厚生労働省によると、令和4年1月1日から、傷病手当金の支給期間は、支給開始日から「通算して1年6か月」になりました。途中で就労するなどして傷病手当金が支給されない期間があれば、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給されます(2026年10月時点)。
病気やケガで休み、復職したあとに、同じ病気で再び休む方もいます。1年6か月はどこから数えるのか、出勤した期間は数えるのか、再休職でも3日間の待期が要るのかは、気になる点です。
この記事では、前半でこの疑問に、厚生労働省と協会けんぽの公表資料と編集部の試算で答えます。後半では、通算の考え方、再休職の扱い、退職後の注意を整理します。個別の判断は、加入している協会けんぽの支部や健康保険組合に確認してください。
1. よくある疑問:うつ病で3か月休んで復職したが、また休むことに。傷病手当金の1年6か月は使い切った?待期はまた3日必要?
「うつ病で、3か月ほど休んで、傷病手当金を受け取りました。半年前に復職しましたが、症状が戻って、また休むことになりました。1年6か月は、最初に休み始めた日から数えるのでしょうか。出勤していた期間は、数えられてしまうのでしょうか。再び休むとき、待期の3日間も、もう一度必要でしょうか」。
この疑問は、一人の事情に見えますが、同じ迷いは、休職と復職を繰り返す人に、当てはまりえます。答えは、次の3点です。
- 傷病手当金の支給期間は、同じ病気やケガについて、支給開始日から通算して1年6か月に達する日までです。途中で就労して支給されない期間があれば、1年6か月を超えても繰り越されます。令和2年7月2日以降に支給が始まった分が対象です(厚生労働省)
- 復職後、同じ病気で再び休職しても、最初の支給日から通算1年6か月に達する日までの範囲内なら、3日間の待期なしで支給を受けられます。通算1年6か月を超えた場合は、同じ傷病かどうかが問題になり、判断は保険者がします(厚生労働省のこころの耳)
- 3月29日から休み、4月1日が支給開始日なら、通算1年6か月に達する日は令和9年9月30日です。日額3780円なら、暦で548日分の上限は207万1440円です(協会けんぽ、編集部試算)
2. 休み続ける・途中で就労する・1年6か月を超えて再休職する、3つの場合に支給期間がどう変わるかを厚生労働省の資料で確認
読者の方が気にしそうな「もし」を、厚生労働省と協会けんぽの資料と、編集部の試算で確認します。いずれも、ご自身の支給期間を確定するものではありません。
- もし、休み続けたら:支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで、支給されます。3月29日から休み、4月1日が支給開始日なら、令和9年9月30日までです(協会けんぽ、編集部試算)
- もし、途中で就労して支給されない期間があったら:その期間は通算に数えられず、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給されます(厚生労働省)
- もし、1年6か月に達したあと、同じ病気で再び休んだら:同じ傷病かどうかが問題になります。いったん治癒し、相当期間就業したあとの再発は、別の疾病とみなされることがありますが、判断は保険者がします(厚生労働省のこころの耳)
ここからは、この答えの前提になる仕組みを順に確認します。通算化の内容、支給期間の例、再休職の扱い、退職後の注意の順です。
3. 通算化の内容:令和4年1月1日から、支給開始日から通算して1年6か月になった
厚生労働省によると、治療と仕事の両立の観点から、より柔軟な所得保障ができるよう、令和3年法律第66号により健康保険法等が改正されました。令和4年1月1日から、傷病手当金の支給期間が通算化されました。
改正の前は、支給開始日から起算した1年6か月の間で、途中で出勤して支給されない期間があっても、1年6か月を超えると支給されませんでした。改正後は、同じケガや病気について、支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで、対象です(厚生労働省のリーフレット)。
改正は、令和3年12月31日時点で、支給開始日から起算して1年6か月を経過していない傷病手当金が対象です。つまり、令和2年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金です(厚生労働省)。
3.1 【傷病手当金の支給期間の考え方:改正前と改正後】
前提条件:厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」のページとリーフレットの記載を、編集部が表に整理したもの。改正後の対象は、令和3年12月31日時点で、支給開始日から起算して1年6か月を経過していない傷病手当金1/2
出所:厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」を基にLIMO編集部作成
- 令和3年12月31日まで(改正前):支給開始日から起算して1年6か月までです。途中で就労して支給されない期間も、起算した1年6か月に含まれ、超えると支給されません。
- 令和4年1月1日から(改正後):支給開始日から通算して1年6か月に達する日までです。途中で就労して支給されない期間は通算に数えず、1年6か月を超えても繰り越して支給されます(令和2年7月2日以降に支給が開始された分が対象)。
表を見ると、改正の前後で、途中で就労した期間の扱いが変わったことが分かります。改正後は、休んで支給される日が通算で1年6か月に達するまで、受け取れます。
4. 支給期間の例:3月29日から休み、4月1日が支給開始日なら、通算1年6か月に達する日は令和9年9月30日
