新人の彼女に、営業の仕事としてまずは「競合他社の分析」をしてみるよう伝えたCさん。その仕事の中で、「競合他社を知ることで、顧客にアプローチするときも自社の強みをしっかりアピールできるようになる。商談の場をイメージしながら、うちのサービスのどこが他社より優れていて、何が足りないかを調べてみて」と伝えたのだそう。

それまでは何をやらせてものんびりとした進行だった彼女は、その分析については非常に熱心に取り組んだと言います。そこで「彼女は、その仕事をやる理由とその先に何が見えるかというところをきちんと伝えてあげれば目的意識を持って熱心に取り組むんだということがわかった」とCさんは話します。

つまり、今やっている仕事が何の役に立つのかわからなければ、やる気にもなりにくく締め切りを意識しません。結果としてのんびり取り組むうえ、資料の内容はまとまりに欠けたものになってしまうということです。

この気付きはCさんの新人教育を変えたのでした。いつ、どういうふうに、いま手元でやっている仕事が役立つのか、そこを明確に伝えて取り組ませることでCさんと新人は良好な関係を築くことができていると言います。

仕事に対する誇りを持たせることが責任感につながる

最後は金融機関で働くDさん。Dさんの後輩として入社してきた新人は、何でも割と器用にこなし飲み込みは早いけれど、細かいミスがあったり、とりまとめたレポートの内容をいまひとつ理解していなかったのだそう。

新卒だから仕方ないと目をつぶるところも多々あったのだそうですが、新人の彼に一番欠けているのはやる気でした。金融機関に入社したところまではいいのですが、Dさんの部署は会社で一番の収益部門。営業でしっかり稼ぐ部署でした。

Dさんは彼のモチベーションを何とか高めようと、彼と一緒に毎日収益のグラフを見ながら「もう12月のボーナスはないかもなあ」とか「今日は少し持ち直した。来週もこの調子ならボーナスゼロではないな」などと自分事として話をしていたのだそう。

すると新人は数字に少し興味を持って、「今日は何でこんなにダメだったんですか?」「今日は日経平均が上がったがらよかったですね」などと言うようになったと言います。

そして、あるときから新人の態度が変わり、今まで以上に仕事に熱心に取り組むように。そのワケを聞いたところ、Dさんが飲み会の席で「一番の収益部門に配属されたんだから、誇りを持って仕事をしなさい。ここには選ばれた人間しか来られないんだから」と伝えたことが理由だと答えたのだそう。

「自分事だと思ってもらうこと」そして「自信を持たせること」。この2つが新人教育には非常に重要だと感じたと教えてくれました。

まとめ

新人教育は本当に大変ですし、一人ひとり考えていることが違うので、ある人に対してはうまくいったアプローチも、他の人はピンと来ない、ということも多々あります。しかし、うまくいかない場合はすぐにやり方を変え、色々と試行錯誤しながら新人社員と自分が、お互いに成長していけるといいですね。

大塚 ちえ