消費増税再延期、衆参同日選が視野に

消費税率の10%への引き上げについて、当初予定されていた2017年4月以降に再延期されるのではないという見方が増えています。

安倍晋三首相は、リーマンショックや大震災のような事態が発生しない限り予定通り引き上げると繰り返す一方で、4月1日(日本時間2日)には訪問先のワシントンで、「引き上げ延期には法改正が必要となる。その制約要件の中で適宜適切に判断していきたい」と含みを持たせる発言をしました。

延期の是非を判断するタイミングとしては、5月に開かれる伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)および夏の参院選です。

早ければ4月に再延期を宣言する可能性もあります。その後のシナリオとは、野党が「アベノミクスの失敗により10%への引き上げができなかった」と追求し、それに応じて「民意を問う」として衆議院を解散、7月の衆参同日選に向かうというものです。

選挙で圧勝すれば、安倍首相が目指す憲法改正発議に必要な衆参両院での3分の2以上の議席獲得の可能性もあります。

消費増税再延期による直近の動きは株価上昇か

消費増税が再延期されると、株価にはどう影響するでしょうか。直近の動きとしてはプラスになるでしょう。

消費増税が決まると、値上げ前の駆け込み需要が起こるとはいえ、その後は物価上昇により個人消費や法人の設備投資などが減少することが予測されます。それに対し、「少なくとも2020年に開かれる東京五輪以前には増税を行わない」、あるいは「当面は凍結」といった表明が出るようなら、消費や投資の力強い回復も期待できます。

総選挙の結果、与党が大勝するようであれば、安定政権がさらに続くと見られ、とりわけ、外国人投資家に対する安心感にもつながるため、日本株が買われる要因にもなるでしょう。

気になる為替相場の動向ですが、消費増税が再延期された場合、一般的には、円が売られる可能性が高いと考えられます。つまり、円安になる可能性が高いということです。

最近の株安の大きな要因の1つは円高です。自動車など輸出関連を中心に企業業績の先行き不透明感が強まり、株が売られました。円安傾向になれば、輸出関連株を中心に、株価の反発が期待できます。

ただし、ここで注意しなければならないのは、「すでに、消費増税延期は織り込み済み」という声もあることです。そうであれば、消費増税再延期の宣言があったとしても、影響は少ないことになります。逆に、消費増税再延期が実施できなかった場合には、これまで以上の円高・株安が進行する可能性もあります。

財政負担がますます大きく。国債のさらなる格下げも

消費増税の再延期は、足元の景気にはプラスになりますが、当然ながら、見込んでいた税収増がなくなります。少子高齢化にともにない、社会保障費が膨れあがっています。財政再建は厳しく、2020年度の基礎的財政収支黒字化の政府公約の達成も難しくなります。

3月29日に成立した2016年度予算案では、一般会計の総額は過去最大の96兆7000億円余りとなっています。

新規国債の発行額は34兆4320億円で、これまでよりは改善されたとはいえ、歳入に占める国債依存度は35%強と、多くを借金に頼っています。政府予算に占める国債発行額は巨額で、対国内総生産(GDP)債務比率は先進国の中で最も大きくなっています。

こうしたことから、日本国債の格付けが引き下げられることも考えられます。その場合、直近では円安・株高に動く傾向がありますが、金融機関や大手企業の格付けも連動して下がることが懸念されるため、資金調達コストの上昇などの影響が生じる可能性があるでしょう。

消費増税は、再延期されても、予定通りに実施されても、注意しなければならない点が数多くありそうです。安倍首相の最終決断に注目です。

【2016年4月12日 投信1編集部】

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LIMO編集部