仕事を辞めたあと、雇用保険の失業手当(基本手当)を受けながら次の仕事を探している人もいるでしょう。毎月まとまった額が振り込まれると、来年度の住民税や、住民税非課税世帯かどうかの判定に影響するのか気になるところです。

厚生労働省が2026年10月2日に公表した「雇用保険事業月報」によると、2026年8月に基本手当を受けた人(受給者実人員)は50万1447人でした。

この記事では、失業手当や傷病手当金が住民税非課税の判定に使う所得に入るのかと、ほかに収入がない人に必要な手続きを、国税庁と自治体の案内をもとに確認します。

なお、住民税非課税世帯に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド
【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド

1. 住民税非課税世帯は、前年の合計所得金額で判定する

住民税非課税世帯とは、世帯の全員に住民税の均等割と所得割がかからない世帯です。かかるかどうかは、前年1年間の所得をもとに市区町村が判定します。

1.1 住民税非課税の判定基準は3つ

例えば京都市では、次のいずれかにあてはまる人は、市・府民税の均等割も所得割もかかりません。

  • 1月1日時点で、生活保護法による生活扶助を受けている
  • 1月1日時点で障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下
  • 前年の合計所得金額が、同一生計配偶者と扶養親族がいない場合は45万円以下、いる場合は35万円×(1+同一生計配偶者と扶養親族の人数)+10万円+21万円以下

同一生計配偶者と扶養親族が1人いる場合は、35万円×2+10万円+21万円で101万円以下が目安です。

1.2 住民税は前年1年間の所得をもとに、翌年の6月から課税される

判定に使う所得の期間については、LIMOの記事「【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド」から要点を引用して確認しておきましょう。

住民税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間の所得に基づいて計算され、翌年の6月から課税(徴収)が始まります。したがって、今現在の収入がゼロであったとしても、「去年の収入」がボーダーラインを超えていれば、今年は課税世帯として扱われます。

出所:【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド

2. 雇用保険の失業手当や傷病手当金は、住民税非課税の判定に使う所得に入らない

退職した年に受け取ったお金のうち、雇用保険の失業手当は非課税所得です。住民税非課税の判定に使う合計所得金額には入りません。

2.1 雇用保険の求職者給付は、雇用保険法で課税しないと定められている

国税庁は、雇用保険法の規定に基づいて支給される求職者給付は失業等給付にあたり、同法第12条の規定により課税されないと説明しています。基本手当はこの求職者給付の一つです。

配偶者が求職者給付を受けている場合も、配偶者控除の対象になるかどうかを判定する合計所得金額に、その給付の額を含める必要はないとしています。

2.2 健康保険の傷病手当金も非課税所得とされている

病気やけがで休んでいる間に健康保険から支給される傷病手当金についても、国税庁は非課税所得で所得税は課されないとしています。京都市も、個人住民税の課税対象ではない所得の例として、雇用保険による失業手当、傷病手当、遺族年金、障害年金、児童手当などを挙げています。

住民税の判定に使う所得に入るもの・入らないもの1/2

給与・パートの収入や事業・不動産の収入は住民税の合計所得金額に含まれ、雇用保険の失業手当、健康保険の傷病手当金、遺族年金・障害年金、児童手当・児童扶養手当は非課税所得として含まれないことを示した表

出所:京都市「Q13 非課税所得にはどのようなものがありますか?」などを参考にLIMO編集部作成

2.3 退職した年の給与は、失業手当と違って所得に入る

注意したいのは、退職した年の1月から退職日までに受け取った給与です。給与は失業手当と違い、給与所得控除を差し引いた額が合計所得金額に入ります。

たとえば年の途中で退職し、その後は失業手当だけで暮らしていても、退職までの給与が多ければ、翌年度の住民税は課税されることがあります。

3. 雇用保険の基本手当の受給者は、2026年8月に50万1447人

失業手当を受けている人の数は、厚生労働省の雇用保険事業月報で毎月公表されています。2026年8月の基本手当(延長給付を除く)の受給者実人員は50万1447人で、前年同月の51万1692人を1万245人下回りました(LIMO編集部計算)。

雇用保険の基本手当の受給者実人員2/2

2025年8月から2026年8月までの雇用保険の基本手当の受給者実人員を示した棒グラフ。2026年6月が52万7476人で最も多く、2026年8月は50万1447人

出所:厚生労働省「雇用保険事業月報(2026年8月分)主要指標(2)」をもとにLIMO編集部作成

【基本手当の受給者実人員】

  • 2025年8月:51万1692人
  • 2025年9月:52万2596人
  • 2025年10月:50万2869人
  • 2025年11月:45万2954人
  • 2025年12月:45万9460人
  • 2026年1月:43万6434人
  • 2026年2月:41万2289人
  • 2026年3月:44万537人
  • 2026年4月:42万7673人
  • 2026年5月:44万6789人
  • 2026年6月:52万7476人
  • 2026年7月:52万1403人
  • 2026年8月:50万1447人

2026年8月に初めて基本手当を受けた人(初回受給者数)は9万3694人、基本手当の支給金額は693億3800万円でした。

雇用保険の失業手当や健康保険の傷病手当金は非課税所得で、住民税非課税世帯の判定に使う合計所得金額には入りません。翌年度の判定に影響するのは、退職するまでに受け取った給与などのほうです。

ただし、失業等給付を受けて生活し、ほかに収入がない人にも、収入がないことの申告が必要だとする自治体もあります。申告をしないと、課税・非課税証明書が交付できない場合があるため、住民税の申告の時期に市区町村の案内を確かめておきましょう。

ここからは、元自治体職員として国民健康保険の保険料を計算していた立場から、失業手当の扱いが制度によって変わる点と、退職後に申告や届出で確かめておきたいことを見ていきます。

太田 彩子

国民健康保険の保険料を計算していた頃、住民税の申告がない人は所得がわからず、保険料の軽減を判定できないことがありました。失業手当だけで暮らしている年も、収入がないことを申告しておくと、保険料の計算がスムーズに進みます。