3. 申請前に知っておきたい注意点は3つ

自立支援医療(精神通院医療)を申請する前の3つの注意点3/4

自立支援医療(精神通院医療)を申請する前の3つの注意点

出所:厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」、北九州市「自立支援医療(精神通院医療)について」をもとにLIMO編集部作成

自立支援医療(精神通院医療)を申請する前に、知っておきたい注意点は以下の3つです。

3.1 1. 「世帯」は住民票ではなく医療保険で決まる

所得区分を判定する「世帯」は、住民票上の家族ではなく、同じ医療保険に加入している家族を指します。そのため、同居していても加入している健康保険が別であれば、制度上は別の世帯です。

たとえば、会社員の子どもと同居する親が国民健康保険に加入している場合、親の所得区分は子どもの所得と切り離して判定されます。

ただし受診者が18歳未満の場合は、保護者が別の医療保険に加入していても保護者の年収を確認するなど、取り扱いが異なることがあります。

3.2 2. 使えるのは登録した医療機関・薬局だけ

自立支援医療は、あらかじめ申請時に登録した「指定自立支援医療機関」や薬局でのみ利用できます。転院や利用する薬局の追加・変更は事前に、引っ越しで住所が変わった場合は速やかに、変更の手続きが必要です。

3.3 3. 受給者証は毎年の更新が必要

受給者証の有効期間は1年で、引き続き利用するには更新手続きをしなければなりません。医師の診断書は原則2年に1回の提出で、病状や治療方針に変化がなければ中間の年は省略できます。

なお、精神通院医療の対象は、精神疾患と、その精神疾患に起因して生じた病態に対して入院せずに行われる医療に限られる点も押さえておきましょう。同じ病院での受診であっても、風邪やけがなど精神疾患と関係のない治療は対象外です。

4. 年収基準の見直しと、2027年3月末の期限

低所得1の年収基準の推移と経過的特例の期限4/4

低所得1の年収基準の推移と経過的特例の期限

出所:厚生労働省「自立支援医療等における利用者負担区分の見直しについて」をもとにLIMO編集部作成

自立支援医療の所得区分や基準は、制度の見直しが続けられています。

4.1 低所得1の年収基準は年金額に合わせて見直し

低所得1の年収基準は、制度創設当時の障害基礎年金2級の支給額(2004年当時で年約79万5000円)に相当する額として、「年収80万円以下」に設定されました。

前出の厚生労働省の部会資料によると、この基準は年金額改定を踏まえ、2025年7月に「年収80万9000円以下」へ引き上げられています。

さらに同資料は、2025年の障害基礎年金2級の支給額が年約82万6500円となり80万9000円を上回ったとして、障害基礎年金2級を受け取る低所得1の人の自己負担額が変わらないよう基準を見直す方針を示しました。

2026年7月からは、年収約82万6500円以下が低所得1の基準です。2027年以降は、前年に支給された年金額をもとに基準額が計算されます。

4.2 「一定所得以上」の特例は2027年3月31日まで

市町村民税の所得割が23万5000円以上の「一定所得以上」の世帯は、本来、精神通院医療の対象になりません。ただし「重度かつ継続」に該当する人は、経過的特例として上限2万円で利用できる仕組みが設けられています。

この経過的特例の期限は、2027年3月31日まで延長されました。期限後の取り扱いは今後の動向に注意が必要です。

5. まとめにかえて|通院の負担は一人で抱えず窓口へ

自立支援医療(精神通院医療)を使うと、通院医療費の自己負担は原則1割になり、所得に応じた月額上限が設けられます。

月の医療費が2万円のケースでは、3割負担と比べて年4万8000円の負担軽減になる計算です。一方で、「世帯」の判定が医療保険の加入単位で決まることや、毎年の更新が必要なことなど、申請前に確認しておきたい実務上のポイントもあります。

心身の回復には、経済的な心配をできるだけ手放し、ご自身のペースで焦らず治療を続けることが何より大切です。

安心して療養に専念できる環境を整えるためにも、まずは主治医に制度を利用できるか相談し、市区町村の障害福祉窓口で必要な手続きを確かめてみてください。

熊谷 良子

世界メンタルヘルスデーは、心の健康について考え、正しい知識を広げるきっかけとなる日。

制度の名前を知っているかどうかで、治療を続けるときの負担感は大きく変わってくるものです。

自分が使う予定がなくても、家族や同僚、友人が通院を続けるか迷っているときに「こんな制度があるよ」と伝えられるだけで、大切な支えになることがあります。

上限額や所得区分の基準は見直しが続いているため、すでに利用している人も、更新のたびに受給者証の上限額を確かめておくと安心です。

参考資料