協会けんぽによると、支給開始日とは、一番最初に傷病手当金が支給された日です。待期(連続した3日間)の次の日、休み始めから4日目が、支給開始日になります。
編集部が、例を作りました。令和8年3月29日から休み始め、3月29日から31日が待期で、4月1日が支給開始日です。4月1日から通算して1年6か月に達する日は、令和9年9月30日です。暦で数えると、548日(4月1日から翌年3月31日までの365日と、4月1日から9月30日までの183日)になります。
日額は、協会けんぽの例で、標準報酬月額の平均が17万円なら3780円です。すべての日に支給されると、3780円×548日で、上限は207万1440円です。途中で就労した期間があれば、その分は通算に数えず、期間は後ろへ繰り越されます。
4.1 【傷病手当金の支給期間の例:支給開始日が令和8年4月1日、日額3780円の場合(編集部試算)】
前提条件:令和8年3月29日から休み始め(待期は3月29日から31日)、4月1日が支給開始日。標準報酬月額の平均が17万円で日額3780円(協会けんぽの例)。すべての日に支給される場合の上限を暦で試算した。途中の就労は、その期間を通算に数えず繰り越す(厚生労働省)。編集部試算2/2
出所:協会けんぽ「傷病手当金」、厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」を基にLIMO編集部試算
- 休み続けた場合:通算1年6か月に達する日は令和9年9月30日で、支給できる日数の上限は548日です。上限の額は207万1440円です。
- 途中で就労して支給されない期間がある場合:就労した期間の分だけ、令和9年9月30日より後になります。支給できる日数の上限は548日で、就労した期間は数えません。上限の額は207万1440円です(就労中は給与があります)。
表を見ると、途中で就労しても、受け取れる日数の上限は、548日のままです。ただし、この試算は、すべての日に傷病手当金が支給される場合の上限です。有給休暇や手当で、日額より多い報酬が出た日は、支給されません。有給の日が、通算の日数にどう数えられるかは、確認できた資料では分かりませんでした。実際の額は、人によって違います。
5. 【編集者の視点】
今回の整理で、いちばん見落としやすいと感じたのは、「1年6か月」が、休み始めから数える暦の期間ではない点です。通算化の前は、起算した1年6か月で終わりましたが、今は、支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで続き、支給されない期間は通算に数えません。
そのため、出勤していた期間が長い人ほど、傷病手当金を受け取れる期間が、暦の上では長くなります。ただし、その間は給与が出るため、傷病手当金は支給されません。治療と仕事の両立の中で、無理のない働き方を考える材料になります。
この記事は、特定の働き方や、復職の時期を勧めるものではありません。復職や再休職の判断は、主治医や、会社の担当者、保険者と相談してください。
休んでは戻り、また休むことを繰り返していると、あと何日もらえるのかが分からなくなり、不安になるものです。通算という考え方を知ると、出勤した期間が無駄にならないと分かって、少し気持ちが軽くなる方もいるかもしれません。ただ、日数の数え方は人によって違うので、迷ったら、保険者に残りの日数を聞いてみてください。
復職しても、調子が戻りきらないまま働き続けることは、心身にとって負担です。再び休むことは、決して後ろめたいことではありません。制度の上でも、同じ病気で再び休む場合の道が、用意されています。迷ったときは、主治医に相談し、そのうえで保険者に確認する順番で考えてみてください。
6. 再休職の扱い:同じ病気なら、通算1年6か月に達する日までは待期なしで支給される
厚生労働省のこころの耳に掲載された、社会保険労務士のQ&Aによると、復職後に、同一の疾病や負傷、これにより発した疾病によって、再び休職する場合でも、最初の支給日から通算1年6か月に達する日までの範囲内なら、3日間の待期期間なく支給を受けられます。
通算1年6か月を超えた場合は、同一傷病なのかが問題になります。同一の疾病でも、いったん治癒していれば、話が違ってきます。昭和29年の通達(保文発第3027号)などで、治癒の認定は、必ずしも医学的判断のみによらず、社会通念上治癒したものと認められ、症状も認めず相当期間就業したあとの同一病名の再発は、別個の疾病とみなす、とされています。
ただし、この判断をするのは保険者です。同じ病気で再び休む場合は、支給されるかどうかを、保険者に確認する必要があります。なお、このQ&Aは、あくまで1つの事例として紹介されたものです(厚生労働省のこころの耳)。
6.1 【同じ病気で再び休んだときの扱い:待期と支給】
- 通算1年6か月に達する日までに、同じ病気で再び休む:3日間の待期なしで支給を受けられます。最初の支給日から通算1年6か月に達する日までの範囲内に限ります。
- 通算1年6か月に達したあとに、同じ病気で再び休む:同一傷病かどうかが問題になります。いったん治癒し、相当期間就業したあとの再発は、別個の疾病とみなされることがあり、保険者が判断します。
- 退職後の継続給付を受けていて、一度仕事に就ける状態になったあと、再び働けなくなる:傷病手当金は支給されません。退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日に出勤していないことなどが要件です。
表を見ると、同じ病気の再休職でも、時期や、退職しているかどうかで、扱いが違います。とくに、退職後の継続給付は、一度働ける状態になると、あとで再び働けなくなっても、傷病手当金は支給されません(協会けんぽ)。
7. 退職後の継続給付:退職日までに1年以上の被保険者期間があり、退職日に出勤しないことが条件
