5. 年金だけで暮らす人の医療費控除は?65歳以上なら年金収入310万円が境目、住民税がかからなければ減る税金はない
医療費控除の「所得の5%」の基準は、年金だけで暮らす人にも当てはまります。
65歳以上で年金収入が330万円未満なら、公的年金等控除は110万円です。年金収入が310万円未満なら総所得金額等は200万円未満になり、医療費から引くのは10万円ではなく所得の5%です。
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の平均年金月額で見ると、男性の平均(月約17.0万円)なら所得税はかからず、医療費10万円で住民税が約5300円減る計算です。
女性の平均(月約11.1万円)は住民税もかからないため、医療費控除で減る税金はありません。
※試算の前提:65〜74歳・単身・年金のみ。国民健康保険料と介護保険料は東京都大田区の令和8年度の料率で計算しています。
6. 【検証】試算から見えること:医療費控除は年収が低いほど大きくなり、戻る額は税率で決まる
医療費控除は、医療費から10万円か所得の5%を引いた額です。年収210万円の人は引く額が6万8000円で、年収487万円の人より控除が3万2000円多くなります。
所得の少ない人ほど、医療費の負担が重くなりやすいことに配慮した仕組みといえます。
一方で、戻る額は「控除の額×税率」で決まります。年収210万円の人は所得税がほとんどかからないため、戻る額の多くは住民税の10%分です。
年収559万円の人は所得税10%と住民税10%がかかるため、同じ控除の額でも戻る額は約2倍になります。
- 【医療費20万円・年収210万円】控除13万2000円、戻る額 約1万3700円
- 【医療費20万円・年収559万円】控除10万円、戻る額 約2万300円
控除は年収210万円のほうが多いのに、戻る額は年収559万円のほうが多い、という逆転が起きます。
医療費控除で戻る額を考えるときは、「10万円を超えたか」より、「自分の所得で引く額はいくらか」と「自分にかかっている税率」の2つを見ると分かりやすくなります。
7. まとめ
医療費控除は、総所得金額等が200万円未満なら医療費から所得の5%を引くため、医療費が10万円に届かなくても受けられます。
給与だけの人なら年収約297万円が境目で、年収210万円の人は医療費10万円で約3700円が戻る試算でした。
令和8年分は年収約209万円まで所得税がかからず、年収が低い人では、戻る額の多くが翌年度の住民税の減額になります。
医療費の領収書やセルフメディケーション税制の対象の市販薬のレシートは、1年分をまとめて残しておくと、申告するかどうかを判断しやすくなります。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の税額は、所得や控除の内容、お住まいの自治体によって異なります。詳しくは国税庁のホームページや税務署、お住まいの市区町村でご確認ください。
参考資料
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
- 国税庁「No.1129 セルフメディケーション税制」
- 国税庁「No.1199 基礎控除」
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」
- 国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」
- 大阪市「所得控除額の計算」
- 全国健康保険協会「令和8年度都道府県単位保険料率」
中本 智恵