5. 実家の家具や仏壇の片付けの費用は?国の統計はなく、自治体が費用の一部を補助する例もある

片付けや仏壇の処分にかかる費用は、荷物の量や家の場所で変わり、国の統計で示された数字はありません。見積もりを取ったうえで、売買契約で誰が払うかを決めておくことになります。

自治体によっては、空き家の家財の処分費用を補助しています。たとえば岡山市「空家等適正管理支援事業(家財等処分)」は、空き家情報バンクに登録した個人を対象に、家財等の処分・搬出の経費の2分の1(上限20万円)を補助しています。

補助の有無や条件は自治体ごとに違うため、実家のある市区町村で確かめる必要があります。

また、亡くなった人が老人ホームなどに入所していた場合も、一定の要件を満たせば特別控除の対象になります。国税庁は要件の一つとして、入所のあとも家が亡くなった人の物品の保管などに使われていたことを挙げています。

特別控除を使えても、売却額が大きいと税がかかります。試算の前提では、相続人1人で3000万円の控除を使い切るのは、売却額が約3279万円を超えたときです。

6. 【元銀行員が試算】実家の売却で税額を分けるのは片付けより期限と要件

試算では、中古一戸建ての平均的な価格である約2443万円で実家を売却した場合、特別控除を使えれば税額は0円、使えなければ約454万円でした。約454万円は売却額の約18.6%にあたります。

家具や仏壇をどうするかは、売買契約で売主と買主が決められます。一方で、特別控除の期限と要件は契約では動かせず、税額の差はそこで決まります。

相続した年ごとに並べると、2025年以降に相続した場合は、相続登記の期限(知った日から3年)より特別控除の期限(2027年12月31日)が先に来ます。相続登記を3年以内に済ませれば義務は果たせますが、その間に特別控除の期限が過ぎることがありえます。

要件の面では、1981年5月31日以前に建てられたこと、相続のあとに貸したり住んだりしていないこと、相続人が3人以上なら1人2000万円までになることなど、家と家族の状況で使えるかどうかが分かれます。市区町村の確認書が要る点も、売却の段取りに入れておく必要があります。

実家を売却するかどうかを考え始めた時点で、家が建てられた年、相続が始まった年、相続人の数の3つを確かめておくと、特別控除を使えるかと、いつまでに売却すればよいかの見通しが立ちます。

7. まとめ

家具や仏壇が残ったままでも実家の売却はでき、何を残し、片付けの費用を誰が払うかは売買契約で決めます。売却の前には相続登記で名義を移す必要があり、2024年4月からは知った日から3年以内の義務になっています。

空き家の3000万円特別控除は、使えるかどうかで税額が0円と約454万円に分かれる試算でした。特例の期限は相続した年で変わり、制度自体も2027年12月31日までです。家が建てられた年と相続の年を早めに確かめておくことが、売却の段取りの出発点になります。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の税額は、取得費や譲渡費用、相続人の数などで変わります。特別控除の適用は税務署で、相続登記の手続きは法務局でご確認ください。

参考資料

中本 智恵