障害年金の請求は、初診日を証明する書類が最初の関門です。初診の病院が閉院していた、カルテが残っていないと言われたなど、書類が取れずに手が止まる方もいると考えられます。

日本年金機構は、初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合の、別の証明書類を案内しています。この記事では、その案内の原文をもとに、20歳以降と20歳前で使える方法を、日付に直した試算とあわせて整理します。個別の判断は、年金事務所で確認してください。

1. 初診日の証明は、通常は初診時の医療機関の受診状況等証明書か診断書

機構の案内は、初診日証明書類として、通常は、初診時の医療機関が作成した受診状況等証明書(様式1)または診断書を提出する、としています。

初診日は、障害の原因となった傷病について、初めて医師の診療を受けた日です。診断書の様式にも、その日を書く欄があります。受給要件の初診日の考え方は、初診日から1年6か月待たないと請求できない?「原則」と「例外」障害認定日による請求・事後重症による請求の違いを整理した記事で確認できます。

一方、過去にさかのぼって請求する場合など、初診時の医療機関の証明を得ることが難しいこともあります。案内は、そうした場合に、請求する方の状況に応じて別の初診日証明書類を用意できるようにしている、と書いています。

用意した書類をもとに、申し立てた初診日が障害年金の初診日として認められるかどうかを機構が判断します。

2. 証明書が取れない理由は、様式2の申立書で申し立てる

一番古い受診歴のある医療機関の受診状況等証明書が添付できない場合は、その旨の申立てと、医療保険の給付にかかる記録などの初診日を確認できる書類を添付します。そのための書類が、様式2の「受診状況等証明書が添付できない申立書」です。

様式2では、添付できない理由を「カルテ等の診療録が残っていないため」「廃業しているため」「その他」から選びます。あわせて、その理由をどう確認したかを、電話、訪問、その他から選び、確認した日付も書きます。

受診した期間は、記憶があいまいな場合は「平成5年4月頃〜平成5年10月頃」のように、頃を付けて書いても構わないと、記入のお願いに書かれています。

様式2の参考資料欄には、受診状況などが確認できる資料のうち、持っているものすべてにチェックを付けて、コピーを添付します。

  • 身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
  • 身体障害者手帳等の申請時の診断書
  • 生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書
  • 事業所等の健康診断の記録
  • 母子健康手帳
  • 健康保険の給付記録(レセプトも含む)
  • お薬手帳・糖尿病手帳・領収書・診察券(可能な限り診察日や診療科が分かるもの)
  • 小学校・中学校等の健康診断の記録や成績通知表
  • 盲学校・ろう学校の在学証明・卒業証書
  • 第三者証明

資料の確認先も、様式2の裏面に書かれています。身体障害者手帳等の申請時の診断書は、診断書を提出した市区町村の障害福祉の窓口です。生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書は、提出した保険会社や労働基準監督署です。

事業所等の健康診断の記録は、当時勤務していた事業所や、健康診断を受けた医療機関で確認します。健康保険の給付記録は、当時加入していた健康保険組合や協会けんぽです。

一覧の「その他」に当たる例として、交通事故証明、診療や治療の経過を要約した医療情報サマリー、次に受診した医療機関への紹介状、氏名・日付・傷病名・診療科などが印刷された電子カルテ等の記録、交通事故や労災事故が載っている新聞記事が挙げられています。

何も持っていない場合は、「添付できる参考資料は何もない」にチェックを付けます。この申立書は、このあとの方法のどれを選ぶ場合も、最初に用意する書類です。

3. 20歳以降に初診日がある場合の方法は2つ

初診日が20歳以降にある場合の方法は、案内に2つ書かれています。どちらも、様式2の申立書と、様式3の第三者証明書を使います。

1つ目は、第三者証明を2通と、参考資料を用意する方法です。参考資料は、申し立てた初診日について客観性が認められる資料で、診察券、入院記録、医療機関や薬局の領収書、健康保険の給付記録(レセプトを含む)などが例に挙がっています。

2つ目は、初診日頃に受診した医療機関の医療従事者による第三者証明を、1通用意する方法です。担当した医師や看護師などが、直接的に見ていた初診日頃の受診状況を申し立てる必要があります。証明は1名の医療従事者によるもので足ります。

3.1 【初診日証明書類が取れないときの5つの方法】

日本年金機構の案内(初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合)を基に整理。いずれも様式2の申立書を用意する1/2

日本年金機構の案内(初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合)を基に整理。いずれも様式2の申立書を用意する

出所:日本年金機構「障害年金の初診日証明書類のご案内(初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合)」などを基にLIMO編集部作成

初診日が20歳以降の場合

  • 20歳以降:第三者証明と参考資料(第三者証明は2通)
  • 20歳以降:初診日頃に受診した医療機関の医療従事者の第三者証明(1通)

