3. 直接売るときの費用の目安。司法書士の報酬は平均5万6678円、境界の確認は44万1391円

不動産会社を通さずに売ると、仲介でまかなっていた書類づくりや手配を、売主と買主で進めることになります。

3.1 売る前の相続登記は、2024年4月1日より前に相続を知った土地なら2027年3月31日が期限

相続した土地を売るには、亡くなった人から相続人へ名義を変える相続登記が先に必要です。法務省によると、相続登記は2024年4月から義務になり、相続で取得したと知った日から3年以内に申請します。

  • 2024年4月1日以後に相続を知った場合:取得を知った日から3年以内
  • 2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産で、相続登記をしていないもの:2027年3月31日まで
  • 正当な理由なく申請しない場合:10万円以下の過料の対象

3.2 契約・登記・境界にかかる費用

契約書や登記、境界の確認にかかる費用は、公的機関や業界団体が次の額を公表しています。

  • 売買契約書の印紙税:2027年3月31日までに作る契約書は軽減税率で、1000万円超5000万円以下は1万円、500万円超1000万円以下は5000円(国税庁)
  • 所有権移転登記の登録免許税:土地の売買は固定資産税評価額の1.5%で、2029年3月31日までの軽減税率。売主と買主のどちらが払うかは契約で決める(国税庁)
  • 司法書士の報酬:土地1筆と建物1棟(固定資産評価額の合計1000万円)の売買の所有権移転登記で平均5万6678円(日本司法書士会連合会、2024年3月実施のアンケート)
  • 境界の確認と測量:土地売買のための地積更正登記(180㎡・隣接地との境界確認を含む)の全国平均が44万1391円、税抜(日本土地家屋調査士会連合会)

境界の確認を新たにする場合、その費用だけで静岡県の例の手取りの差(約39.5万円)を上回ります。どこまで売主が負担するかは、買主と話し合って契約書に書いておくことになります。

4. 直接売っても契約不適合責任は売主が負う。買主は知ってから1年以内に通知

民法の「契約不適合責任」は、引き渡した土地が種類・品質・数量について契約の内容に合わないときに、売主が負う責任です。仲介を通しても直接売っても変わりません。

  • 買主が請求できること:直すこと(追完)、代金の減額、損害賠償、契約の解除(民法562〜564条)
  • 通知の期間:種類・品質の不適合は、買主が知ったときから1年以内に売主へ通知(民法566条)
  • 責任を負わない特約:結べるが、売主が知りながら告げなかったことは免れない(民法572条)

不動産会社が仲介すると、宅地建物取引士が契約の前に重要事項を説明します(宅地建物取引業法35条)。直接売るときはこの説明がないため、土地の状態や法令の制限を、売主と買主で書面にして確かめておく必要があります。

5. 相続税を払ってから3年以内に売れば、相続税評価額1000万円あたり約139万円を取得費に加えられる場合も

相続税を払った人が、相続した土地を相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売ったときは、払った相続税の一部を取得費に加えられます(国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」)。

  • 取得費に加える額:その人の相続税額×売った土地の相続税評価額÷その人が相続した財産の価額など
  • 上限:特例を使わない場合の譲渡益まで

仮に、その人の相続税額が相続した財産の価額の約13.9%だった場合、相続税評価額1000万円あたり約139万円を取得費に加えられます。税率20.315%で計算すると、税金は約28.2万円少なくなります。

※約13.9%は、国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」の税額(3兆2446億円)を課税価格(23兆3846億円)で割った値です。実際の割合は、財産の額や相続人の数で異なります。

6. まとめ

相続した土地を直接売ると、静岡県の住宅地180㎡の例では仲介手数料が上限で約49.5万円浮きます。ただし税金が約10.1万円増え、手取りの差は約39.5万円です。

売る前には相続登記が必要で、契約書・登記・境界の確認も自分で手配します。境界の確認を新たにすると、その費用だけで手取りの差を上回ることもあります。

登記は司法書士、境界や測量は土地家屋調査士、税金は税務署、取引全体は各地の宅地建物取引業協会の相談窓口で、売る前に確かめておきましょう。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の売買価格、手数料、税額は、土地の場所や状態、取得費、契約の内容によって異なります。詳しくは国土交通省・国税庁・法務省のホームページや、司法書士・土地家屋調査士・税務署でご確認ください。

※LIMOでは、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。

参考資料

中本 智恵