財務省が2026年10月22日の財政制度等審議会 財政制度分科会に示した資料「文教・科学技術」によると、2026年度に標準額を上回る授業料を設定している国立大学は、85大学のうち11大学(約13%)です。
授業料を上げた大学は、その理由をどう説明しているのでしょうか。埼玉大学、山口大学、電気通信大学は2025年10月に改定を発表し、学士課程の授業料を2026年4月入学者から、標準額の120%にあたる年64万2960円にしました。
この記事では、3大学が発表に書いた改定の理由と、授業料の上限が決まる仕組み、2027年4月以降に続く大学院などの動きを確認します。
1. 国立大学の授業料は省令で標準額が年53万5800円、特別の事情があれば120%まで
国立大学の授業料は、「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」で標準額が決まっています。3大学の改定の前提になる仕組みを、先に確認します。
1.1 省令の標準額は学部が年53万5800円、特別の事情があれば標準額の120%を超えない範囲で定められる
省令の第二条第一項の表では、大学の学部の授業料の年額は53万5800円です。夜間において授業を行う学部は26万7900円です。第十条は、国立大学法人が特別の事情があるときに、標準額に120%を乗じた額を超えない範囲で定められると規定しています。
学部の場合、標準額53万5800円の120%は64万2960円です。夜間において授業を行う学部は、26万7900円の120%にあたる32万1480円が上限です。3大学の昼間の学士課程の新しい額は、この上限と同じ額です。
1.2 財務省は標準額を物価や賃金に応じて毎年度見直す仕組みを提案しているが、決まったものではない
財務省の同じ資料では、標準額は2005年度以降、据え置かれていると指摘しています。次期中期目標・計画期間(2028年度から)に向けて、標準額を物価・賃金の動向に応じて毎年度見直す仕組みとすべきではないか、とも提案しています。
この提案は2026年11月4日時点で決まったものではありません。標準額の扱いは、今後の議論によって変わる可能性があります。
2. 3大学は、物価や社会環境の変化の中で、安定した収入が必要なことを改定の理由に挙げた
3大学が発表に書いた授業料の改定の理由(要点)1/2
出所:埼玉大学「機能強化のための授業料改定について」、山口大学「令和8年4月以降の授業料改定決定のお知らせ」、電気通信大学「2026年4月以降の授業料の改定について」をもとにLIMO編集部作成
3大学の発表は、表現こそ違いますが、教育環境を保つために、授業料を安定した収入として位置づけるという考え方で共通しています。
2.1 埼玉大学は、少子化や社会環境の変化の中で教育環境の質を保つため、安定的な収入の増加が必要と説明
埼玉大学は2025年10月10日の発表で、少子化や社会環境の変化を踏まえ、教育環境の質を維持・向上するには、安定的かつ基盤的な収入の増加が必要になると説明しました。
2.2 山口大学は、既存の財源だけでは教育研究環境を整えられず、学生に不利益が生じると説明
山口大学は2025年10月30日の発表で、国からの運営費交付金をはじめとする既存の財源だけでは、学生の教育研究環境の維持・改善や整備・拡充ができず、学生に不利益が生じると判断したと説明しました。物価高騰(特に電気代)や賃上げなどの社会情勢の変化も挙げています。
改定分は在学期間中の教育研究環境の向上に充て、整備の内容と金額を適時公表するとも記載しています。
2.3 電気通信大学は、20年間据え置いてきた授業料を基盤的な収入として活用する判断と説明
電気通信大学は2025年10月31日の発表で、学長メッセージとして、AI技術の発展やグローバル化で大学教育を取り巻く環境が変化している中、スポット財源だけに頼らず、基盤的で安定した収入として授業料を活用する判断をしたと説明しました。授業料は20年間据え置いてきた経緯があり、大学にとって重い決断だとしています。
3. 3大学の学士課程の授業料は、2026年4月入学者から年64万2960円に改定
改定後の額は3大学とも64万2960円で、標準額との差は年10万7160円です。単純に4年間で比べると、差は42万8640円です。各大学の発表で、学士課程の対象は次のように示されています。
- 電気通信大学:学士課程の昼間コースは2026年4月以降の入学者から、53万5800円を64万2960円に改定。夜間主コースは26万7900円を32万1480円に改定。入学料と検定料は据え置き
- 埼玉大学:学部は令和8年(2026年)4月入学者以降、53万5800円を64万2960円に改定。経済学部夜間主コースは26万7900円を32万1480円に改定。入学料と検定料は変更なし
- 山口大学:学士課程は令和8年(2026年)4月入学者より、53万5800円を64万2960円に改定。入学料と検定料の改定は行わない
発表では適用の開始は2026年4月入学者からとされており、2026年度の新入生から改定後の額の対象になっています。学士課程の新しい額は、標準額の120%という上限に当たる年64万2960円です(夜間主コースを除く)。
志望校の発表を読むときは、額だけでなく、改定の理由と対象になる入学時期を確かめておくと、入学年度ごとの学費を見通しやすくなります。
ここからは、大学院と博士後期課程での扱いの違い、在学生への適用、2027年度に続く改定の動き、改定とあわせて示された減免などの支援を見ていきます。