仕事や通勤が原因のケガで労災保険を使う場合、原則として、労災保険指定医療機関では無料で治療を受けられます。厚生労働省の労災保険指定医療機関検索の情報は、令和8年4月1日時点の届出内容に基づいています(2026年10月時点)。

ただ、病院に行って「労災の用紙を持ってきてください」と言われると、戸惑う方は多いと思います。その用紙が様式第5号です。窓口の支払いが無料になるのは、指定医療機関に様式第5号を出したときで、指定外の病院では、流れが変わります。

この記事では、前半でこの疑問に、厚生労働省の資料と労働局の案内で答えます。後半では、様式の使い分け、指定医療機関の探し方、様式第5号の書き方の注意点、指定外の病院で受診したときの請求を確認します。個別の判断は、所轄の労働基準監督署や、会社の担当部署にも確認してください。

1. 仕事中のケガで初めて労災を使う。病院で「5号様式を持ってきて」と言われたが、窓口で全額払うの?

「仕事中に腕をケガして、会社の近くの病院に行きました。受付で『労災ですか。労災なら、様式5号を出してください』と言われたのですが、そんな用紙は持っていません。会社に頼むと、書いてもらえるのかも分かりません。今日のところは全額を払うことになるのか、そもそもこの病院が労災に対応しているのかも分からず、不安です」

この疑問は、一人の事情に見えますが、同じ仕組みは、仕事中や通勤中にケガをした人にも当てはまりえます。答えは、次の3点です。

  • 労災指定の病院・薬局などで受ける「療養の給付」は、無料で治療を受けられます。そのために出す書類が様式第5号(通勤災害は第16号の3)で、受診している指定医療機関を経由して、所轄の労働基準監督署長に出します(厚生労働省)
  • 指定外の病院で受けた場合は、いったん自分で支払い、あとで様式第7号(通勤災害は第16号の5)で費用を請求します。療養の費用は、費用の支出が確定した日の翌日から2年で時効になります(厚生労働省)
  • 指定医療機関かどうかは、厚生労働省の検索で調べられます。情報は令和8年4月1日時点の届出内容で、診療科目が実際と違うこともあるため、各医療機関に確認します(厚生労働省)

2. 労災の受診で窓口の支払いがなくなる仕組み:指定医療機関なら「療養の給付」、指定外なら「療養の費用の支給」

厚生労働省のパンフレット「療養(補償)等給付の請求手続」によると、労災保険の療養補償等給付には、「療養の給付」と「療養の費用の支給」の2つがあります。どちらも、給付の対象となる療養の範囲や期間は同じです。

「療養の給付」は、労災病院や労災保険指定医療機関・薬局等(指定医療機関等)で、無料で治療や薬剤の支給などを受けられるもので、現物給付と呼ばれます。「療養の費用の支給」は、近くに指定医療機関等がないなどの理由で、指定外の医療機関や薬局等で療養を受けたときに、かかった費用を支給する現金給付です。

つまり、窓口で払うかどうかは、受診先が指定医療機関等かどうかで分かれます。療養補償等給付は、治療費、入院料、移送費など、通常の療養に必要なものが含まれ、傷病が治ゆ(症状固定)するまで行われます。

通勤が原因の場合は、名称が「療養給付」になり、様式番号も変わります。この記事では、業務災害の様式番号を中心に書き、通勤災害の番号は、かっこで添えています。

3. 労災で病院を受診する流れ:指定か確認し、様式第5号を指定医療機関に出す

受診の流れを、誰が何をするのかに分けて整理しました。ポイントは、様式第5号を出す先が、労働基準監督署ではなく、受診している指定医療機関だということです。

3.1 【労災の受診から請求書の提出までの流れ(療養の給付・指定医療機関の場合)】

前提条件:厚生労働省のパンフレット「療養(補償)等給付の請求手続」と、鹿児島労働局「労災保険給付の請求手続き」から整理した。業務災害の様式番号を示し、通勤災害は様式第16号の3を使う。細部は所轄の労働基準監督署で確認1/2

前提条件:厚生労働省のパンフレット「療養(補償)等給付の請求手続」と、鹿児島労働局「労災保険給付の請求手続き」から整理した。業務災害の様式番号を示し、通勤災害は様式第16号の3を使う。細部は所轄の労働基準監督署で確認

出所:厚生労働省「療養(補償)等給付の請求手続」、鹿児島労働局「労災保険給付の請求手続き」を基に、LIMO編集部が整理

  • 手順1(被災した本人):受診する医療機関・薬局が労災指定かどうかを確認します。
  • 手順2(本人と事業主):様式第5号(通勤災害は第16号の3)を用意し、事業主の証明を受けます。
  • 手順3(本人):療養を受けている指定医療機関等に、様式第5号を出します。
  • 手順4(指定医療機関等):様式第5号を、所轄の労働基準監督署長に出します。

