4. 年金の還付申告をすると住民税の申告は?確定申告書を出せば住民税の申告は不要で、所得税が戻らない人も住民税の申告で控除を受けられる

名古屋市の同じページによると、所得税の確定申告書を提出した場合、市民税・県民税申告書を提出する必要はありません。所得税の確定申告をしない人でも、公的年金等に係る雑所得以外に所得がある人や、源泉徴収票に記載されていない控除を受けようとする人は、市民税・県民税申告書の提出が必要です。

個人住民税の所得割の税率は10%です(総務省「個人住民税」)。所得税の源泉徴収がない年約204万円の年金の人でも、住民税の所得割がかかっていれば、医療費控除などを申告すると翌年度の住民税が減る場合があります。

ふるさと納税をした人は、申告のしかたに注意が必要です。総務省「制度改正について(2015年4月1日)」によると、ふるさと納税ワンストップ特例は確定申告の不要な給与所得者等が対象で、ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告を行う人は、控除を受けるために確定申告をする必要があります。医療費控除で還付申告をするなら、寄附金控除も同じ申告書に入れることになります。

5. 年金と配当がある人の還付申告は?配当10万円を総合課税で申告すると所得税は約2万400円少なくなるが、国民健康保険料の計算に入る

国税庁「No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)」によると、上場株式等の配当は15.315%(ほかに地方税5%)の所得税等が源泉徴収され、確定申告をしないことを選べます。確定申告で総合課税を選ぶと、課税総所得金額等が1000万円以下なら株式の配当所得の10%の配当控除を受けられます(国税庁「No.1250 配当所得があるとき(配当控除)」)。

  • 【確定申告をしない場合】配当10万円にかかる所得税は、源泉徴収された約1万5300円で完結する
  • 【総合課税で申告した場合】税率5%の人は、配当にかかる税率5%より配当控除10%が大きく、所得税は差し引き約5100円減る。源泉徴収の約1万5300円も精算され、申告しない場合より約2万400円少ない

ただし、横浜市「株式等の譲渡所得や配当所得などにより確定申告する方へ」によると、特定口座で源泉徴収を選んでいる上場株式等の配当所得は、確定申告をしなければ国民健康保険料の算定や70歳以上の医療費の自己負担割合の判定に含まれず、確定申告をすると含まれます。同市は、税の還付や減額より保険料の増額が上回る場合があるとしています。

※試算の前提:上場株式の配当10万円(大口株主等ではない)を受け取る、年金収入300万円または400万円の人(所得税の税率5%)。配当控除は算出税額が限度です。住民税と保険料への影響は含めていません。

6. 【検証】試算から見えること:確定申告不要制度の人の還付申告は、源泉徴収の有無と税率5%で目安がつく

年金の確定申告不要制度は、年金から源泉徴収された所得税で納税を終えられるようにした仕組みです。源泉徴収は、基礎的控除額と年金から天引きされた保険料、扶養親族等申告書に書いた控除で計算されるため、医療費や生命保険料のように年ごとに変わる控除は入りません。

試算では、年金400万円以下の人の所得税の税率は、どの年金の収入でも5%でした。所得控除が10万円増えると所得税は約5100円少なくなり、住民税でも同じ額の控除を受ければ、所得割の10%で約1万円少なくなる目安です。

一方で、男性の平均にあたる年約204万円の年金では、令和8年分は源泉徴収そのものがありません。この場合、還付申告で所得税は戻らず、控除の効果は住民税に表れます。同じ「年金400万円以下」でも、還付申告で何が変わるかは、源泉徴収があるかどうかで分かれます。

令和8年分は、基礎控除の引き上げを12月の年金で精算し、新たに要件を満たした配偶者の控除は確定申告で反映する、という分け方になっています。年明けに届く公的年金等の源泉徴収票の控除の欄と、1年分の医療費や保険料の記録を並べて見ると、申告の要否を判断しやすくなります。

配当は、所得税だけを見れば申告したほうが少なくなる場合がありますが、申告すると国民健康保険料などの計算に入ります。所得税・住民税・保険料をまとめて比べる必要がある点で、医療費控除などの還付申告とは性質が違います。

7. まとめ

年金の確定申告不要制度は、公的年金等の収入が400万円以下で、ほかの所得が20万円以下なら所得税の確定申告をしなくてよい制度で、還付申告はできます。令和8年分は12月15日(火)の年金で基礎控除の引き上げが精算されますが、医療費控除や生命保険料控除などは還付申告をしないと反映されません。

試算では、年金400万円以下なら所得税の税率は5%で、所得控除10万円あたり約5100円が戻る目安でした。年約204万円の年金のように源泉徴収がない場合は所得税は戻らず、住民税の申告で控除を受けることになります。配当を申告するかどうかは、保険料への影響も含めて考える必要があります。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の税額は、年金の種類や金額、控除の内容、お住まいの自治体によって異なります。詳しくは国税庁のホームページや税務署、日本年金機構、お住まいの市区町村でご確認ください。

参考資料

齊藤 慧