初診日が20歳前の場合

  • 20歳前:2番目以降に受診した医療機関の受診状況等証明書または診断書(第三者証明は0通)
  • 20歳前:第三者証明(2通)
  • 20歳前:初診日頃または20歳前の時期に受診した医療機関の医療従事者の第三者証明(1通)

4. 第三者証明は、親族は不可で、見聞きした時期が3つに分かれる

第三者証明には、決まりがあります。請求する方の三親等内の親族は、第三者証明を行えません。2名の第三者による証明が必要な方法では、証明する人が、次のいずれかに当たる内容を申し立てる必要があります。

  • 初診日頃の受診状況を、直接的に見て認識していた
  • 請求する方や家族から、初診日頃に、その受診状況を聞いていた
  • 請求する方や家族から、請求時から概ね5年以上前に、初診日頃の受診状況を聞いていた

3つ目の「請求時から概ね5年以上前」を、日付に直してみます。請求日が令和8年10月なら、5年前は令和3年10月です。令和3年10月ごろ以前に、本人や家族から受診の話を聞いていた人が、この3つ目に当たると考えられます(編集部試算)。

案内は、何日までを「概ね」と数えるかを書いていません。5年にぎりぎり届かない場合の扱いは、年金事務所で確認する必要があります。

5. 20歳前に初診日がある場合は、2番目以降の病院が18歳6か月前なら使える

初診日が20歳前にある場合の方法は3つです。このうち、20歳以降の場合にはない方法が、2番目以降に受診した医療機関の証明です。

2番目以降の医療機関が作成した受診状況等証明書か診断書を用意すると、申し立てた初診日が認められる条件は、2つです。1つ目は、その医療機関の受診日から、障害認定日が20歳到達日以前であることが確認できることです。2つ目は、その受診日より前に、厚生年金の加入期間がないことです。

1つ目の条件には、2つのケースがあります。1つ目は、2番目以降の医療機関の受診日が18歳6か月前である場合です。障害認定日は原則として初診日から1年6か月をすぎた日になるため、受診日が18歳6か月前にあることが必要だと、案内に書かれています。

2つ目は、受診日が18歳6か月から20歳到達日以前にあり、20歳到達日以前に、その障害の原因となった病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)です。症状が固定した日が障害認定日になるため、受診日が18歳6か月より後でもかまいません。

案内の具体例では、初診が10歳のA病院でも、17歳で受診したB病院の証明があれば、A病院の証明は不要です。B病院の受診前に、厚生年金の加入期間がないことが前提です。

障害者手帳も、使えます。様式2と、18歳6か月前の日が交付日として記載されている障害者手帳を用意した場合も、申し立てた初診日が認められます。障害年金を請求している傷病で、18歳6か月前に障害者手帳の交付を受けており、その交付日前に厚生年金の加入期間がないことが条件です。

20歳前に初診日があって、その初診日が厚生年金の加入期間だった場合は、障害厚生年金の対象になります。その場合は、20歳以降の場合の方法に沿った対応が必要になります。

5.1 【生まれた日から数える日付(4月10日生まれの例)】

編集部試算。4月10日生まれの例(2026年に18歳6か月、2028年に20歳)。案内の条件を日付に当てはめた。年齢は誕生日の前日に満了するため、誕生日の前日の日付で計算2/2

編集部試算。4月10日生まれの例(2026年に18歳6か月、2028年に20歳)。案内の条件を日付に当てはめた。年齢は誕生日の前日に満了するため、誕生日の前日の日付で計算

出所:日本年金機構「障害年金の初診日証明書類のご案内(初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合)」などを基にLIMO編集部試算

日付に直した結果

  • 18歳6か月に達する日:2026年10月9日
  • 20歳に達した日:2028年4月9日
  • 2番目以降の受診日が18歳6か月前(条件㋐):2026年10月9日より前
  • 受診日が18歳6か月から20歳到達日以前(条件㋑):2026年10月9日から2028年4月9日までで、20歳到達日以前に症状が固定

6. 【編集者の視点】

初診日の証明は、病院から1枚もらえば済むもの、と思われがちです。それが取れないと分かると、請求そのものを諦めてしまう方がいてもおかしくありません。機構が別の方法を案内していることは、知っておく価値があります。

ただ、案内の方法は、初診日の時期と、誰が証明するかで、細かく分かれています。三親等内の親族は第三者証明を書けず、見聞きした時期も3つに分かれます。様式3を頼む前に、相手がこの条件に当たるかを確認してください。

様式2の参考資料欄は、持っているものすべてにチェックを付ける形です。母子健康手帳やお薬手帳、診察券のように、手元にあることを忘れていた資料が、見つかることもあります。探す前に、まず様式2の一覧を見ておくとよいでしょう。