窓口で払わずに済むのは、療養の給付が、指定医療機関等で無料で受けられる現物給付だからです(厚生労働省)。ここでの「無料」は、治療や薬剤の支給などを受けるときの話で、受診先が指定医療機関等であることが前提です。

想定の人は、今日の受診で様式第5号を持っていません。厚生労働省のパンフレットは、様式第5号を出す先を、療養を受けている指定医療機関等としています。受診した病院が、労災指定かどうかを、まず窓口で確認してください。

齊藤 慧
仕事中にケガをして、痛みがあるなかで、聞き慣れない用紙の名前を言われると、どうしていいか分からなくなると思います。会社への連絡、病院での受付、書類の準備が一度に重なります。まずは、受診先が労災指定かどうかだけを確認するところから、順番に進めてみてください。

4. 様式第5号・第6号・第7号の使い分け:どこで受診したかで、出す書類と出す先が変わる

鹿児島労働局の「労災保険給付の請求手続き」は、傷病にかかったときの請求書を、受診先ごとの一覧にしています。指定医療機関に初めてかかるときは様式第5号、転医するときは様式第6号、指定外の病院にかかったときは様式第7号です。

4.1 【受診先ごとの請求書の種類と提出先(業務災害・通勤災害)】

前提条件:鹿児島労働局「労災保険給付の請求手続き」の「傷病にかかったとき」の一覧から、療養の給付と療養の費用に関する6つを抜粋した。様式の番号は、業務災害と通勤災害で異なる2/2

前提条件:鹿児島労働局「労災保険給付の請求手続き」の「傷病にかかったとき」の一覧から、療養の給付と療養の費用に関する6つを抜粋した。様式の番号は、業務災害と通勤災害で異なる

出所:鹿児島労働局「労災保険給付の請求手続き」、厚生労働省「療養(補償)等給付の請求手続」を基に、LIMO編集部が整理

  • 労災指定の病院にかかったとき(業務災害):様式第5号を、労災指定の病院・薬局・訪問看護事業者に出します。
  • 労災指定の病院にかかったとき(通勤災害):様式第16号の3を、労災指定の病院・薬局・訪問看護事業者に出します。
  • 労災指定の他の病院に転医したとき(業務災害):様式第6号(指定病院等変更届)を、変更後の指定医療機関を経由して労働基準監督署長に出します。
  • 労災指定の他の病院に転医したとき(通勤災害):様式第16号の4(指定病院等変更届)を、変更後の指定医療機関を経由して労働基準監督署長に出します。
  • 労災非指定の病院にかかったとき(業務災害):様式第7号を、所轄の労働基準監督署に出します。
  • 労災非指定の病院にかかったとき(通勤災害):様式第16号の5を、所轄の労働基準監督署に出します。

厚生労働省のパンフレットには、非指定医療機関で療養を受けている人が、指定医療機関に変更するときは、様式第6号や第16号の4の提出は必要なく、様式第5号や第16号の3を出す、とあります。指定外から指定に変えるときは、様式第5号です。

薬局、柔道整復師、はり師・きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、訪問看護事業者から手当を受けた場合は、様式第7号にかっこ付きの番号((2)から(5))が付きます。受けた療養の種類で、様式が分かれています。

5. 労災指定の病院の探し方:厚生労働省の検索は令和8年4月1日時点の届出に基づく

厚生労働省の「労災保険指定医療機関検索」では、医療機関の名称や所在地、診療科目から、お住まいや職場の最寄りの労災保険指定医療機関を調べられます。労働者が仕事や通勤が原因で負傷したり病気になったりした場合、原則として指定医療機関で無償で治療を受けられる、と説明されています。

注意点は、検索結果の情報が、令和8年4月1日時点の届出内容に基づいていることです。厚生労働省のページには、届出内容が実際の診療科目等と異なることがあるため、具体的な医療機関の情報は、各労災保険指定医療機関に問い合わせるよう書かれています。

薬局や訪問看護事業者、柔道整復師、はり師・きゅう師にも、労災指定があります。鹿児島労働局の案内は、医療機関、薬局、訪問看護事業者、柔道整復師、針灸師について、労災指定であるかどうかの確認を必ずするよう求めています。

労災保険の請求手続きに関しては、都道府県労働局か労働基準監督署に問い合わせるよう、厚生労働省のページに書かれています。請求書の記載方法や支給要件など、一般的な制度の問い合わせには、労災保険相談ダイヤル(0570-006031)が案内されています。

6. 【編集者の視点】

調べて分かったのは、「労災なら無料」という言葉が、受診先を選ばないものとして広まっている点です。実際は、指定医療機関等で受ける療養の給付が無料で、指定外は、いったん自分で払う流れになります。この違いを知らないと、窓口で払ったあとに、慌てることになります。

