4. 貯蓄がなくなる約79歳は平均余命より何年早い?65歳の平均余命から見ると、男性は約5.5年、女性は約10.4年早い
厚生労働省「令和6年簡易生命表」によると、65歳の平均余命は男性19.47年、女性24.38年です。65歳まで生きた人が平均で何歳まで生きるかを足し算で見ると、男性は約84.5歳、女性は約89.4歳になります。
- 【65歳男性の平均余命】19.47年(約84.5歳まで)
- 【65歳女性の平均余命】24.38年(約89.4歳まで)
- 【60歳で退職した場合に貯蓄がなくなる年齢】約79歳(男性の約84.5歳より約5.5年、女性の約89.4歳より約10.4年早い)
平均余命は平均の値で、実際にはこれより長く生きる人も多くいます。夫婦の場合は、どちらか長く生きるほうの年齢まで生活費が必要になります。
5. 60歳から年金を繰り上げて受け取ったら?年金は24%減るが、貯蓄は約81歳まで持つ計算
日本年金機構によると、老齢年金は原則として65歳から受け取りますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることができます。昭和37年4月2日以降生まれの人は、1か月繰り上げるごとに0.4%減額され、60歳から受け取ると24%の減額になります。減額された年金額は、一生変わりません。
- 【60歳から繰り上げた場合の社会保障給付】月22万8614円の24%減で、月約5.5万円少ない
- 【60歳からの毎月の不足分】月約9.7万円、年約116.8万円
- 【貯蓄2494万円がなくなる年齢】約81歳
繰り上げると、年金のない5年間がなくなるため、貯蓄は約79歳から約81歳まで持つ計算になります。一方で、年金は生涯にわたって少なくなるため、貯蓄がなくなったあとの暮らしは、65歳から受け取る場合より厳しくなります。
※試算の前提:夫婦とも60歳から繰り上げ、社会保障給付の全額が24%減るものとして計算しています。実際の減額は生年月日や年金の種類によって異なり、税金や社会保険料の変化は含めていません。
6. 【証券会社出身の視点】検証:貯蓄2494万円の約71.4%は、年金のない5年間で使われる
試算の結果を並べると、60歳で再雇用を断った場合、平均の貯蓄2494万円のうち約1781万円(約71.4%)を、年金のない5年間で使う計算になります。65歳からの取り崩しは年約50.9万円なので、5年間の支出は、65歳以降の取り崩しの約35年分にあたります。
資産運用のご提案では、貯蓄の額そのものより、取り崩しが始まる年齢と1年あたりの取り崩し額を重視していました。同じ2494万円でも、60歳から月約29.7万円ずつ減るのか、65歳から月約4.2万円ずつ減るのかで、資産の持ちはまったく違ってきます。
60歳から65歳までのすべてを働く必要はなく、たとえば短い時間の仕事で生活費の一部をまかなうだけでも、5年間に使う額は小さくなります。退職金をどこまで生活費にあて、どこまで残すかも、取り崩しの年数を左右します。
再雇用を断るかどうかを考えるときは、65歳までの5年間に毎月いくら使うかと、65歳からの毎月の不足分を、それぞれの家計の数字で書き出してみると、貯蓄が何歳まで持つかの見通しを立てやすくなるかもしれませんね。
※試算の前提:前章と同じ。
7. まとめ
平均的な家計の夫婦が60歳で再雇用を断ると、年金のない5年間の支出は約1781万円で、平均の貯蓄2494万円は約79歳でなくなる計算でした。65歳まで働いて生活費をまかなえた場合は、65歳からの不足分が月4万2434円のため、100歳を超えても貯蓄が残る計算です。
60歳から年金を繰り上げると貯蓄は約81歳まで持ちますが、年金は生涯24%少なくなります。自分の年金の見込み額は、ねんきん定期便やねんきんネットで確かめることができます。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の家計は、年金額、生活費、退職金、住まい、健康状態などによって大きく異なります。年金の受け取り方は日本年金機構や年金事務所、雇用や退職の条件は勤務先でご確認ください。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
安達 さやか