6. 孫の教育費の特別受益は相続から10年たつと主張できない?原則は法定相続分で分ける

特別受益を考慮した分け方には、期限があります。民法第904条の3により、相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割では、原則として特別受益などを考慮せず、法定相続分で分けることになりました。

  • 【原則】相続開始から10年を過ぎると、特別受益を考慮しない法定相続分で分ける
  • 【例外】10年を過ぎる前に家庭裁判所に遺産分割を請求した場合などは、引き続き考慮できる
  • 【令和5年4月1日より前の相続】すぐには適用されず、経過措置による猶予期間がある

法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」によると、10年を過ぎても、相続人全員が合意すれば特別受益を考慮した分け方をすることはできます。

7. 【証券会社出身の視点】検証

孫の教育費は、兄弟のどちらから見るかで受け止め方が大きく変わります。援助を受けた側は「孫の学費で遺産とは別」と考え、受けていない側は「兄の家計への援助と同じ」と感じやすいものです。

資産の話し合いでは、「いくら動いたか」と「そのうちいくらが自分に関わるか」を分けて見ると、整理しやすくなります。孫の教育費でいえば、援助の総額と、差し引いたときに実際に動く額です。

試算では、国立大学4年分の学費が孫2人で約485万円でも、特別受益と認められた場合に弟の取り分が増えるのは約243万円です。そもそも孫への援助は原則として特別受益にあたらないため、話し合いで争う額と、実際に動きうる額には差があります。

また、扶養の範囲の学費かどうか、父の意思が残っているかによっても結論は変わります。主張するなら相続開始から10年という期限もあるため、早めに事実関係を整理しておきたいところです。

家族の思いが関わる話だけに、どの家庭にも当てはまる答えがあるわけではありません。まずは援助の金額と使い道、父の遺言の有無を確かめたうえで、兄弟で話し合ってみてはいかがでしょうか。

8. まとめ

孫の教育費は、特別受益の対象である相続人本人への贈与ではないため、原則として遺産分割で差し引かれません。祖父母が学費として必要な都度直接払った分は、贈与税もかかりません。

実質的に兄への贈与と見られて特別受益にあたっても、遺産3000万円・孫2人の国立大学4年分なら、弟の取り分の増え方は約243万円で援助額の半分です。父の意思や10年の期限もあわせて確かめておくことが大切です。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。特別受益にあたるかどうかは、援助の目的や金額、家族の事情などをもとに、相続人の話し合いや家庭裁判所の手続きで個別に判断されます。実際の扱いは、弁護士や家庭裁判所、税務署などでご確認ください。

参考資料

安達 さやか