4. 転職先も中小企業退職金共済なら掛金納付月数を通算できる

中退共には、前の会社と次の会社の掛金納付月数を通算できる制度があります。短い期間で辞めて退職金が少ないときでも、通算できれば次の会社で積み上げを続けられます。

4.1 通算するための3つの条件

中退共に加入している企業から、中退共に加入している別の企業へ転職する場合、通算できるのは次の3つをすべて満たすときです。

  • 掛金が12か月以上納付されていること
  • 前の企業を退職した後3年以内に、新しい企業で中退共に加入すること
  • 前の企業で退職金を請求していないこと

条件を満たしたうえで、通算の申し出をします。会社都合などの転職では、掛金納付月数が12か月未満でも、厚生労働大臣の認定を受けて通算できる場合があります。

4.2 退職金を請求すると前の会社の期間はつなげられない

通算の条件には「退職金を請求していないこと」が入っています。転職先が決まっているなら、退職金を請求する前に、次の会社が中退共に加入しているかを確かめておきたいところです。

たとえば掛金月1万円で3年ずつ2社に勤めた場合、それぞれで請求すると36万円が2回で72万円です。通算して6年分として受け取ると、基本退職金は73万7100円になり、1万7100円多くなります。

5. 中小企業退職金共済の退職金は一時金なら退職所得になる

中退共の退職金を一時金で受け取ると、ほかの所得と分けて課税される退職所得になります。勤続年数は、退職金の計算のもとになった掛金納付期間で数えます。

5.1 勤続3年なら退職所得控除は120万円

退職所得控除額は、勤続20年以下なら40万円に勤続年数をかけた額で、80万円に満たないときは80万円です。勤続20年を超えると、800万円に20年を超えた年数1年あたり70万円を足した額になります。

勤続3年で受け取る36万円は控除額120万円の範囲に収まり、所得税と住民税はかかりません。掛金月3万円で40年勤めた1775万3700円でも、勤続40年の控除額2200万円を下回ります。

退職金を請求するときは、退職金請求書の退職所得申告書欄に記入します。

5.2 60歳以上なら分割払いも選べる

退職時に60歳以上であるなどの要件を満たせば、5年間(全20回)か10年間(全40回)の分割払い、一時金との併用払いも選べます。5年の分割は退職金が80万円以上、10年の分割は150万円以上あることが条件です。

分割で受け取った分は、一時金とは扱いが変わり、雑所得として課税されます。

6. 中小企業退職金共済に新しく加入する事業主には国の掛金助成がある

中退共には、加入する事業主の負担を軽くする国の掛金助成があります。勤め先が退職金制度を検討している場合や、自分で事業を営んでいる場合は、確かめておくとよい制度です。

6.1 新規加入助成は掛金月額の2分の1を1年間

新しく中退共に加入する事業主には、掛金月額の2分の1(従業員ごとに上限5000円)を、加入後4か月目から1年間、国が助成します。掛金月1万円で加入した場合、従業員1人あたり月5000円、1年間で6万円の助成です。

短時間労働者の特例掛金で加入した従業員には、掛金月額2000円なら300円、3000円なら400円、4000円なら500円が上乗せされます。

6.2 掛金月額を増やしたときの月額変更助成

掛金月額が1万8000円以下の従業員の掛金を増やした事業主には、増額分の3分の1を増額月から1年間、国が助成します。2万円以上の掛金月額からの増額は、助成の対象になりません。

7. まとめにかえて

中小企業退職金共済は、会社独自の退職金制度を用意しにくい中小企業でも、従業員に退職金を準備できる国の制度です。掛金月1万円なら、基本退職金は勤続20年で266万6600円、40年で591万7900円になります。

一方で、掛金を納めた月数が11か月以下なら原則として支給されず、3年ほどまでは掛金と同じ額かそれを下回ります。転職するときは、退職金を請求する前に通算の条件を確かめておくと、積み上げてきた期間を生かせます。

勤め先の加入状況や掛金月額は人事・総務の担当者に、制度や請求の手続きは中退共の窓口に確かめてみてください。

参考資料

太田 彩子