5. 相続したお金がなくなる年数を平均余命と並べると?65歳の平均余命は男性19.68年・女性24.52年
厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」によると、65歳の平均余命は男性19.68年、女性24.52年です。相続したお金がなくなる年齢を並べると、次のとおりです。
- 【744.5万円・旅行なし】約85.7歳ごろ
- 【744.5万円・宿泊旅行を年2回】約79.8歳ごろ
- 【744.5万円・宿泊旅行を年4回】約76.5歳ごろ
- 【250万円・旅行なし】約71.9歳ごろ
744.5万円を旅行に使わず不足の穴埋めだけに使うと、男性の平均余命(84.68歳)をやや上回り、女性の平均余命(89.52歳)には約3.8年届きません。平均余命は平均の値で、それより長く暮らす人も多くいます。
もう一つ考えておきたいのが介護の費用です。厚生労働省「介護サービス情報公表システム」の「サービスにかかる利用料」によると、介護保険サービスの利用者負担は費用の1割(一定以上の所得がある人は2割または3割)です。
在宅のサービスには要介護度ごとに1か月の利用限度額があり、超えた分は全額自己負担です。要介護1の限度額は月16万7650円で、1割負担の人が限度額まで使うと月約1.7万円になります。相続したお金の一部を、こうした費用のために残しておくという置き方もあります。
6. 【行政取材の視点】検証:相続したお金の年数を決めるのは「旅行の総額」、元気なうちの5年間に年2回なら約18.7年
行政の現場を取材してきた立場から、試算の数字の読み方を一つ挙げます。相続したお金がなくなるまでの年数を決めているのは、相続したお金の額と、毎月の不足、旅行に使う総額の3つです。
旅行を毎年続けると、旅行の費用は年数に比例して増えていきます。一方で、旅行に出かける期間を区切ると、旅行の総額が先に決まります。
- 【宿泊旅行を年2回、ずっと続ける】約14.8年でなくなる
- 【宿泊旅行を年2回、65歳から5年間だけ】旅行の総額は約72.4万円で、約18.7年でなくなる
※試算の前提:相続したお金744.5万円から旅行の総額(7万2412円×年2回×5年)を引いた残りで、毎月の不足2万9980円を埋めた場合。
介護保険の利用者負担の割合や、在宅サービスの利用限度額は、所得や要介護度によって変わります。自分の場合の額は、お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターで確かめることができます。
相続したお金を使うことも、残しておくことも、どちらも選び方の一つです。「旅行に使う総額」と「残しておく額」を先に数字で分けておくと、使うときにも迷いにくくなります。
7. まとめ
相続したお金は、毎月の不足の穴埋めと旅行などの費用が重なって減っていきます。70歳代の一人暮らしの金融資産を子2人で分けた744.5万円なら、年2回の宿泊旅行で約14.8年、中央値の250万円なら約5.0年でなくなる試算でした。
相続税の申告が要るかどうかは税務署の電話相談センターで、介護の費用や制度は地域包括支援センターで相談できます。使う額と残す額の配分に迷うときは、ファイナンシャルプランナーに家計全体を見てもらう方法もあります。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の相続税の有無や家計の状況は、遺産の内容や暮らし方で変わります。相続税の申告については税務署で、家計の見直しは専門家にご確認ください。
参考資料
- 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査2025年」
- 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」
- 総務省「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 観光庁「旅行・観光消費動向調査 2025年年間値(確報)」
- 国税庁「No.4152 相続税の計算」
- 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
- 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」
齊藤 慧