株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、PPIH)は2026年11月2日、国内外のグループ総店舗数が1000店舗を突破したと発表しました。

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出所:株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス

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2026年7月のOlympicグループの子会社化に続き、10月30日にはトイザらス・ベビーザらス154店舗を承継。M&Aによって店舗網を急速に拡大しています。

PPIHは過去にも経営不振に陥った小売企業を買収し、収益性を改善してきました。現在の店舗構成を整理するとともに、M&Aの特徴や企業再生の手法を、過去の実績から検証します。

1. PPIHグループが1045店舗を突破、ドンキ屋号は約半分

PPIHによると、2026年10月30日付で日本トイザらス株式会社から全国154店舗を承継し、既存の891店舗と合わせて総店舗数が1045店舗となりました。

同社は1989年3月、東京都府中市にドン・キホーテ1号店を開店。約37年半で1000店舗を超える小売グループに成長しました。

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出所:株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス

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2026年11月時点の店舗内訳は以下の通りです。

1.1 国内店舗:924店舗(88.4%)

  • ディスカウント事業・小型業態ほか:549店舗(52.5%)
  • ドン・キホーテ:302店舗
  • MEGAドン・キホーテ:146店舗
  • MEGAドン・キホーテUNY、ドン・キホーテUNY:62店舗
  • ピカソ、長崎屋、ドミセなどの小型業態ほか:39店舗

1.2 UNY事業・新業態ほか:221店舗(21.1%)

  • アピタ・ピアゴ:123店舗
  • Olympic:93店舗
  • ロビン・フッド:5店舗

1.3 玩具・ベビー用品事業:154店舗(14.7%)

  • トイザらス・ベビーザらス:154店舗

1.4 海外店舗:121店舗(11.6%)

  • 北米事業:78店舗
  • アジア事業:43店舗

「ドン・キホーテ」「MEGAドン・キホーテ」「MEGAドン・キホーテUNY」「ドン・キホーテUNY」を合計すると510店舗で、グループ全体の48.8%です。

残りの約半分は、総合スーパーのアピタ・ピアゴ、玩具専門店のトイザらス、北米の高級スーパーGelson'sなど、幅広い業態で構成されています。

2. PPIHのM&A戦略の特徴は?

PPIHは自社での新規出店に加え、M&Aによって店舗網を拡大してきました。

代表的な買収・事業承継の沿革は次の通りです。

  • 2007年:株式会社長崎屋を連結子会社化
  • 2013年:米国のMARUKAI CORPORATIONを連結子会社化
  • 2017年:ハワイでスーパーを展開するQSI, Inc.を子会社化
  • 2019年:ユニー株式会社を連結子会社化
  • 2021年:米国の高級スーパーGelson'sを運営するGRCY Holdings, Inc.を子会社化
  • 2026年7月:株式会社Olympicグループを完全子会社化
  • 2026年10月:日本トイザらスの店舗・事業を承継

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出所:株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス

出所:株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス

国内では総合スーパーやディスカウントストアなど、既存の店舗網を持つ企業との経営統合が中心です。

長崎屋やユニーでは、既存店舗をMEGAドン・キホーテなどへ転換する取り組みを進めました。店舗の立地や商圏を生かしながら、商品構成や運営方法を変更する手法です。

海外では、MARUKAIやGelson'sなど、現地の顧客基盤を持つスーパーを買収しています。海外の買収先は必ずしも経営不振企業ではなく、現地の販売網の獲得や事業拡大を目的とした案件もあります。

2026年にグループ入りしたOlympicとトイザらスは、いずれも国内の既存店舗網を活用できる企業です。M&Aによって店舗数と販売カテゴリーを拡大するPPIHの成長方針が表れています。

3. 経営不振の小売チェーンを相次いで買収、Olympicとトイザらスの現状

PPIHは2026年、業績が悪化していた国内の小売チェーン2社を新たにグループに迎えました。

2026年7月1日、PPIHは首都圏を中心に食品スーパーやディスカウントストアなどを展開する株式会社Olympicグループを完全子会社化しました。

3.1 Olympicグループ:営業赤字23億円、首都圏の店舗網を取得

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出所:株式会社Olympicグループ

出所:株式会社Olympicグループ

同社の2026年2月期決算は厳しい内容でした。

  • 営業収益:981億5700万円(前期比0.5%減)
  • 営業損失:23億7200万円(前期は5100万円の黒字)
  • 経常損失:26億2100万円
  • 最終損失:37億9800万円

値下げ販売による利益率の低下に加え、人件費や物流費などの負担が収益を圧迫しました。2026年2月期には経営資源の集中を目的として10店舗を閉鎖しています。

PPIHとの経営統合では、商品調達や物流などの効率化が期待されています。

両社が2026年4月に公表した経営統合資料には、Olympicグループの財務予測として、価格政策の見直しや取引先の集約、輸送ルートの変更などによって、2027年2月期に営業損益を約34億円改善する計画が示されています。

