親が亡くなり遺産分割を話し合うとき、生前に親が兄の子の学費を出していたことが気になる方もいるのではないでしょうか。孫の教育費を特別受益として遺産から差し引けるのか、兄弟で受け止め方が分かれやすい場面です。

富裕層や法人のお客さまの資産運用のご相談を受けていた経験からお伝えすると、孫への教育費の援助は、生前の援助と相続を一緒に、早めに確かめておきたいテーマです。ここでは、民法と国税庁の資料をもとに、孫の教育費が遺産分割でどう扱われるかを整理します。

あわせて、亡くなった父が兄の子2人の国立大学4年分の学費を出していた場合に、特別受益として扱うかどうかで兄弟2人の取り分がどれだけ変わるかを試算します。

※孫2人の学費約485万円は、文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」の国立大学の標準額(入学料28万2000円、授業料年53万5800円)で、1人4年分を計算して2人分を合わせた額です。

1. 孫の教育費は特別受益になる?特別受益は相続人本人への贈与が対象で、孫への援助は原則あたらない

孫の教育費が特別受益になるかは、まず誰が援助を受けたかで決まります。民法第903条は、共同相続人のうち、被相続人から遺贈や、婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として贈与を受けた人がいるときに、その分を相続分から差し引くと定めています。

  • 【特別受益の対象】共同相続人(相続人本人)が受けた遺贈と、婚姻・養子縁組・生計の資本のための贈与
  • 【孫への援助】孫は、子が亡くなっていたり養子だったりしない限り相続人ではないため、原則として対象外
  • 【例外の可能性】孫への援助でも、実質的には相続人である兄への贈与と見られる場合は、特別受益として扱われることがある

つまり、父が孫の学費を出していたというだけで、遺産分割で当然に差し引けるわけではありません。差し引くかどうかは、相続人全員の話し合いで決まらなければ、家庭裁判所の調停や審判で個別に判断されます。

2. 孫の教育費に贈与税はかかる?祖父母も扶養義務者で、学費に必要な都度直接充てるなら非課税

孫の教育費は、贈与税の面でも扱いが決まっています。民法第877条は、直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養をする義務があると定めており、祖父母と孫もこれにあたります。

国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」によると、扶養義務者から教育費に充てるために受け取った財産で、通常必要と認められるものは、必要な都度直接充てる場合に限り贈与税がかかりません。教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。

  • 【贈与税がかからない】学費や教材費などとして、必要な都度直接充てる場合
  • 【贈与税がかかる】教育費の名目でも、預金したり株式や不動産などの購入資金に充てたりした場合

ただし、贈与税がかからないことと、遺産分割で特別受益にあたるかどうかは別の話です。税の扱いは国税庁の基準で、特別受益は民法の考え方で判断されます。