心療内科や精神科への通院が長く続くと、毎月の診察代や薬代が家計の負担となり、治療そのものへの不安につながってしまうことも少なくありません。

安心して療養を続けるためにぜひ知っておきたいのが、「自立支援医療(精神通院医療)」という制度です。

これを利用すると医療費の自己負担が原則1割になり、所得に応じて月2500円〜2万円などの上限額が設けられます。障害者手帳がなくても利用できる点も、この制度の特徴です。

10月10日の世界メンタルヘルスデーを前に、本記事では制度の仕組みと所得区分ごとの上限額、申請前に知っておきたい注意点、2025年以降の基準の見直しについて整理します。医療費の心配を和らげ、少しでも心穏やかに治療へ向き合うための情報としてお役立てください。

1. そもそも自立支援医療(精神通院医療)とは?

自立支援医療は、障害者総合支援法に基づく公費負担医療制度です。心身の障害の状態を軽くするための医療について、医療費の自己負担を軽減します。

このうち精神通院医療は、統合失調症やうつ病などの精神疾患(てんかんを含む)があり、通院による治療を続ける必要がある人が対象です。

対象となる医療には、外来での診察や投薬、精神科デイケア、精神科訪問看護などが含まれます。入院による医療は含まれません。

自立支援医療は医療保険が優先される仕組みです。医療保険の自己負担(3割など)と、制度上の自己負担額との差額を公費で負担します。

厚生労働省が2026年1月19日の社会保障審議会障害者部会に提出した資料「自立支援医療等における利用者負担区分の見直しについて」によると、精神通院医療の支給決定件数は令和5年度で約259万件でした。

2. 自己負担はいくら?所得区分ごとの月額上限

自立支援医療(精神通院医療)の自己負担上限月額(所得区分別)1/4

自立支援医療(精神通院医療)の自己負担上限月額(所得区分別)

出所:厚生労働省「自立支援医療等における利用者負担区分の見直しについて」等をもとにLIMO編集部作成

自己負担は原則として医療費の1割です。ただし所得に応じて1か月あたりの上限額が定められており、月の医療費の1割が上限額に満たない場合は、その1割の金額を負担します。

所得区分ごとの上限月額(原則/「重度かつ継続」に該当する場合)は以下のとおりです。

  • 生活保護(生活保護受給世帯):0円/0円
  • 低所得1(市町村民税非課税、本人の年収約82万6500円以下):2500円/2500円
  • 低所得2(市町村民税非課税、低所得1以外):5000円/5000円
  • 中間所得1(市町村民税所得割が3万3000円未満):医療費の1割または医療保険の高額療養費の自己負担限度額/5000円
  • 中間所得2(市町村民税所得割が3万3000円以上23万5000円未満):医療費の1割または医療保険の高額療養費の自己負担限度額/1万円
  • 一定所得以上(市町村民税所得割が23万5000円以上):対象外(医療保険の自己負担)/2万円(経過的特例)

低所得1の「年収」は、公的年金等の収入金額や合計所得金額などを合計した額を指します。基準額は2026年7月から約82万6500円以下に改められています(後述)。

「重度かつ継続」とは、統合失調症やうつ病、てんかんなど一定の疾患がある場合や、精神医療に一定以上の経験を持つ医師が判断した場合、医療保険で高額療養費の多数該当となる場合などを指します。

2.1 月の医療費が2万円なら、自己負担はいくら?

月の医療費が2万円の場合の窓口負担(試算)2/4

月の医療費が2万円の場合の窓口負担(試算)

出所:厚生労働省「自立支援医療等における利用者負担区分の見直しについて」をもとにLIMO編集部試算

たとえば、診察代と薬代を合わせた1か月の医療費の総額が2万円のケースで考えてみましょう。

医療保険の3割負担なら、窓口での支払いは6000円になります。自立支援医療を使って1割負担になれば、2000円で済む計算です。

中間所得1で「重度かつ継続」に該当する人の場合、1割の2000円は上限額の5000円を下回るため、窓口での負担は2000円にとどまります。3割負担のときと比べた差額は月4000円、12か月で4万8000円の負担軽減です。

熊谷 良子

自立支援医療について、「障害者手帳を持っていないと使えない」「仕事を休んでいる人のための制度」といった誤解をしていないでしょうか。実際には手帳の有無は問われず、働きながら通院している人も、継続的な通院治療が必要であれば対象になりえます。

通院が長くなるほど、医療費の差は積み重なっていくものです。「自分は対象になるのか分からない」という段階でも、まずは主治医に制度を使えるか尋ねてみてください。申請の窓口はお住まいの市区町村です。申請には指定の診断書が必要になるため、受診の際に「自立支援医療を使いたい」と伝えておくと手続きをスムーズに進められます。

医療費の心配が少しでも軽くなれば、治療を続けやすくなるのではないでしょうか。