この予測にはPPIHとの統合による相乗効果が織り込まれていないため、グループ全体の経営資源を活用して収益改善を進められるかが焦点となります。

3.2 トイザらス:8期連続の最終赤字、約132億円の負債を抱える

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出所:日本トイザらス株式会社

出所:日本トイザらス株式会社

日本トイザらス株式会社は2026年10月1日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請しました。株式会社帝国データバンクによると、負債総額は約132億円で、国内のおもちゃ量販店として過去最大の倒産となりました。

同社の売上高は2007年1月期の約1944億円をピークに減少し、2025年12月期には約752億円まで縮小しています。2019年1月期から2025年12月期まで8期連続で最終赤字を計上しました。

少子化による玩具市場の変化やインターネット通販との価格競争に対応できず、経営が悪化しました。

PPIHは関係会社の株式会社オペレーションシェアードサービスを通じて事業を承継。東京商工リサーチが入手した資料によると、事業譲渡価格は28億8000万円です。

PPIHは「ドン・キホーテやユニーの大型店舗内へのトイザらスの出店を検討している」と説明しており、大人向け玩具の販売強化も今後の方向性として挙げられました。

店舗網の活用や新しい顧客層の開拓により、玩具専門店の収益をどこまで改善できるかが注目されます。

4. PPIHが企業再生に強い理由とは?ユニーの営業利益は5年間で2倍以上に

PPIHの企業再生能力を検証するうえで、代表的な事例がユニーです。

PPIHは2019年1月にユニーを連結子会社化し、総合スーパーのアピタ・ピアゴなどの改革を進めました。

2024年6月期の決算説明資料によると、ユニーとUDリテールの業績は2019年2月期と比べて大幅に改善しています。

  • 売上高:6127億円 → 7029億円(14.7%増)
  • 営業利益:217億円 → 448億円(約2.1倍)
  • 営業利益率:3.5% → 6.4%
  • 販売費及び一般管理費率:28.6% → 25.6%

5年間で売上高は約15%増でしたが、営業利益は2倍以上に拡大しました。営業利益率も2.9ポイント改善しています。

4.1 既存店舗をMEGAドン・キホーテUNYへ転換

ユニーの改革では、総合スーパーが得意とする食品販売と、ドン・キホーテが強みを持つ非食品販売のノウハウを組み合わせました。

PPIHによると、2024年6月期までに63店舗を新業態へ転換しています。

食品売場を利用する既存顧客に加え、化粧品や雑貨、家電などを求める顧客の来店を促し、売上の拡大を図りました。

既存の店舗施設を活用できるため、建物を新設せずに売場や商品構成を変更できることも、この手法の利点です。

4.2 商品調達と本部機能を統合、販管費率を改善

ユニーの収益改善には、売場改革とともにコスト管理の見直しが寄与しました。

PPIHはプライベートブランド(PB)やメーカーと共同開発するOEM商品の構成比を高め、商品調達の仕組みを改革しました。

基幹システムやバックオフィス機能の統合、人員配置の適正化なども実施しています。

これらの取り組みにより、販管費率は2019年2月期の28.6%から2024年6月期の25.6%まで低下しました。

売上高が増えるなかで販管費率を抑えられたことが、営業利益の増加につながっています。

4.3 現場に権限を与える「個店経営」

PPIHは店舗ごとに商品の仕入れや陳列、販売方法などを工夫する「個店経営」を重視しています。

地域によって顧客の年齢層や購入する商品、競合店の状況は異なります。店舗側に権限を与えることで、商圏の特性に合わせた商品構成や販売施策を実行しやすくしています。

ユニーでも、ディスカウント事業で培った販売手法や権限委譲の仕組みを取り入れ、現場の販売力を強化してきました。

Olympicとトイザらスもグループ入りから間もないため、再生の成果を判断するには今後の業績を注視する必要がありそうです。

5. トレンドウォッチャーのひとこと

大蔵 大輔

PPIHの2026年6月期の連結売上高は2兆4453億円で、営業利益は1748億円でした。売上高は1989年3月のドン・キホーテ1号店開店から続く、37期連続の増収を達成しています。

国内の上場小売企業を直近通期の連結売上高で比較すると、イオンが約10兆7153億円、セブン&アイ・ホールディングスが約10兆4303億円で上位を占めています。2026年8月期に約3兆9633億円を売り上げたファーストリテイリングが続き、PPIHは4位に位置します。

上位3社との差はまだ大きいですが、2026年にPPIHグループ傘下に入ったOlympicとトイザらスは、いずれも100店舗前後以上の店舗網を持つ小売チェーン。今回の2社は買収・承継前に赤字を計上していますが、企業再生に成功すれば大きな成長エンジンになるでしょう。

ユニーでは買収後5年間で営業利益を2倍以上に拡大しました。Olympicやトイザらスでも同様の改善を実現できるかが、PPIHの今後の成長を左右する材料となりそうです。

参考資料

大蔵 大輔