もう一つは、様式第5号の出し先です。会社の担当者に任せきりでも、本人が持ち歩いて労基署に出すものでもなく、受診している指定医療機関に出します。受診の前に電話で、労災の扱いができるかを聞いておくと、当日の行き違いが減ります。

7. 様式第5号の書き方の注意点:災害の発生状況、事業主の証明、初診日との違い

厚生労働省のパンフレットには、様式第5号の記載例が載っています。本稿では、欄ごとの注意書きのうち、記入ミスが起きやすいと考えられる箇所を、表に整理しました。実際の記入は、厚生労働省の様式と記載例を見ながら進めてください。

7.1 【様式第5号の記入で注意する主な欄(厚生労働省のパンフレットの記載例)】

  • 事故の発生日時:事故の発生日時や、発病の日時を、午前・午後を含めて正確に記入します。
  • 災害の発生状況:どのような場所で、どのような状態で、どのようにして災害が発生したかを、分かりやすく記入します。
  • 初診日との違い:負傷または発病の年月日と、初診日が異なる場合は、その理由も記入します。
  • 事業主の証明:事業主の証明が必要です。支店長等が事業主の代理人に選任されているときは、その人の証明を受けます。
  • 事業主の氏名:氏名だけでなく、代表取締役等の役職名も記入します。
  • 複数の事業場:複数の事業場で就業している場合は、「有」に〇をつけ、事業場の数を記入します。

事業主の証明は、会社に頼む必要があります。会社が証明に応じないときの扱いは、厚生労働省のパンフレットでは確認できませんでした。困ったときは、所轄の労働基準監督署か、労災保険相談ダイヤルに、早めに相談してください。

派遣で働く人や、複数の会社で働く人は、記入の仕方が変わる場合があります。パンフレットには、派遣労働者の記入や、複数事業労働者の欄に関する注意書きがあります。該当する人は、パンフレットの記載例を、実際に見てください。

齊藤 慧
災害の発生状況を、どこまで細かく書けばいいのか、迷う方は多いと思います。ケガをした直後は、痛みや驚きで、細かい状況を思い出しにくいものです。ケガをした日のうちに、いつ、どこで、何をしていたかを、メモに残しておくと、あとで様式を書くときに助かります。

8. 指定外の病院で受診したときの請求:様式第7号で費用を請求し、時効は2年

指定外の病院や薬局で、療養を受けたときは、療養の費用の支給を請求します。厚生労働省のパンフレットによると、所轄の労働基準監督署長に、様式第7号(通勤災害は第16号の5)を出します。この場合、様式第5号とは違い、医療機関を経由せずに、労働基準監督署に出す形です。

療養の費用は、被災労働者が、治療などにかかった費用を病院などに支払ったあとに、本人に支給される現金給付です。そのため、原則として、被災労働者本人が支払ったことが分かる領収書等を、添付します。必要な添付書類は、受けた療養の種類で変わり、看護や移送などの費用がある場合は、その費用の明細書と、領収書が要ります。

はり・きゅうやマッサージの施術を受けた場合は、医師の診断書などの添付が必要です。たとえば、はり・きゅうは、初療の日と、初療の日から6か月を経過した日の請求書に、医師の診断書を添付します。詳しい条件は、パンフレットを見てください。

時効にも、注意が必要です。パンフレットには、療養の給付は現物給付なので、請求権の時効は問題とならないが、療養の費用は、費用の支出が確定した日の翌日から2年を経過すると、時効で請求権が消滅する、と書かれています。それまでに請求書を出せば、時効の問題はなくなります。

通院費は、被災労働者の居住地または勤務先から、原則として、片道2km以上の通院で、一定の条件に当てはまると、支給の対象です。片道2km未満でも、対象になる場合があります。通院費の請求の詳細は、労働基準監督署に確認してください。

9. 労災の療養はいつまで続くか:治ゆ(症状固定)まで。アフターケアの手帳も

厚生労働省のパンフレットによると、療養補償等給付は、傷病が治ゆ(症状固定)するまで行われます。労災保険での「治ゆ」は、健康な状態に完全に回復した場合だけを指しません。症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その効果が期待できなくなった状態をいいます。

したがって、投薬や理学療法で一時的に回復する程度で、症状が残っている場合でも、医療効果が期待できないと判断されると、「治ゆ」(症状固定)として、療養の給付が行われなくなります。治療を続けたいときは、主治医と、労働基準監督署に相談してください。

せき髄損傷、頭頸部外傷症候群、慢性肝炎などの傷病は、治ゆ(症状固定)後も、診察や保健指導、保健のための薬剤の支給などの「アフターケア」を受けられます。アフターケアは、都道府県労働局長が交付する「アフターケア手帳」を、労災病院などに見せて、無料で受けられます。

