親が亡くなったあとに借金が見つかり、相続放棄を考える方は少なくありません。ただ、相続放棄をしたはずなのに故人の借金の請求が届いた、家族の誰かが放棄したら別の親族に請求が回った、という話もよく聞かれます。
富裕層や法人のお客さまの資産運用のご相談を受けていた経験からお伝えすると、相続は、預金や株式といったプラスの財産だけでなく借金も引き継がれるため、早めに確かめておきたいテーマです。ここでは、相続放棄の期限と手続き、借金の請求がどこへ移るのかを、民法の決まりに沿って整理します。
あわせて、配偶者と子2人の家族を例に、子だけが相続放棄した場合に借金の負担がどう変わるかを、借金100万円あたりで試算します。
※子2人は、国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」で、妻45〜49歳の夫婦の最終的な子どもの数が1.81人であることをもとに、四捨五入して置いた前提です。
1. 相続放棄すれば借金の請求は払わなくてよい?家庭裁判所で受理されれば払う必要はない
相続放棄は、家庭裁判所に申述して受理されることで効力が生じます。民法第939条により、相続放棄をした人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。そのため、受理されていれば故人の借金を払う必要はありません。
ただし、家族の話し合い(遺産分割協議)で「自分は何も受け取らない」と決めただけでは、相続放棄にはなりません。相続人のままである以上、借金も法定相続分に応じて引き継ぎます。民法第902条の2では、遺言などで相続分が指定されていても、お金を貸した側(債権者)は法定相続分に応じて各相続人に請求できるとされており、話し合いで決めた分け方とは別に請求されることがあります。
- 【家庭裁判所での相続放棄】初めから相続人でなかった扱いになり、借金の請求は及ばない
- 【遺産分割で受け取らないと決める】相続人のままなので、法定相続分の借金を請求されることがある