2. 掲示の金額で契約は成り立つ?掲示を見て停めただけで成り立つとは限らず、確認できた裁判例の一つ(時間貸し駐車場の事案)では違約金10万円の請求が認められなかった

掲示の金額を払う義務があるかは、まず「掲示を見て停めたことで、その金額を払う約束(契約)が成り立ったと言えるか」によります。この点は考え方が分かれています。

民法522条では、契約は「申込み」に対して相手が「承諾」をしたときに成り立つとされています。また民法420条では、損害賠償の額をあらかじめ決めておく「賠償額の予定」は、当事者が決めるものとされています。店が一方的に掲示しただけでは、この約束があったとは言いにくい面があります。

裁判所の「裁判例検索」で確認できた裁判例の一つに、駐車場の掲示の金額の請求を扱った次の事案があります。ほかの裁判例を網羅したものではありません。

  • 【事件】岐阜地方裁判所 平成21年10月21日判決(平成21年(レ)第15号 損害賠償請求控訴事件)。原審は岐阜簡易裁判所
  • 【どんな駐車場か】名古屋市内の時間貸しの無人駐車場。場内の掲示に、不正な利用をした場合は「違約金10万円」を払うと書かれていた
  • 【請求】料金を払わずに出庫した利用者に、管理者が違約金10万円を請求
  • 【裁判所の考え方】利用者に料金を払う意思がなく、駐車場を使う契約は成り立っていないと判断。管理者の「掲示で契約の内容を示していた」という主張にも、掲示は契約の申込みを促すもの(法律でいう「申込みの誘引」)にとどまり、掲示を見て停めただけでは承諾したとは言えないとして、違約金の請求を認めなかった(管理者の控訴を棄却)

この事案は料金を払わずに出庫した時間貸しの無人駐車場の例で、店の駐車場の長時間駐車とは場面が違います。それでも、掲示の金額がそのまま払う義務になるとは限らないことを示す例の一つといえます。

3. 長時間駐車で店が請求できるのは?原則は実際の損害の範囲で、市営駐車場3か所の料金なら休日に4時間で約800円〜2400円

長時間駐車について契約が成り立っていないとすると、店が求めるのは、民法709条の不法行為による損害賠償になると考えられます。この場合、店が請求できるのは、原則として長時間駐車で実際に生じた損害の範囲で、その額は店の側で示す必要があります。

損害の目安の一つになるのが、その場所を時間貸しにしていたら得られた料金、つまり近くの時間貸し駐車場の料金相当です。市営駐車場3か所の普通料金で、同じ時間停めた場合を試算すると、次のとおりです。

  • 【さいたま市 市営岩槻駅東口公共駐車場(30分100円)】2時間 約400円、4時間 約800円
  • 【さいたま市 市営浦和駅東口駐車場(30分200円)】2時間 約800円、4時間 約1600円
  • 【名古屋市 久屋駐車場(30分300円)】2時間 約1200円、4時間 約2400円

※試算の前提:休日の昼間(夜間料金の時間帯を含まない)に停めた場合。夜間料金の時間帯は、さいたま市の2か所が22時〜翌8時、久屋駐車場が0時〜7時です。3か所とも30分あたりの料金は、料金表で曜日による区別はありません。久屋駐車場の最大料金1500円は平日だけなので、休日は時間に応じて上がる計算にしています。さいたま市の2か所には、最大料金の記載はありません。

※30分単位の料金を単純に掛けた額で、入出庫の時間差などによる端数は含めていません。店舗の利用による割引も含めていません。

休日の昼間に市営駐車場3か所に停めた場合の、2時間・4時間の駐車料金(2026年10月時点)1/1

休日の昼間に停めた場合、さいたま市の市営岩槻駅東口公共駐車場(30分100円)は2時間約400円・4時間約800円、市営浦和駅東口駐車場(30分200円)は2時間約800円・4時間約1600円、名古屋市の久屋駐車場(30分300円)は2時間約1200円・4時間約2400円

出所:さいたま市「市営岩槻駅東口公共駐車場のご案内」、さいたま市「市営浦和駅東口駐車場のご案内」、名古屋市「市営駐車場一覧」をもとにLIMO編集部作成

30分延びるごとに増える額は、3か所で約100円〜300円です。掲示の金額との開きは、停めた時間が短いほど大きくなります。