協会けんぽによると、資格喪失日の前日(退職日等)までに、被保険者期間(任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者、国民健康保険に加入していた期間を除く)が継続して1年以上あり、資格喪失日の前日に、傷病手当金を受けているか、受けられる状態であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けられます。
退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないため、資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金は支払われません。また、一度仕事に就くことができる状態になったあと、さらに仕事に就くことができない状態になっても、継続給付としては支給されません(協会けんぽ)。
支給期間は、退職後も、支給開始日から通算して1年6か月までです。請求の期限は、労務不能であった日ごとにその翌日から2年です(協会けんぽ)。給与の支払いがないため、1か月単位で、給与の締切日ごとに申請することが勧められています。
8. 【編集者の視点】
退職後の継続給付で、いちばん気をつけたいのは、「一度働ける状態になった」ことが、あとから影響する点です。協会けんぽの案内では、一度仕事に就くことができる状態になると、その後に再び働けなくなっても、継続給付は支給されません。
退職を考えている段階で、体調や、主治医の判断を踏まえて、いつ退職するかを決めるのが大切です。退職日の出勤の有無も、条件に関わります。具体的な日程は、保険者や、会社の担当者に確認しておくと安心です。
この記事は、特定の退職の時期を勧めるものではありません。傷病手当金の判断は、個別の事情で違います。加入している協会けんぽの支部や、健康保険組合の窓口に、必ず確認してください。
病気で休んでいる間は、収入のことも、先々のことも、考えれば考えるほど不安が膨らむ時期です。制度の期限や数え方を知っておくだけで、見通しが少し立ち、心が落ち着くことがあります。この記事の表が、保険者や会社に相談するときのひとつの目安になれば幸いです。分からない点は、遠慮なく、窓口に聞いてみてください。
※本記事は、編集部が厚生労働省と協会けんぽが公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
9. まとめ
傷病手当金の支給期間は、令和4年1月1日から、同じ病気やケガについて、支給開始日から通算して1年6か月に達する日までになりました。途中で就労して支給されない期間は、通算に数えず、繰り越されます。令和2年7月2日以降に支給が始まった分が対象です。
復職後に、同じ病気で再び休職しても、通算1年6か月に達する日までなら、3日間の待期なしで支給を受けられます。1年6か月を超えると、同じ傷病かどうかが問題になり、保険者が判断します。
3月29日から休み、4月1日が支給開始日なら、通算1年6か月に達する日は令和9年9月30日で、日額3780円の上限は207万1440円です(編集部試算)。個別の取り扱いは、保険者に確認してください。
10. よくある質問
10.1 Q. 傷病手当金の支給期間は、いつまでですか?
同じ病気やケガについて、支給開始日から通算して1年6か月に達する日までです(厚生労働省、協会けんぽ)。
10.2 Q. 途中で出勤した期間は、1年6か月に数えますか?
数えません。途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間は、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給されます(厚生労働省)。
10.3 Q. 通算化の対象は、いつ支給が始まった分ですか?
令和2年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金です。令和3年12月31日時点で、支給開始日から起算して1年6か月を経過していないものが対象です(厚生労働省)。
10.4 Q. 復職後に同じ病気で再び休むと、待期はまた必要ですか?
最初の支給日から通算1年6か月に達する日までの範囲内なら、3日間の待期は要りません(厚生労働省のこころの耳)。
10.5 Q. 1年6か月を超えたあとに、同じ病気で休むと、支給されませんか?
同じ傷病かどうかが問題になります。いったん治癒し、相当期間就業したあとの再発は、別個の疾病とみなされることがありますが、判断は保険者がします(厚生労働省のこころの耳)。
10.6 Q. 支給開始日とは、何ですか?
一番最初に傷病手当金が支給された日です。待期の3日間の次の日(休み始めから4日目)になります(協会けんぽ)。
10.7 Q. 退職後も、傷病手当金を受け取れますか?
退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日に受けているか受ける条件を満たしていれば、受け取れます。退職日に出勤すると、資格喪失後は受けられません(協会けんぽ)。
10.8 Q. 請求の期限は、いつまでですか?
労務不能であった日ごとに、その翌日から2年です(協会けんぽ)。
参考資料
- 厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」
- 厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」(リーフレット)
- 厚生労働省こころの耳「第7回 こころの病で再休職した場合、傷病手当金を再度支給できる仕組みはあるの?」
- 全国健康保険協会「傷病手当金」
- 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
- 全国健康保険協会「健康保険給付について」
齊藤 慧