3. 市町村の壁:原則は、事業所のある市町村に住む人だけ。条文には、区域外の事業所を指定する例外がある
厚生労働省の介護サービス情報公表システムは、地域密着型サービスは、原則として、サービスを提供する事業者のある市町村に住む人に限られ、隣の市町村にある事業所のサービスは、利用できない、と説明しています。
一方、介護保険法第78条の2第4項第4号は、市町村長は、申請に係る事業所がその市町村の区域の外にある場合に、その所在地の市町村長の同意を得ていないときは、指定をしてはならない、と定めています。つまり、同意を得れば、区域外の事業所を指定できる、という道があります。
ただし、指定は、事業所ごとに、市町村長が行うものです。お住まいの市町村が、隣の市町村の事業所を指定しているかどうかは、事業所と市町村の個別の判断で、一般論では言えません。使いたい事業所の名前を示して、市町村の介護保険の担当課に確認するのが確実です。
また、介護保険法第42条の2と第78条の2は、特定地域密着型サービスについて、住所地特例適用要介護被保険者を含める、としています。住所地特例とは、別の市町村の施設に入所して、住所を移した人が、元の市町村の被保険者のままでいられる仕組みです。
3.1 【地域密着型サービスの「市町村の壁」:原則と例外】
前提条件:厚生労働省の介護サービス情報公表システム、介護保険法第42条の2、第78条の2の記載を、編集部が整理したもの。実際に使えるかは、お住まいの市町村の指定の有無で決まる1/2
出所:厚生労働省 介護サービス情報公表システム、e-Gov法令検索「介護保険法」を基にLIMO編集部作成
- 原則:事業者のある市町村に住む人に限られ、隣の市町村の事業所は利用できません(厚生労働省の介護サービス情報公表システム)。
- 区域外の事業所:市町村長が、所在地の市町村長の同意を得れば、区域外の事業所も指定できます(介護保険法第78条の2第4項第4号)。
- 住所地特例の人:特定地域密着型サービスは、住所地特例対象施設の所在地の市町村の指定事業所も使えます(介護保険法第42条の2、第78条の2第1項)。
表を見ると、「隣の市町村の事業所は使えない」は、あくまで原則です。例外の道は、条文にありますが、実際に使えるかどうかは、市町村の指定の状況によります。諦める前に、介護保険の担当課や、ケアマネジャーに、確認してみてください。
4. 【編集者の視点】
今回、確認していていちばん意外だったのは、「隣の市の事業所は使えない」という広く知られた説明に、条文上の例外の道がある点です。介護保険法は、市町村長が、所在地の市町村長の同意を得て、区域外の事業所を指定できるようにしています。
そのため、市境に住む人にとっては、「使えない」と決めつけず、市町村に聞くことに意味があります。ただし、実際にその例外を使っている市町村が、どれくらいあるのかは、確認した資料に書かれていません。一般的な運用として、期待しすぎないことも、大切です。
この記事は、特定の事業所を勧めるものではありません。どのサービスが合うかは、本人の状態で違います。お住まいの市町村の介護保険の担当課や、ケアマネジャーに、必ず相談してください。
5. 令和8年法律第51号:中山間・人口減少地域向けの「特定地域サービス」が新設され、市町村が事業として実施する道も
厚生労働省老健局の令和8年6月29日の資料によると、社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)で、中山間・人口減少地域での地域の実情に応じた配置基準や、包括的な評価の仕組みが導入できる特例介護サービスの類型(特定地域サービス)が、新設されます。
また、地域のサービス提供主体が少ない場合に、市町村が事業として居宅介護サービス等を実施できる「特定地域居宅サービス等事業」が、創設されます。事業者間の連携強化と、そのための事業継続の仕組みの構築も、含まれています。
施行期日は、原則として令和9年4月1日です。ただし、この法律のうち、一部の項目は、公布の日や、公布後の一定期間内に政令で定める日です。特定地域サービスの具体的な要件や、実施する市町村は、2026年10月時点では、確認した資料に書かれていません。
地域密着型サービスは、市町村が指定するサービスのため、事業所が少ない地域では、選択肢が限られがちです。今回の改正は、そうした地域でサービスを維持するための仕組みと読めますが、これは編集部の見方で、制度の詳細は、政令などで定まる部分があります。
6. まとめ
地域密着型サービスは、原則として、事業者のある市町村に住む人しか使えません(厚生労働省)。ただし、介護保険法は、市町村長が区域外の事業所を、所在地の市町村長の同意を得て指定できると定めています(第78条の2第4項第4号)。住所地特例の人は、特定地域密着型サービスについて、施設所在地の市町村の事業所も使えます。
令和8年法律第51号で、中山間・人口減少地域向けの「特定地域サービス」が新設されます。原則として令和9年4月1日の施行です。個別の判断は、お住まいの市町村の介護保険の担当課や、ケアマネジャーに確認してください。