4. 退職金を先に、iDeCoを後で受け取ると?19年内なら調整され、同じ年より税金が多くなる

60歳で退職金を受け取り、iDeCoの一時金を61歳以降に受け取る順番もあります。この場合は、iDeCoを受け取る年の前年以前19年内に受け取った退職金との間で、勤続期間の重なりが調整されます。

iDeCoの一時金は75歳までに受け取るため、60歳で退職金を受け取った人が20年以上あけることはできません。加入期間がすべて勤続期間と重なっていると、iDeCo側の退職所得控除はほとんど残りません。

  • 【60歳で同じ年に受け取る】約24万円
  • 【60歳で退職金、61歳以降にiDeCo】約24万円を上回る(iDeCoの552万円の大半に課税)

iDeCoを一時金ではなく年金で受け取ると、退職所得ではなく雑所得になり、公的年金と合わせて公的年金等控除を差し引きます。毎年の所得が増えるため、所得税・住民税のほか、国民健康保険料や介護保険料に影響することもあります。

5. 【元公務員の視点】検証:「ずらす」より「重なり」を先に確かめる

試算からは、受け取る年をずらすことが、いつも税金を軽くするわけではないことが分かります。65歳で退職する例では、同じ年に受け取ると0円、5年ずらすと約16万円でした。

分かれ目は、iDeCoの加入期間が会社の勤続期間とどれだけ重なっているかです。会社員のあいだにiDeCoに加入していれば、加入期間の多くは勤続期間と重なります。重なった期間の控除は、どの順番で受け取っても1回分しか使えません。

同じ年に受け取る場合は、長い方の勤続年数で控除を計算するため、重なった期間を二重に数えないことが最初から織り込まれています。年をずらす場合は、あとから受け取る側の控除が重なりの分だけ減らされます。

一方、退職金とiDeCoの合計が控除を大きく超える人や、勤続期間と重ならないiDeCoの加入期間が長い人では、結果が変わります。60歳定年の例では、同じ年に受け取っても約24万円の税金がかかりました。

国民健康保険を担当していた立場から付け加えると、一時金で受け取る退職金とiDeCoは「退職所得」として分けて課税され、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の所得割の計算には入りません。一方、iDeCoを年金で受け取ると雑所得になり、保険料の計算に含まれます。

年金で受け取ると公的年金等控除を使える面がある一方で、受け取る年ごとの保険料に影響することがあります。税金と保険料の両方を見比べたうえで、受け取り方を考えていただきたいと思います。

受け取り方を決める前に、勤め先の退職金規程で受け取る年齢と金額を確かめ、iDeCoの加入期間のうち勤続期間と重なる年数を数えておくと、比べる材料がそろいます。

6. まとめ

2026年1月から、iDeCoの一時金を先に受け取った場合は、9年内に受け取る退職金の控除が調整されるようになりました。60歳でiDeCo、65歳で退職金という順番では、試算の例で約16万円の税金がかかり、同じ年に受け取れば0円でした。退職金を先に受け取る場合も、19年内は調整されます。

まずは、ご自身の勤続期間とiDeCoの加入期間がどれだけ重なっているかを知るところから始めてみてください。受け取り方で迷ったときは、勤め先の担当部署やiDeCoの運営管理機関、税務署などに相談すると、ご自身の条件に合わせて確かめられます。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の税額は、勤続期間・加入期間の数え方、ほかの所得、住んでいる自治体などによって変わります。受け取り方を決める際は、勤め先や金融機関、税務署などでご確認ください。

参考資料

太田 彩子