毎月の奨学金の返還が負担になっている若手社会人や就活生は少なくありません。そうした中、企業が従業員に代わって日本学生支援機構(JASSO)へ直接送金する「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度」の利用が広がっています。

JASSOによると、2026年3月末時点で全国4852社が利用しています。同年7月21日には経団連と文部科学大臣らが懇談し、制度の周知と活用に向けた取り組みが話題に上りました。

一見すると魅力的な制度ですが、「給与に手当として上乗せされる場合」と何が違うのでしょうか。支援を受けている途中で退職した場合は、どうなるのでしょうか。本記事では、代理返還制度の仕組みから、JASSOが案内している税金・社会保険料の考え方、入社前に確認しておきたい社内規程のポイントまでを解説します。

※本記事は、公的機関などが公表している情報をもとにした一般的な制度の紹介です。税務・社会保険・労務・法律に関する個別の判断を行うものではなく、特定の企業の制度を保証するものでもありません。具体的な取扱いは、勤務先の人事・経理担当者、税務署、年金事務所、税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。制度の内容は変更される場合があります。

1. 奨学金の「代理返還」とは?企業がJASSOへ直接送金する仕組み

企業が代わりに返す「代理返還」の流れ1/4

企業が代わりに返す「代理返還」の流れ。企業が対象者を決めてJASSOへ申請し、返還証明書で残額を確認したうえで、口座振替か払込取扱票で送金する5つの手順

出所:日本学生支援機構(JASSO)「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度」をもとにLIMO編集部作成

代理返還制度とは、企業が従業員に代わってJASSOへ直接送金し、奨学金の返還を支援する仕組みです。(JASSOの案内では「企業等」と表記されていますが、本記事では以下「企業」と表記します。)JASSOの報道発表(2020年12月22日)によると、2021年4月1日から企業からJASSOへの直接送金が可能になりました。対象はJASSOの貸与奨学金のうち、第一種奨学金と第二種奨学金です。

JASSOの案内によると、利用の大まかな流れは次のとおりです。

  1. 企業が返還支援の対象者を決め、JASSOへ制度の利用申請を行います。
  2. JASSOが企業へIDやパスワードなどを発行します。
  3. 対象者がJASSOへ「奨学金返還証明書」の発行を申請し、JASSOから発行を受けます。
  4. 企業が「奨学金返還証明書」で返還残額を確認したうえで、支援額を決定します。
  5. 企業がJASSOへ送金します。方法は口座振替と払込取扱票(郵便局の窓口またはコンビニで支払い)の2種類です。

口座振替の場合、振替日は毎月6日で、1件(債権)あたり135円(税込)の手数料は企業が負担します。なお、本記事は企業がJASSOへ直接送金する代理返還制度を扱っており、自治体が独自に行う奨学金返還の補助制度は対象外です。

対象となる要件や支援の条件は、企業ごとに設定されています。たとえば、正社員に限る、年齢の上限がある、採用から一定期間に限る、累計額に上限があるなどの例があります。

また、返還期限猶予中や減額返還中の人は、JASSOの案内では原則として支援の対象になりません。支援を希望する場合は、それぞれ「奨学金返還期限猶予短縮願」「奨学金減額返還短縮願」の提出が必要とされています。手続きの詳細は、JASSOの案内や勤務先の担当者にご確認ください。

制度を導入している企業は、JASSOの検索サイトで調べることができます。2026年9月30日更新時点の掲載数は2365社です。