5. 社会保険料が上がると給付も変わる?傷病手当金や将来の厚生年金も標準報酬月額で計算される

標準報酬月額は、社会保険料だけでなく、給付の計算にも使われます。協会けんぽ「傷病手当金」では、1日あたりの額は、支給開始日以前の12か月間の標準報酬月額の平均を30で割り、3分の2をかけて計算します。

厚生年金の報酬比例部分も、標準報酬月額をもとに計算されます。日本年金機構「報酬比例部分」の計算式に当てはめると、標準報酬月額が2万円高い状態が1年間続いた場合、65歳から受け取る老齢厚生年金は年約1300円増える計算です。

6. 【検証】試算から見えること:同じ残業代でも、上がる等級は月給が等級のどこにあるかで変わる

今回の試算からは、3つのことが読み取れます。1つは、社会保険料の増え方は残業代の額に比例しないことです。平均的な月給の34万600円は、上の等級の境目まで9400円しかなく、少しの残業代でも1等級上がります。一方、平均的な残業代の約2.7万円でも2等級には届きませんでした。

同じ標準報酬月額34万円の等級でも、月給が下の境目の33万円に近い人なら、1等級上がるのは残業代が月約2万円を超えたときです。月給が等級のどこにあるかで、同じ残業代でも結果が変わります。

2つ目は、残業代のような月によって変わる給与は、4月から6月の分が1年間の社会保険料に反映される一方、ほかの月の増減は随時改定のきっかけにならないことです。給与明細で社会保険料を確かめるときは、9月分が差し引かれる10月の給与と、4月から6月の給与を並べてみると理由が分かります。

3つ目は、例年4月から6月が忙しい仕事には、1年間の報酬の平均で決める仕組みがあることです。日本年金機構「保険者決定」では、4月から6月の平均で出した標準報酬月額と、前年7月から当年6月までの平均で出した額に2等級以上の差があり、その差が業務の性質上、例年発生すると見込まれる場合が対象です。

この仕組みは、会社が算定基礎届に申立書を添え、本人の同意を得て届け出るものです。社会保険料は実際に受け取った報酬に応じて負担し、その分、傷病手当金や将来の年金といった給付にもつながります。保険料が上がった理由が分からないときは、勤め先の担当部署で、今年の標準報酬月額と、その元になった4月から6月の報酬を確かめてみましょう。

7. まとめ

昇給がなくても9月から社会保険料が上がるのは、4月から6月に支払われた残業代や通勤手当を含む報酬の平均で、9月分から1年間の標準報酬月額が決まるためです。平均的な月給の34万600円なら、残業代が月約9400円を超えると1等級上がり、社会保険料は年約3.6万円増えます(東京都の協会けんぽ・40歳以上)。

上がった社会保険料は、残業代が減っても年の途中では変わらず、戻るとしても翌年9月分からです。給与明細で社会保険料が変わったときは、4月から6月の報酬と標準報酬月額の等級を照らし合わせてみてください。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の社会保険料は、加入している健康保険(協会けんぽの都道府県支部や健康保険組合)、年齢、支払基礎日数、給与の締め日と支払日、制度改正などにより異なります。ご自身の標準報酬月額は勤め先の担当部署で、制度の詳細は日本年金機構や加入している健康保険でご確認ください。

参考資料

齊藤 慧