「教育訓練給付金の対象になる資格の一覧がほしい」と考えて調べ始めた人は、多いはずです。ところが、厚生労働省の公表資料を確認すると、資格の名前を網羅した公式の一覧は見当たらず、対象は資格ではなく「講座」の単位で指定される仕組みになっています。
厚生労働省は、令和8年8月6日に、令和8年10月1日付けの指定講座を公表しました。専門実践教育訓練は、新規の指定が138講座で、給付の対象は合計3485講座です。特定一般教育訓練は、新規の指定が151講座で、給付の対象は合計1532講座になります。
本記事では、厚生労働省の公式情報をもとに、一般、特定一般、専門実践の3つの給付で、対象になる講座の性格がどう違うのかを整理します。あわせて、運転免許の扱い、対象講座の探し方、指定期間の確認の仕方も確認します。なお、個別の講座が対象かどうかは、ハローワークや講座の実施機関に確認してください。
1. 教育訓練給付金に「公式の資格一覧」はない。対象は講座単位で指定される
教育訓練給付金には、一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の3つの種類があります。それぞれ、対象となるのは「資格」そのものではなく、厚生労働大臣が指定した「講座」です。
同じ資格を目指す講座でも、実施している教育機関や講座の内容によって、指定を受けているものと、受けていないものがあります。「この資格は対象です」と一言で言い切れないのは、こうした仕組みのためです。
今回確認した厚生労働省の公表ページでは、資格名を並べた一覧を見つけることはできませんでした。公式の導線は、後ほど紹介する「教育訓練給付制度 検索システム」で、講座を探す形になっています。なお、一覧ページが存在しないと断定するものではなく、今回の調査で確認できなかったという意味です。
資格名だけを頼りに講座を選ぶと、対象外の講座を選んでしまうおそれがあります。受講を申し込む前に、その講座が指定を受けているか、指定期間内に受講が始まるかを確かめることが大切です。
2. 3つの給付で、対象になる講座の性格が違う
厚生労働省の案内によると、3つの給付は、想定している学びの性格が異なります。一般教育訓練は、その他の雇用の安定や就職の促進に資する教育訓練を対象にしています。
特定一般教育訓練は、特に労働者の速やかな再就職や早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象です。専門実践教育訓練は、中長期的なキャリア形成に資する教育訓練を対象にしています。
公式に例示されている資格や講座を見ると、性格の違いがつかみやすくなります。一般は、情報処理技術者資格、簿記検定、介護職員初任者研修などを目指す講座です。特定一般は、特定行為研修、介護支援専門員、大型自動車第一種免許などです。
専門実践は、介護福祉士、看護師、美容師、社会福祉士、保育士、歯科衛生士などの養成課程が例示されています。あわせて、専門学校の職業実践専門課程や、専門職大学院なども対象に含まれます。
2.1 【教育訓練給付金の3つの種類と、公式に例示されている対象】
前提条件:厚生労働省の公表資料・Q&Aの例示(2026年9月30日時点で確認)。例示はすべてを網羅したものではない1/2
出所:厚生労働省「教育訓練給付制度 一般教育訓練 Q&A」、厚生労働省「特定一般教育訓練の指定講座を公表しました」、厚生労働省「専門実践教育訓練の指定講座を公表しました」を基にLIMO編集部作成
- 一般教育訓練:その他の雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象で、情報処理技術者資格、簿記検定、介護職員初任者研修などが例示されています
- 特定一般教育訓練:特に速やかな再就職や早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象で、特定行為研修、介護支援専門員、大型自動車第一種免許などが例示されています
- 専門実践教育訓練:中長期的なキャリア形成に資する教育訓練が対象で、介護福祉士、看護師、美容師、社会福祉士、保育士、歯科衛生士などが例示されています