齊藤 慧
治療が長引くと、いつまで労災で診てもらえるのか、不安になる方もいると思います。「治ゆ」という言葉が、完全に治ることを意味しないと知ると、少し驚くかもしれません。症状が残っているのに、治療が終わると言われたときは、一人で抱え込まず、主治医や労働基準監督署に、早めに相談してみてください。

10. 【編集者の視点】

労災の手続きで、いちばん手間がかかるのは、実は、最初の受診のときの準備だと思います。様式第5号は、事業主の証明が必要で、病院の窓口に出す書類です。ケガをした当日に、すべてを整えるのは難しいため、受診先の指定の確認と、会社への連絡を先に済ませるのが現実的です。

この記事の内容は、厚生労働省のパンフレットと、労働局の案内に基づく一般的な整理です。事業主の証明が得られない場合や、複数の会社で働いている場合、指定外の病院に通う場合などは、個別の事情で扱いが変わる可能性があります。労働基準監督署や、労災保険相談ダイヤルに確認してください。

齊藤 慧
仕事中のケガは、本人にとっても、会社にとっても、突然のことで、気持ちの余裕がないなかで手続きが始まります。窓口で全額を払うことになるのでは、という心配は、よく分かります。受診先が指定かどうかと、様式第5号の出し先の2つを押さえておくだけで、当日の不安は、ずいぶん減るはずです。※本記事は、編集部が厚生労働省・鹿児島労働局が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

11. まとめ

労災保険の療養は、指定医療機関等で受ければ無料で治療を受けられる「療養の給付」と、指定外で受けた費用を支給する「療養の費用の支給」の2つです。指定医療機関には、様式第5号(通勤災害は第16号の3)を出し、医療機関を経由して、所轄の労働基準監督署長に提出されます。

指定外の病院では、いったん自分で払い、様式第7号(通勤災害は第16号の5)で、労働基準監督署に費用を請求します。療養の費用は、費用の支出が確定した日の翌日から2年で時効です。指定医療機関は、厚生労働省の検索で調べられますが、情報は令和8年4月1日時点の届出内容です。

12. よくある質問

12.1 Q. 労災で病院にかかると、窓口で払うお金はありますか?

労災指定の病院・薬局などで療養の給付を受ければ、無料で治療を受けられます。指定外の病院では、いったん自分で支払い、あとで費用を請求します(厚生労働省)。

12.2 Q. 様式第5号は、どこに出しますか?

療養を受けている指定医療機関等に出します。指定医療機関等が、所轄の労働基準監督署長に提出します。本人が労働基準監督署に持っていく必要はありません(厚生労働省のパンフレット)。

12.3 Q. 通勤中のケガのときは、同じ様式を使いますか?

通勤災害の場合は、様式第16号の3を使います。指定外の病院は、様式第16号の5です。業務災害と通勤災害で、様式の番号が異なります(厚生労働省、鹿児島労働局)。

12.4 Q. 受診した病院が労災指定かどうかは、どう調べますか?

厚生労働省の「労災保険指定医療機関検索」で、名称や所在地、診療科目から調べられます。情報は令和8年4月1日時点の届出内容で、実際の診療科目と異なる場合があるため、各医療機関に確認してください(厚生労働省)。

12.5 Q. 指定外の病院で受診したら、どうなりますか?

療養の費用の支給を請求します。様式第7号(通勤災害は第16号の5)に、領収書などを添付して、所轄の労働基準監督署に出します(厚生労働省のパンフレット)。

12.6 Q. 費用の請求には、期限がありますか?

療養の費用は、費用の支出が確定した日の翌日から2年を経過すると、時効で請求権が消滅します。療養の給付は現物給付なので、請求権の時効は問題になりません(厚生労働省のパンフレット)。

12.7 Q. 転院するときは、どうしますか?

指定医療機関から別の指定医療機関に変えるときは、変更後の指定医療機関を経由して、様式第6号(通勤災害は第16号の4)を、労働基準監督署長に出します。指定外から指定に変えるときは、様式第5号です(厚生労働省)。

12.8 Q. 会社が事業主の証明をしてくれないときは、どうしたらよいですか?

厚生労働省のパンフレットでは、扱いが確認できませんでした。所轄の労働基準監督署か、労災保険相談ダイヤル(0570-006031)に、相談してください。

12.9 Q. 労災の治療は、いつまで受けられますか?

傷病が治ゆ(症状固定)するまでです。治ゆは、症状が安定し、医療効果が期待できなくなった状態をいいます。症状が残っていても、治ゆと判断される場合があります(厚生労働省のパンフレット)。

参考資料

齊藤 慧