5. 二次相続の前に生活費で財産が減ったら?月約3万円の不足が約12年続くと約431.7万円減り、合計は約1478.7万円と約914.3万円
実際には、一次相続で受け取った財産は、妻のその後の生活費に使われて減っていきます。総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯では、収入より支出が月2万9980円多くなっています。
この不足を約12年(144か月)続けて財産から取り崩すと、約431.7万円減ります。この分を差し引いて、二次相続まで合わせた相続税を試算し直しました。
- 【妻が全部】一次相続 0円、二次相続 約1478.7万円、合計 約1478.7万円
- 【妻が法定相続分】一次相続 約657.2万円、二次相続 約257.1万円、合計 約914.3万円
妻が使った分だけ二次相続の相続税は小さくなりますが、差は約564.4万円残りました。ただし、介護施設への入居や自宅の修繕など、まとまったお金が必要になれば、妻の手元に多く残しておくことが暮らしの支えになります。
6. 【証券会社出身の視点】検証:二次相続の相続税は、妻の手元に残すお金と並べて考える
試算では、妻が全部を受け取る分け方の合計が最も大きく、妻が約4200万円にとどめる分け方の合計が最も小さくなりました。ただ、相続税の合計だけを見て分け方を決めるのは、早いように感じます。
「税金を減らすこと」と「手元に必要なお金を残すこと」は、別々に考えたうえで並べてみると整理しやすいでしょう。妻が約4200万円しか受け取らない場合、自宅の評価額によっては、自宅を受け取るだけで大半を占め、生活費に回せる預貯金が少なくなることもあります。
一次相続の時点では、妻がこの先何年暮らすのか、介護にいくらかかるのかは分かりません。税額の差である約585.9万円と、妻が安心して暮らすために手元に置きたい金額を、同じ表の上で比べてみると、分け方を考えやすくなるかもしれません。
また、配偶者の税額軽減は、申告期限までに遺産分割が済んでいることが前提です。家族で分け方を話し合う時間は、亡くなってから10か月しかありません。二次相続まで含めた考え方を、元気なうちに家族で共有しておくと、慌てずに済むかもしれません。
自宅の土地に小規模宅地等の特例を使えるかどうかや、生前の贈与によっても、二次相続の相続税は変わります。数字は家族ごとに大きく違うので、試算は「考え方の目安」としてご覧いただければと思います。
7. まとめ
配偶者の税額軽減で一次相続の相続税を0円にしても、二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、基礎控除も小さくなります。相続税を申告した人の平均の遺産額約1億4025万円・子2人の試算では、妻が全部を受け取ると一次と二次の合計は約1565万円で、法定相続分どおりの約979.1万円を約585.9万円上回りました。
一方で、妻のその後の生活費や住まいも、分け方を決める大切な理由になります。分け方に迷ったときは、税務署の電話相談センターで一般的な仕組みを確かめたり、税理士に家族の状況に合わせた試算を頼んだりするのも一つの方法です。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の相続税は、財産の評価、特例の適用、遺産の分け方などによって変わります。最新の制度は国税庁のホームページでご確認ください。
参考資料
- 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」
- 国税庁「No.4152 相続税の計算」
- 国税庁「No.4155 相続税の税率」
- 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
- 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」
- 厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」
- 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」
安達 さやか