厚生労働省は2026年10月23日、2023年3月に学校を卒業して就職した人の離職状況を公表しました。就職して3年以内に辞めた人の割合は、大学卒で31.2%、高校卒で36.9%でした。

勤め先に会社独自の退職金制度がなくても、中小企業退職金共済(中退共)に加入していれば退職金を受け取れます。ただ、勤めた期間が短いと、受け取れる額は思っていたより少ないかもしれません。

この記事では、中退共の掛金と退職金のしくみ、掛金月額と勤続年数ごとの基本退職金、3年以内に辞めたときの受取額を見ていきます。

1. 中小企業退職金共済(中退共)は中小企業で働く人のための国の退職金制度

中小企業退職金共済は、中小企業が単独では用意しにくい退職金を、事業主どうしの共済と国の援助で準備する制度です。運営しているのは、独立行政法人勤労者退職金共済機構の中小企業退職金共済事業本部です。

2025年度の事業の概要では、加入企業は37万5555所、加入している従業員は357万1957人でした。

1.1 加入できる企業の規模

加入できるのは、業種ごとに常時雇用する従業員の数か資本金・出資金のどちらかが、次の基準に当てはまる企業です。

  • 一般業種(製造業・建設業など):300人以下または3億円以下
  • 卸売業:100人以下または1億円以下
  • サービス業:100人以下または5000万円以下
  • 小売業:50人以下または5000万円以下

加入した企業は、原則として従業員全員を加入させる必要があります。期間を定めて雇われる人や試用期間中の人、短時間労働者などは、加入させなくてもよいとされています。

1.2 掛金は全額を事業主が負担する

掛金月額は5000円から3万円までの16種類で、短時間労働者には2000円・3000円・4000円の特例があります。事業主が従業員ごとに選び、掛金の一部でも従業員に負担させることはできません。

掛金は法人なら損金、個人企業なら必要経費として扱われ、従業員の給与所得にもなりません。従業員が辞めたときは、中退共から本人に退職金が直接支払われます。

2. 【中小企業退職金共済】掛金月1万円・勤続20年なら基本退職金は266万6600円

中退共の退職金は、基本退職金と付加退職金を合わせた額です。まずは、掛金月額と勤続年数で決まる基本退職金を確認します。

中小企業退職金共済の基本退職金は、掛金月1万円・勤続20年で266万6600円1/2

中小企業退職金共済の基本退職金を、掛金月5000円・1万円・3万円と勤続1年から40年までの7区分で並べた一覧表

出所:勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部「基本退職金額表【年単位】」を参考にLIMO編集部作成

【掛金月5000円】

  • 1年:1万8000円
  • 3年:18万円
  • 5年:30万4100円
  • 10年:63万2800円
  • 20年:133万3300円
  • 30年:210万6550円
  • 40年:295万8950円

【掛金月1万円】

  • 1年:3万6000円
  • 3年:36万円
  • 5年:60万8200円
  • 10年:126万5600円
  • 20年:266万6600円
  • 30年:421万3100円
  • 40年:591万7900円

【掛金月3万円】

  • 1年:10万8000円
  • 3年:108万円
  • 5年:182万4600円
  • 10年:379万6800円
  • 20年:799万9800円
  • 30年:1263万9300円
  • 40年:1775万3700円

2.1 基本退職金は予定運用利回り1.0%で決まる

基本退職金は、掛金月額と掛金を納めた月数に応じて固定的に定められた額です。予定運用利回り1.0%を前提にしており、法令の改正で変わることがあります。

掛金月1万円で20年勤めると、納めた掛金240万円に対して、基本退職金はそれより26万6600円多い266万6600円です。40年では、掛金480万円に対して591万7900円になります。

2.2 43か月目以降は付加退職金が上乗せされる

付加退職金は、運用収入の状況に応じて年度ごとに決まる上乗せ分です。掛金を納めた43か月目以降の基本退職金相当額に、その年度の支給率をかけた額を退職時まで積み上げていきます。

中退共は、2026年度の付加退職金の支給率を0.61%と案内しています。支給率は運用収入しだいで毎年度変わるため、上の一覧表の金額には含めていません。

3. 3年以内に辞める大学卒は31.2%。勤続3年なら中小企業退職金共済の退職金は掛金と同じ額

厚生労働省が2026年10月23日に公表した新規学卒就職者の離職状況では、2023年3月卒の就職後3年以内の離職率は大学卒で31.2%、高校卒で36.9%でした。前年と比べると、大学卒は2.6ポイント、高校卒は1.0ポイント下がっています。

3.1 3年以内の離職率は事業所の規模が小さいほど高い

就職後3年以内の離職率は、事業所の規模が小さいほど高い2/2

2023年3月卒の就職後3年以内の離職率を、事業所の規模別に高校卒と大学卒で比べた横棒グラフ

出所:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)を公表します」を参考にLIMO編集部作成

【大学卒】

  • 5人未満:58.2%
  • 5〜29人:50.6%
  • 30〜99人:39.7%
  • 100〜499人:31.7%
  • 500〜999人:29.0%
  • 1000人以上:24.2%

【高校卒】

  • 5人未満:61.3%
  • 5〜29人:53.3%
  • 30〜99人:45.5%
  • 100〜499人:36.4%
  • 500〜999人:29.4%
  • 1000人以上:24.4%

大学卒では、5〜29人の事業所で50.6%、30〜99人で39.7%でした。1000人以上の事業所の24.2%と比べると、規模の小さい事業所ほど早く辞める人の割合が高くなっています。

3.2 勤続3年なら掛金と同じ額、1年なら3割

中退共の退職金は、掛金を納めた月数が11か月以下だと原則として支給されません。12か月から23か月は掛金の総額を下回り、24か月から42か月は掛金相当額、43か月以降は運用利息と付加退職金が加わります。

掛金月1万円で3年勤めた場合、納めた掛金36万円に対して基本退職金も36万円です。1年で辞めると、掛金12万円に対して3万6000円にとどまります。

中退共の退職金は、掛金月1万円なら勤続20年で266万6600円になる一方、3年で辞めると掛金と同じ36万円です。勤め先が中退共に加入しているかや掛金月額は、就業規則の退職金の定めや人事・総務の担当者に確かめておくと安心です。

ここからは、転職したときに中退共の期間を引き継げる通算制度と、退職金にかかる税金、事業主が使える国の掛金助成を見ていきます。