7. 【試算結果から】対物超過修理費用特約は、被害を受けたときではなく、加害者になったときに役立つもの
試算で分かれ目になったのは、修理代の大きさよりも、時価額と修理代の差が50万円に収まるかどうかでした。相手の特約は自分では選べないため、被害を受けた側にできることは、相手の契約を確かめることと、自分の車両保険の中身を知っておくことです。
車両保険の保険金額は契約のときの車の価値をもとに決まり、年数がたつと下がっていくことが多い点は、更新のときに確かめておきたいところです。年数がたった車ほど、修理代が保険金額を上回る組み合わせが起こりやすくなります。
一方で、自分の自動車保険に付いている対物超過修理費用特約は、自分が事故を起こしたときに相手の修理代の差額を補うものです。被害を受けたときではなく、加害者になったときに相手との話し合いを進めやすくする特約、と位置づけて見ておくと分かりやすくなります。
補償の名前だけでなく「上限はいくらか」「何をしたら払われるか」まで読むと、事故のあとに慌てずに済むでしょう。修理代と時価額の差は、事故が起きてから埋めようとすると選べる手段が限られます。
車両保険を付けるかどうか、保険金額をいくらにするかは、車の年数や家計の状況によって判断が分かれます。更新の案内が届いたときに、時価額を超える修理代がどこまで補われる契約かを一度確かめておく、という置き方もあります。
8. まとめ
過失10対0の事故でも、修理代が時価額を超えると、相手が賠償するのは時価額(と買替えの諸費用)までが一般的な扱いです。差額は、相手の対物超過修理費用特約があれば、大手損保3社の案内では1事故1台50万円まで補われ、自分の車両保険でも、保険金額や会社ごとの規定・特約の範囲で受け取れます。
時価額の根拠や特約の使い方で迷ったときは、加入している保険会社・代理店、そんぽADRセンター、交通事故紛争処理センター、法テラスに相談してみてください。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際に受け取れる額は、事故の状況、車の時価額、相手と自分の保険契約の内容によって変わります。詳しくは、加入している保険会社・代理店でご確認ください。
参考資料
- 裁判所「裁判例検索」最高裁判所第二小法廷 昭和49年4月15日判決(昭和48年(オ)第349号)
- e-Gov法令検索「民法」
- 損害保険料率算出機構「自動車保険の概況 2025年度版」
- 自動車検査登録情報協会「平均車齢」
- 東京海上日動火災保険「対物超過修理費特約(正式名称:対物超過修理費用補償特約)」
- 東京海上日動火災保険「車両保険」
- 東京海上日動火災保険「車両保険(限度額引上げ払)」
- 三井住友海上火災保険「「対物超過修理費用特約」とはどのような特約ですか?」
- 三井住友海上火災保険「対物賠償保険・対物超過修理費用特約」
- 三井住友海上火災保険「車両全損時復旧費用特約」
- あいおいニッセイ同和損害保険「「対物超過修理費用特約」はどのような特約ですか?」
- 東京海上日動火災保険「車両無過失事故に関する特約」
- 日本損害保険協会「そんぽADRセンター(損害保険相談・紛争解決サポートセンター)」
- 公益財団法人交通事故紛争処理センター
- 法テラス(日本司法支援センター)
下村 美乃莉