の窓口や年金事務所で、どの負担が変わりそうかを聞いておきましょう。
7. 65歳の前に、年金請求書とねんきんネットで記録を見ておく
老齢基礎年金は請求の手続きをしてから支給が始まり、さかのぼって受け取れるのは5年分までです。満額の人が73歳で請求すると、特例的な繰下げみなし増額制度により、一括で約530万円を受け取れる計算になります。
特例は80歳以降の請求には使えず、一括で受け取ると保険料や税金に影響する場合もあります。年金の日をきっかけに、ねんきんネットで自分の記録と見込額を確かめ、65歳の誕生月の前に届く年金請求書を見落とさないようにしておいてください。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の年金額や時効の扱いは個別の状況で異なるため、日本年金機構や年金事務所でご確認ください。
※LIMOでは、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。
参考資料
- 日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」
- 日本年金機構「年金の時効」
- 日本年金機構「令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました」
- 日本年金機構「令和8年度「ねんきん月間」「年金の日」の取り組み」
中本 智恵