5. 伸び率の数字を読むときの注意点は3つ
伸び率が大きい3手口について、前年同期の件数との比較と全体に占める割合をまとめると、次のようになります。
5.1 注意点1 前年同期の件数が少ないと、伸び率が大きく見えやすい
公表資料の差額から前年同期の認知件数を逆算すると、その他の特殊詐欺は238件、金融商品詐欺は108件、交際あっせん詐欺は261件です。もともとの件数が小さかったことが、伸び率の高さに影響しています。
たとえば前年同期が238件の場合、238件増えただけで伸び率は+100%になります。伸び率の大きさだけでは、増えた件数の多さは分かりません。
同じ見方は、被害額にも当てはまります。その他の特殊詐欺は、前年同期の被害額が4.5億円と小さく、58.3億円になったことで+1193.5%という大きな比率になりました。
なお、これらは「今年の件数−前年同期差」から算出した値で、前年同期の公表値そのものではありません。
5.2 注意点2 伸び率が大きくても、全体に占める割合は小さい
3手口の認知件数の合計は1744件で、全体(29687件)の約5.9%です。被害額の合計は101.4億円で、全体(2360.7億円)の約4.3%にとどまります。
ただし、全体の認知件数の増加分(+3732件)のうち、3手口の増加分(+1137件)は約30.5%を占めます。被害額の増加分で見ると、約12.9%(+75.9億円)です。
比較のために、上位のSNS型投資詐欺(認知件数7097件)を見ると、3手口の合計1744件の約4.1倍です。伸び率の大きい手口は、件数の規模では上位手口に及びません。
5.3 注意点3 数値は暫定値で、手口の定義や内訳は公表されていない
今回の数値はいずれも暫定値で、今後の確定値で変わる可能性があります。手口別の確定値が公表されたときは、あらためて伸び率を確認する必要があります。
また、公表資料には、「その他の特殊詐欺」の具体的な定義や内訳は記載されていません。どのような手口が増えたのかまでは、この資料からは分かりません。
そのため、公表資料から言えるのは、認知件数と被害額が前年同期より増えたという事実までです。増加の理由や背景は、この資料からは読み取れません。
では、手口ごとの被害の重さには、どのような違いがあるのでしょうか。次のページで、1件あたりの被害額を試算します。