厚生労働省の介護サービス情報公表システムによると、地域密着型サービスを利用できるのは、原則としてサービスを提供する事業者のある市町村に住む人に限られます。隣の市町村にある事業所のサービスは、利用できません(2026年10月時点)。
介護保険法第42条の2も、市町村は、その市町村の長が指定する事業者から、地域密着型サービスを受けたときに、地域密着型介護サービス費を支給する、と定めています。親の暮らす市町村と、事業所のある市町村が違うとき、使えるのかどうかが、気になる点です。
この記事では、前半でこの疑問に、厚生労働省の公表資料と、介護保険法の条文、令和6年の調査の数字、編集部の試算で答えます。続けて、原則と例外、令和9年4月に施行される法改正との関係を確認します。個別の判断は、お住まいの市町村に確認してください。
1. よくある疑問:要介護2の父を近所の小規模多機能に通わせたい。ただ、事業所は市境の向こうの隣の市。使えないのか
「要介護2の父を、近所の小規模多機能型居宅介護に通わせたいと思っています。ところが、その事業所は、父の住む市の境を越えた、隣の市にあります。父の住民票は、今の市のままです。隣の市の事業所は、使えないのでしょうか。住民票を移すしかないのでしょうか」。
同じ迷いは、事業所の少ない地域や、市境に住む人に、当てはまりえます。答えは、次の3点です。
- 地域密着型サービスは、原則として、事業者のある市町村に住む人しか使えません(厚生労働省)。ただし、介護保険法は、市町村長が区域外の事業所を指定するときに、所在地の市町村長の同意を得る手続きを定めています(第78条の2第4項)。使いたい事業所を、お住まいの市町村が指定しているかが、鍵になります
- 令和6年10月1日現在の地域密着型サービスの事業所は、9つのサービスを足して4万7771事業所です。地域密着型通所介護が1万8921事業所(39.6%)、認知症対応型共同生活介護が1万4341事業所(30.0%)、小規模多機能型居宅介護が5478事業所(11.5%)です(厚生労働省の調査、編集部試算)
- 令和8年法律第51号で、中山間・人口減少地域向けの「特定地域サービス」が新設され、地域のサービス提供主体が少ない場合に、市町村が居宅介護サービス等を事業として実施できる「特定地域居宅サービス等事業」が創設されます。原則として令和9年4月1日の施行です(厚生労働省老健局の資料)
2. 確認したい3つの「もし」を、条文で確認
読者の方が気にしそうな「もし」を、介護保険法と厚生労働省の資料で確認します。いずれも、ご自身の市町村の運用を確定するものではありません。
- もし、事業所が隣の市町村にあったら:原則として、利用できません。ただし、市町村長は、区域外の事業所を、その所在地の市町村長の同意を得て指定できます(介護保険法第78条の2第4項第4号)。お住まいの市町村が、その事業所を指定しているかを、介護保険の担当課に確認します
- もし、住所地特例の人だったら:特定地域密着型サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、複合型サービス)は、住所地特例対象施設に入所している人も、その施設の所在地の市町村の指定事業所で使えます(介護保険法第42条の2、編集部の整理)
- もし、要支援だったら:要介護の人向けの10のサービスとは別に、地域密着型介護予防サービスがあります。介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型共同生活介護の事業所が、令和6年10月1日現在、それぞれ3117、5037、1万3964事業所です(厚生労働省の調査)
ここからは、この答えの前提になる仕組みを順に確認します。市町村の壁と例外、新しい類型の順です。