4. 相続時精算課税を選ぶと、年110万円の基礎控除は暦年課税とは別の仕組みになる
親や祖父母から子や孫への贈与では、暦年課税のほかに相続時精算課税を選ぶこともできます。国税庁のタックスアンサー「相続時精算課税の選択」で、相続時精算課税の仕組みを確認します。
4.1 相続時精算課税は60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与が対象
相続時精算課税を選べるのは、贈与をした年の1月1日に60歳以上の父母や祖父母などから、贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の子や孫などが贈与を受けた場合です。受け取る人は、あげる人の直系卑属である推定相続人か孫に限られます。
選ぶときは、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出します。選ぶかどうかは、あげる人ごとに決めます。
4.2 令和6年1月1日以後の贈与は、基礎控除110万円と特別控除2500万円を差し引き、超えた部分に一律20%
令和6年1月1日以後の贈与では、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除があります。さらに累計2500万円までの特別控除があり、それを超えた部分に一律20%の税率がかかります。特別控除は、期限内に贈与税の申告書を出した場合に限って差し引けます。
あげた人が亡くなったときは、相続時精算課税で受けた贈与の価額から、年ごとに基礎控除110万円を差し引いた残りの額を相続財産に加えて相続税を計算します。
4.3 一度選ぶと、同じ人からの贈与は暦年課税に戻せない
相続時精算課税を一度選ぶと、その人から受ける贈与には、それ以降すべて相続時精算課税が使われます。暦年課税に変えることはできません。個人向け国債を贈る前に、どちらの方法にするかを家族で決めておく必要があります。
5. 暦年課税で贈った個人向け国債も、贈った人が亡くなると相続財産に加算されることがある
暦年課税の贈与でも、あげた人が亡くなる前の一定期間に受けた分は、相続税の計算で相続財産に加算されます。国税庁のタックスアンサー「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」で、その期間を確認します。
5.1 加算される期間は、相続の時期によって3年から7年へ延びていく
加算の対象になるのは、相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなった人から加算対象期間内に暦年課税で受けた贈与です。贈与税がかからなかった基礎控除110万円以下の贈与も含まれます。加算対象期間は、相続が始まった日によって次のように変わります。
- 令和8年12月31日までの相続:相続開始前3年以内
- 令和9年1月1日から令和12年12月31日までの相続:令和6年1月1日から亡くなった日まで
- 令和13年1月1日以後の相続:相続開始前7年以内
5.2 延びた期間に受けた贈与は、合計100万円までは加算されない
相続が始まった日が令和9年1月2日以後の場合、加算対象期間のうち相続開始前3年以内より前に受けた贈与については、その合計額から100万円までは加算されません。加算された贈与に対応する贈与税の額は、相続税の額から差し引かれます。
6. 個人向け国債を贈るときは、受け取る人の口座と、贈与の合意を先にそろえる
銀行で相続や口座の手続きのご相談を受けていた立場から、個人向け国債を家族に贈るときに先にそろえておきたいことをお伝えします。
6.1 個人向け国債は口座上の記録で管理されるため、受け取る人の名義の口座に移す
財務省によると、国債は証券が発行されず、口座上の記録によって管理されています。個人向け国債を贈るときは、受け取る人の名義で国債の取引ができる口座を用意し、そこへ移す手続きになります。具体的な手続きは、あげる人の口座がある金融機関で確かめます。
誰の財産なのかが家族にも分かるように、贈ると決めた分は受け取る人の名義の口座に移しておくことが大切です。
6.2 贈与は、あげる人ともらう人の合意で成り立つ契約
民法第549条は、贈与を、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって効力が生じるものと定めています。受け取る人が知らないうちに国債を移すのではなく、贈る側と受け取る側の双方が内容を理解したうえで手続きを進めます。
贈与した日付と額面、移した先の口座を書面に残しておくと、贈与税の申告や、将来の相続の手続きで確かめやすくなります。判断に迷うときは、税務署や税理士に相談できます。
7. まとめ
個人向け国債の10月募集分は、固定5年が年2.39%、固定3年が年2.07%、変動10年が年2.05%です。個人向け国債は個人間であれば1万円単位で贈ることができ、贈与税の計算では中途換金の額で評価します。
暦年課税の贈与税は、1年間にもらった財産の合計額から基礎控除110万円を差し引いて計算し、18歳以上の子や孫が父母や祖父母から受けた贈与には特例税率を使います。相続時精算課税を選ぶか、相続財産に加算される期間に入るかでも扱いが変わるため、贈る前に方法と時期を家族で確かめておくと安心です。
参考資料
- 財務省「発行条件」
- 財務省「個人向け国債についてのよくある質問(その他)」
- 財務省「個人向け国債の法人等への販売対象拡大について」
- 国税庁「個人向け国債の評価」
- 国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
- 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
- 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
- e-Gov法令検索「民法」
中本 智恵