この表の例示は、あくまで公式ページに書かれているものです。ここに載っていない資格の講座が対象外というわけではなく、載っている資格でも、すべての講座が対象になるとは限りません。
3. 介護系の資格は3つの給付に分かれる:初任者研修は一般、介護支援専門員は特定一般、介護福祉士は専門実践
介護の仕事に関わる資格は、公式の例示を見ると、3つの給付に分かれて登場します。介護職員初任者研修は、一般教育訓練の例示に挙がっています。介護支援専門員は、特定一般教育訓練の例示です。介護福祉士は、専門実践教育訓練の例示に入っています。
同じ介護の分野でも、入り口の資格から、国家資格である介護福祉士まで、段階に応じて給付の種類が変わるということです。どの段階の講座を受けるかによって、給付の考え方も、事前の手続きも異なります。
実務者研修については、今回確認した公式ページで、どの給付に当たるのかを確認できませんでした。受講を考えている場合は、検索システムで講座を探し、講座の詳細ページに書かれている給付の種類を確認してください。
介護分野で学び直す場合は、資格の段階ごとに、公式の例示がどの給付に入っているかを、最初に見ておくと計画を立てやすくなります。ただし、例示は代表的なものにとどまるため、個別の講座は、検索システムで確認してください。
4. 運転免許は対象外と思われがちだが、特定一般には大型自動車第一種免許が例示されている
教育訓練給付金で運転免許は対象になるのか、という疑問も、検索されやすい点です。厚生労働省が公表した特定一般教育訓練の指定講座のページには、「大型自動車第一種免許」が例示として挙がっています。
また、厚生労働省の別のページでは、建設分野の資格取得や技能講習、自動車運転免許講習を実施する教育訓練施設が、特定一般教育訓練の対象として言及されています。運転免許が、特定一般の対象講座に含まれる場合があることが読み取れます。
一方で、普通自動車免許や大型自動車第二種免許などの扱いは、今回確認した公式ページでは分かりませんでした。一般教育訓練で運転免許が対象になるかどうかも、同じく確認できませんでした。
運転免許は、職業との結びつきの強さなどによって扱いが分かれる可能性があります。取得したい免許の種類ごとに、対象の講座があるかどうかを、検索システムやハローワークで確かめてください。
5. 【編集者の視点】
資格の一覧を探す人の多くは、「自分の目指す資格は対象になるのか」を、短い時間で知りたいと考えています。ところが、制度の単位が講座であるため、資格名だけでは答えを出せません。この食い違いが、検索しても分かりにくい原因になっています。
一覧を探し回るより、目指す資格の講座が指定を受けているかを、検索システムで確かめるほうが、確実で早い方法です。公式に一覧がないことを知っておくだけで、無駄な調べものを減らせます。
6. 特定一般教育訓練の中身:令和8年10月1日時点の1532講座の内訳
厚生労働省が公表した令和8年10月1日時点の特定一般教育訓練は、合計1532講座です。このうち、令和8年10月1日付けで新たに指定されたのは151講座で、特定行為研修や介護支援専門員などが含まれます。
類型別に見ると、最も多いのは、業務独占資格、名称独占資格、または必置資格の取得を目標とする養成課程です。新規が139講座、累計が1449講座で、全体の約94.6%を占めます。
残りは、情報通信技術資格取得課程が累計15講座、職業実践力育成プログラムが累計66講座、技能検定等合格課程が累計2講座です。全体に占める割合は、それぞれ約1.0%、約4.3%、約0.1%になります。
6.1 【特定一般教育訓練の類型別の指定講座数(令和8年10月1日時点)】
- 業務独占資格等の養成課程:新規指定は139講座、累計は1449講座で、構成比は約94.6%です
- 情報通信技術資格取得課程:新規指定は2講座、累計は15講座で、構成比は約1.0%です
- 職業実践力育成プログラム:新規指定は8講座、累計は66講座で、構成比は約4.3%です
- 技能検定等合格課程:新規指定は2講座、累計は2講座で、構成比は約0.1%です
この表から言えるのは、特定一般教育訓練の大半が、国家資格などの資格を取るための養成課程だという点です。情報通信技術の資格や、職業実践力を育てるプログラムは、あわせても全体の約5%にとどまります。