どの方法が使えるかは、受診の経過で決まります。最初に年金事務所や年金相談センターで、受診した順番と時期を伝えて、使える方法を確認してください。

7. まとめ

  • 初診日の証明は、通常は初診時の医療機関の受診状況等証明書か診断書です
  • それが取れないときは、様式2の申立書に理由を書き、別の証明書類を用意します
  • 20歳以降は、第三者証明2通と参考資料、または医療従事者の第三者証明1通です
  • 20歳前は、2番目以降の医療機関の証明、障害者手帳、第三者証明の方法があります
  • 第三者証明は、三親等内の親族は書けず、「概ね5年以上前」に聞いた話も対象になります

初診日の証明は、書類が取れないから終わり、ではありません。機構は、初診時の医療機関の証明が難しい場合の別の書類を、案内で示しています。

最初に、受診した順番と時期を書き出してみてください。そのうえで、年金事務所や年金相談センターで、使える方法を確認します。

8. 初診日が存在する「一定期間」を資料で示す方法

案内には、初診日が存在する一定の期間を証明して、初診日を認めてもらう方法もあります。この方法は、初診日が一定の期間内にあることを、資料で確認できる場合に使います。

用意するのは、様式2の申立書、一定期間の始期に関する参考資料、終期に関する参考資料です。始期の例は、就職時に提出した診断書や、発病していないことが確認できる人間ドックの結果です。終期の例は、2番目以降に受診した医療機関による証明や、交付日の記載された障害者手帳です。

資料で初診日が一定期間内にあると確認できた場合に、申し立てた初診日が認められるのは、次の4つのいずれかに当たるときです。

8.1 【一定期間の方法で初診日が認められる4つの場合】

場合ごとの条件と、初診日の参考資料

  • ㋐:同一の年金制度に継続して加入し、いずれの時点でも納付要件を満たす(初診日の参考資料は不要)
  • ㋑:全期間が20歳前の期間(厚生年金加入期間がある場合を除く)(初診日の参考資料は不要)
  • ㋒:全期間が60歳から65歳の期間で、いずれの時点でも納付要件を満たす(厚生年金加入期間がある場合を除く)(初診日の参考資料は不要)
  • ㋓:異なる年金制度に加入し、いずれの時点でも納付要件を満たす(初診日の参考資料は必要)

㋓の初診日の参考資料は、申し立てた初診日が国民年金の加入期間、20歳前の期間、または60歳から65歳の期間にある場合は、不要です。納付要件の考え方は、初診日の前日に問われる納付要件の「原則」と「特例」を具体例で解説した記事が詳しいです。

9. 請求の5年以上前のカルテがある場合の方法

もう1つの方法は、請求の5年以上前に医療機関が作成したカルテの写しを使う方法です。カルテには、請求する方が申し立てた、別の医療機関での初診日が書かれている必要があります。

用意するのは、様式2の申立書と、請求の5年以上前に医療機関が作成したカルテの写しなどです。カルテには、請求する方が申し立てた、他の医療機関での初診日が書かれている必要があります。

「請求の5年以上前」に作成されたカルテである必要があるため、カルテの作成日が確認できるかを、先に見てください。請求日から数えて、5年以上前かどうかを確かめます。

10. 【編集者の視点】

一定期間の方法とカルテの方法は、案内の5ページに、まとめて書かれています。20歳以降の方法や、20歳前の方法で行き詰まったときの、さらに先の選択肢です。

ここまで読んで、「自分の場合はどれなのか分からない」と感じた方もいると思います。制度は、初診日の時期と受診の経過で、使える方法が分かれる設計です。受診歴を時系列で書き出すことが、最初の一歩になります。

※本記事は、編集部が日本年金機構の公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

11. よくある質問

11.1 Q. カルテが廃棄されていて、初診日の証明が取れません。どうすればよいですか?

A. 様式2の申立書に、添付できない理由として「カルテ等の診療録が残っていないため」を選び、確認方法と日付を書きます。そのうえで、初診日の時期に応じた方法の書類を用意します。

11.2 Q. 家族に第三者証明を書いてもらえますか?

A. 請求する方の三親等内の親族は、第三者証明を行えません。親族以外の方に依頼する必要があります。

11.3 Q. 初診の病院が閉院している場合は、どう証明しますか?

A. 様式2の理由に「廃業しているため」があります。そのうえで、初診日の時期に応じて、第三者証明や、2番目以降の医療機関の証明などを用意します。

11.4 Q. 「請求時から概ね5年以上前」とは、いつのことですか?

A. 請求の時点から5年以上さかのぼった時期です。請求日が令和8年10月なら、令和3年10月ごろ以前です。案内は「概ね」の幅を書いていないため、ぎりぎりの場合は年金事務所で確認してください。

参考資料

齊藤 慧