災害報道は被害に注目するが、防がれた被害にも注目すべきだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。

堤防のおかげで助かった人も多い

今年は、災害の多い年でした。亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますと共に、被災された方々にお見舞い申し上げます。

災害が発生すると、マスコミは被害の状況について詳しく報道します。それは当然のことです。そして、その中に「この被害は防げなかったのか」といったコメントが含まれる場合が多いのも、当然のことでしょう。

しかし、「被害が防がれた」という報道も、ぜひお願いしたいと思います。台風19号で言えば、「狩野川台風と同じような台風だったのに、当時より被害が小さくて済んだのはなぜなのか。堤防やダムといった治水工事のおかげで防がれた被害も多かったのではないか」ということにも着目して欲しいのです。

起きたことを報道するのは簡単ですが、起きなかったことを報道するのは容易ではないでしょうが、起きなかったことも起きたことと同じくらい重要な場合も多いのです。

堤防が決壊したことだけを報道するのではなく、堤防によって洪水を免れた地域が多いことも報道することで、我々が堤防を作った人に感謝の気持ちを持つことができるような報道をお願いしたいと思います。

加えて、治水事業の重要性を国民が認識して、今後も治水事業をしっかり行うべきだ、という国民的コンセンサスが形成されるとすれば、それは素晴らしいことですね。

今回の場合は、狩野川台風と厳密には規模も降雨量も違うのでしょうが、おおざっぱな比較はできるので、「ダムや堤防等のおかげでどれくらい被害が防げたのか」を示すことはそれほど難しくないと思います。

予防した人より救出した人が感謝される傾向

被災された方々を自衛隊等々が必死に救済しているところは数多く報道されました。自衛隊等々の活躍には本当に頭が下がるし、いくら感謝しても足りないほどです。そうした報道は大いにやってほしいのですが、災害を防いだ治水関係の方々に関する報道も、同じくらいの大きさでお願いしたいですね。