「特定一般で、パソコンやデザインのスキルを学べる講座を探したい」という人は、対象の講座が少ないことを、前提に置いておくと期待外れを防げます。その場合は、一般教育訓練や専門実践教育訓練の講座も含めて、幅広く検索してください。
7. 専門実践教育訓練:看護師や介護福祉士などの養成課程が中心
専門実践教育訓練の令和8年10月1日時点の給付対象は、3485講座です。厚生労働省の公表ページには、看護師や介護福祉士などの資格取得を目標とする養成課程が含まれると記載されています。
公式のQ&Aによると、対象は、業務独占資格や名称独占資格の取得を訓練目標とする講座、専門学校の職業実践専門課程、専門職大学院など、中長期的なキャリア形成に資するものです。
令和8年10月1日時点の3485講座は、前年の同じ時点から185講座増えています。一方で、10月1日付けで新たに指定された講座は、前年の162講座から138講座に減りました。総数が増えた分の一部は、4月1日付けの新規指定などによるものと考えられますが、4月分の新規指定数は今回確認していません。
専門実践のうち、業務独占資格や名称独占資格などの取得を目標とする養成課程は、講座全体の約56%を占めます。看護師や介護福祉士のような資格を目指す場合は、対象になる講座を見つけやすい分野だといえます。
専門実践教育訓練の給付は、一般や特定一般に比べて、受講する期間が長く、手続きも多くなります。給付率や上限額の詳しい話は、【教育訓練給付金】給付率は20%・40%・50%の3段階から。「最大80%」に届くのはどんな人?年間上限は64万円もあわせてご覧ください。
8. 対象講座の探し方:検索システムで「指定期間」まで確かめる
対象講座は、厚生労働省の「教育訓練給付制度 検索システム」で探せます。ハローワークでも閲覧できます。画面には「令和8年9月18日時点の情報」と表示されており、情報は定期的に更新されています。
検索の方法は、フリーワードで探す方法と、分野や資格名を指定して探す詳細画面の2つです。目指す資格が決まっている場合は、資格名から探し、決まっていない場合は、分野から探すと見つけやすくなります。
講座が見つかったら、その講座の「詳細を見る」のページで、「指定期間」の欄を確認してください。給付の対象になるには、受講を開始する日が、この指定期間内にある必要があります。
検索システムの絞り込み条件の全項目や、一般、特定一般、専門実践の区分で絞り込めるかどうかは、今回の調査では確認できませんでした。操作の詳細は、ハローワークの窓口や、システムの案内で確認してください。
9. 講座が見つかったら次にやること:事前の手続きは給付の種類で異なる
対象の講座が見つかっても、申し込む前にやることが残っています。特定一般教育訓練と専門実践教育訓練では、受講の前に、キャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードを作成する必要があります。
特定一般教育訓練では、受講開始日の2週間前までに、ハローワークで手続きをする必要があるとされています。専門実践教育訓練も、事前の手続きが必要です。日程に余裕を持って動くことが大切です。
一般教育訓練については、公式のQ&Aで、同じ事前手続きの記載を確認できませんでした。必要かどうかは、受講する講座と、ご自身の状況によって異なる可能性があるため、ハローワークで確かめてください。
資格の名前ではなく、講座を先に探し、指定期間を確かめ、事前の手続きの要否を確認する。この順番を意識すると、申し込んだあとで対象外だったと気づくことを避けられます。
10. 年2回の入れ替わり:4月1日付けと10月1日付けの指定に注意
指定講座は、毎年4月1日付けと10月1日付けで入れ替わります。令和8年10月1日付けの入れ替えでは、専門実践で138講座、特定一般で151講座が、新たに指定されました。
公表のタイミングと、指定の効力が生じる日は異なります。令和8年10月1日付けの指定は、8月6日に公表されましたが、効力が生じるのは10月1日です。公表されたからといって、すぐに給付の対象になるわけではありません。
