5. 退職金で車を一括購入したあとの残りは平均余命と比べてどうなる?700万円の車なら残りは不足額の約18.1年分
厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」によると、65歳の平均余命は男性19.68年、女性24.52年です。前の章の試算と並べると、次のようになります。
- 【500万円の車を買った場合】残りの1123万円は生活費の不足額の約22.1年分
- 【700万円の車を買った場合】残りの923万円は約18.1年分で、65歳男性の平均余命19.68年を下回る
同じ調査の高校卒(管理・事務・技術職)の退職一時金制度のみの平均は1378万円です。この場合、700万円の車は退職一時金の約50.8%にあたり、残りの678万円は生活費の不足額の約13.3年分になります。
また、15年乗る試算では、65歳で買った車を手放すのは80歳頃になる計算です。運転をやめる時期は、心身の状態や住む地域などによって人それぞれですが、80歳の平均余命は男性9.10年、女性11.95年で、車を手放したあとの移動の費用も、老後資金の中で考えることになります。
ただし、この試算には年金の受け取り方の違いや、退職一時金以外の貯蓄は含めていません。家計調査の不足額は65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均で、持ち家の割合や世帯の働き方によっても変わります。
6. 【証券会社出身の視点】検証:車の代金は「乗る年数」と「退職金の残り」の2つで見る
この記事では、車両価格300万円・500万円・700万円の車を5年・10年・15年乗った場合の1年あたりの費用と、退職一時金の平均1623万円から車の代金を出した場合の残りをご紹介しました。
試算を並べると、1年あたりの費用は年約38.4万円から年約158.2万円まで開きます。700万円の車でも15年乗れば年約65.1万円で、500万円の車を10年で乗り換える場合より低くなります。一方で、退職金の残りで見ると、700万円の車は退職一時金の約43.1%を一度に使うことになります。
まとまったお金は、使う時期ごとに分けて考えると、整理しやすくなります。車の代金は、乗る年数で割れば毎年の費用ですが、払うのは最初の1回です。退職金の中では「すぐに使うお金」に入ります。
確認していただきたい観点を、順に整理します。第一に、何歳まで運転するつもりか。第二に、退職金のうち一時金で受け取る額と、年金を受け取り始めるまでの生活費。第三に、車の代金を出したあとに残るお金が、毎月の不足額の何年分になるかです。
乗る年数が決まると、1年あたりの費用も、退職金の中でどれだけを車にあてるかも決めやすくなります。車両価格と乗る年数を一緒に書き出してみると、ほかのお金とのバランスを考えやすくなるかもしれませんね。
7. まとめ
退職金で車を一括購入すると、1年あたりの費用は車両価格を乗る年数で割った額に維持費を足した額になります。維持費は税金と自賠責保険料で年約6.9万円、家計調査のガソリン代と整備費を足すと年約18.2万円で、500万円の車を10年乗ると年約68.2万円、700万円の車を15年乗ると年約65.1万円です。
退職一時金の平均1623万円から500万円の車を買うと残りは1123万円、700万円なら923万円です。自賠責保険料は2026年11月から上がっており、13年を超えると自動車税と自動車重量税も重くなります。乗る年数と運転する年齢を合わせて見ておくと、退職金の使い方も考えやすくなります。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。本記事は特定の商品の購入やローンの利用をすすめるものではありません。自動車税と自動車重量税は車の排気量・重さ・燃料の種類・登録年月によって異なり、ガソリン代や整備費は乗り方によって変わります。税額は各都道府県や国土交通省のホームページでご確認ください。
参考資料
- 東京都主税局「自動車税」
- 国土交通省「自動車重量税額について」
- 金融庁「自賠責保険基準料率改定の届出について」
- 群馬県「自動車税の税制改正について」
- 総務省統計局「家計調査 家計収支編 2025年」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」
- 警察庁「運転免許統計」
安達 さやか