有機ELディスプレー用燐光発光材料メーカーのユニバーサルディスプレイコーポレーション(UDC、米ニュージャージー州)は、2019年通期の売上高見通しを、3.7億~3.9億ドルから4億~4.1億ドルに引き上げた。上方修正は前期に続き3度目。有機EL各社の生産増が寄与する見込みだ。

材料売り上げ横ばいもライセンス収入伸びる

 先ごろ発表した19年7~9月期の業績は、売上高が前年同期比26%増の9752万ドル、営業利益が同57%増の4083万ドルとなった。売上高のうち、発光材料の売上高は同1%増の5184万ドルと、ほぼ横ばいだったが、ロイヤルティー&ライセンス収入が同84%増の4302万ドルと大きく増えた。黄緑色を含む緑色発光材料の売上高は4020万ドル(前年同期は3640万ドル)へ増えたが、赤色発光材料の売上高は1140万ドル(同1460万ドル)に減少した。

 売上高の地域別構成は、韓国が同30%増の7004万ドルと72%を占め、中国が同36%増の2321万ドルで24%を構成した。日本は114万ドルで、前年同期から6割以上減少した。韓国のサムスンディスプレー(SDC)がアップルのiPhone向けにフレキシブル有機ELを増産したことなどが寄与したようだ。

21年には約5割の増収機会

 同社は有機ELの生産能力が、インストールベースで19年末に17年末比で5割増加すると予測してきたが、これに伴って出荷面積(㎡ベース)で21年には19年末比で約5割増加するとの見方を示した。

 この背景として、LGディスプレーが中国広州に新設したテレビ用有機EL工場がこれから本格稼働し、22年までに年間1000万枚以上のテレビ用有機ELパネルを生産すること、中国のBOEがスマートフォン用有機EL工場として成都B7、綿陽B11を稼働させ、この1年でシェアを10%まで上げたうえ、さらに重慶B12と福州B15を計画していること、そして中国の天馬微電子が厦門にフレキシブル有機EL工場の新設を発表し、22年初頭までに68億ドルを投資予定であることなどを挙げた。

 上方修正によって、19年10~12月期の売上高は1億ドル強(前年同期は7014万ドル)になる見込みだが、「前年よりパイプラインが良い。この傾向は20年も続く」と述べ、有機ELの生産量が拡大していくことを示唆した。

ホスト材料メーカーと協業深化

 UDCは、8月に中国のエターナルマテリアルテクノロジー(EMT、県材科技)、9月には韓国のLG化学と有機ELホスト材料に関する戦略的パートナーシップ契約をそれぞれ結んだ。この契約により、UDCは赤、緑、黄色向けホスト材料の研究開発と開発を加速し、燐光発光材料との補完性を高める。

 この件について決算会見では、EMTとLG化学がUDCの発光材料に合わせたホスト材料を製造販売するのであり、「UDCがホスト材料の商業生産に再参入するのではない」と改めて説明した。

青色の実用化時期は明言せず

 また、SDCが青色発光層を用いた次世代テレビ用有機ELディスプレー「QD-OLED」の量産準備に着手したことに関しては、「燐光の青色発光材料の開発は進展しているが、現時点で発表できることはない。また、特定顧客については話せないが、全顧客の研究開発チームと緊密に連携している」とだけ述べ、商品化の見通しは明らかにしなかった。

 SDCのQD-OLEDは、複数の青色有機EL発光層を光らせ、これでQD(量子ドット)層を励起して青色光を赤色と緑色に変換し、赤・青・緑のカラーフィルターも重ねてフルカラーを得るパネル構造を採用する見込み。UDCは、赤色と緑色の燐光発光材料を量産供給しているが、青色は実現が難しく、長く開発中だ。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