今年も残り2カ月となりました。1年を振り返るには少し早過ぎるかもしれませんが、もうそんな季節が近づいたことは確かです。今年も新聞の社会面を賑わせた事件・事故が数多くありましたが、その1つが高齢者の運転による自動車事故です。
特に、4月に東池袋(東京)で起きた母娘死亡事故は大きな社会問題となり、現在も本質的な解決に至っていません。この2つは、全く無関係の人が巻き込まれる事故であり、とりわけ、幼い子供が巻き添えになって命を落としたことに対し、心を痛めずにはいられません。
ここ数年急増した印象が強い高齢者運転による事故
こうした最近の高齢者運転による事故を見る限り、故意でないのは当然として、過失とも言い難いケースが散見されます。具体的には、高齢による判断力の衰えのため、運転者本人は正常な意識を持っていたにもかかわらず、結果としては過失と見られる行動に繋がっていることです。
たとえば、本人は通常にブレーキを踏んだつもりでも、その反応が遅くなったため間に合わなかったことや、間違えてアクセルを踏んだことが挙げられます。
こうした高齢者の運転による自動車事故の問題は、3~4年前から急増してきた印象があります。一方で、自動車の性能という観点から見れば、衝突時の安全性は年々高まっており、また、高齢者にも運転しやすくなっているため、クルマそのものに原因があるとは考え難い状況です。
高齢者の運転による事故増発の背景には何があるのでしょうか?
運転免許保有者の100人に7人が75歳以上の高齢者、直近13年間で2.4倍増
ところで、高齢者が運転しているということは、当然ながら、運転免許を保有しているということです。そこで、高齢者の運転免許保有状況(警察庁資料)を見てみましょう。すると、昨今の高齢者による自動車事故が増えた要因を垣間見ることができます。
まず、「高齢者」の定義に関して、様々な見解はあるとは思いますが、ここでは一応、75歳以上としておきましょう。75歳以上の運転免許保有者は平成30年末で約564万人います。全保有者が8,231万人ですから、高齢者が占める割合は6.8%です。ザックリ言うと、運転免許保有者の100人に7人が高齢者ということになります。けっこう多いと感じた人も少なくないはずです。
さらに注目すべきは、その増加率です。実は、平成17年末における75歳以上の運転免許保有者は約237万人でした。つまり、この13年間で、高齢者の運転免許保有者が約2.4倍になっているのです。これはものすごい増加率と言っていいでしょう。なお、平成17年末の全保有者(約7,880万人)に占める割合は3.0%でした。