指定が取り消される講座もあります。以前に調べたときは対象だった講座が、現在は対象外になっている可能性もあります。受講を申し込む直前に、必ず検索システムで、最新の情報を確認してください。
※本記事は、編集部が厚生労働省が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
11. 【編集者の視点】
制度の対象は、資格ではなく講座であり、その講座には有効な指定期間があります。この2点を頭に置くだけで、情報収集の効率がかなり変わります。「この資格は対象ですか」と聞く代わりに、「この講座は、いつからいつまで指定されていますか」と確かめる習慣が有効です。
特定一般の類型は、国家資格などの養成課程に偏っています。運転免許のように意外な講座が含まれる一方で、対象の範囲は限られています。希望する分野に対象講座がない場合は、一般や専門実践も含めて選択肢を広げるのが現実的です。
本記事の内容は、教育訓練給付金の対象講座を理解するための一般的な目安です。個別の講座が対象になるか、受給できるかは、雇用保険の加入状況や受講開始日などの個別事情に応じて、ハローワークが判断します。実際の手続きは、管轄のハローワークに確認することをおすすめします。
12. まとめ
教育訓練給付金には、公式の資格一覧は確認できず、対象は講座単位で指定されます。一般、特定一般、専門実践の3つの種類ごとに、想定する学びの性格が異なります。公式の例示は、一般が簿記検定や情報処理技術者資格、特定一般が特定行為研修や大型自動車第一種免許、専門実践が看護師や介護福祉士などです。
令和8年10月1日時点の特定一般は1532講座で、約94.6%が業務独占資格などの養成課程です。専門実践は3485講座です。対象講座は、検索システムで探し、詳細ページの指定期間を確認します。
指定は年2回入れ替わり、取り消される講座もあります。申し込みの直前に、最新の情報を確かめてください。個別の講座が対象かどうかは、ハローワークに確認するのが確実です。
13. よくある質問
13.1 Q. 教育訓練給付金の対象になる資格の一覧はありますか?
今回確認した厚生労働省の公表ページでは、資格を網羅した一覧は見つかりませんでした。対象は講座単位で指定されるため、検索システムで講座を探します。
13.2 Q. 運転免許は教育訓練給付金の対象になりますか?
特定一般教育訓練の例示に、大型自動車第一種免許が挙がっています。普通自動車免許などの扱いは、確認できませんでした。免許の種類ごとに、対象の講座があるかを確認してください。
13.3 Q. 一般教育訓練の対象には、どんな講座がありますか?
公式の例示は、情報処理技術者資格、簿記検定、介護職員初任者研修などを目指す講座です。
13.4 Q. 特定一般教育訓練の講座は、どのくらいありますか?
令和8年10月1日時点で1532講座です。このうち約94.6%が、業務独占資格などの養成課程です。
13.5 Q. 専門実践教育訓練の対象には、どんな資格がありますか?
公式の例示は、介護福祉士、看護師、美容師、社会福祉士、保育士、歯科衛生士などです。専門学校の職業実践専門課程や、専門職大学院も対象に含まれます。
13.6 Q. 対象講座は、どこで探せますか?
厚生労働省の教育訓練給付制度 検索システムで探せます。ハローワークでも閲覧できます。詳細ページの「指定期間」の欄も確認してください。
13.7 Q. 指定講座は、いつ入れ替わりますか?
毎年4月1日付けと10月1日付けの年2回です。令和8年10月1日付けは、8月6日に公表されました。
13.8 Q. 以前に対象だった講座は、今も対象ですか?
指定が取り消される講座もあります。受講の申し込み前に、検索システムで最新の情報を確認してください。
13.9 Q. 受講開始日が指定期間の外の場合は、どうなりますか?
給付の対象になるには、受講開始日が指定期間内にある必要があります。指定期間外の場合の詳しい扱いは、ハローワークに確認してください。
参考資料
- 厚生労働省「教育訓練給付制度 一般教育訓練 Q&A」
- 厚生労働省「特定一般教育訓練の指定講座を公表しました」
- 厚生労働省「専門実践教育訓練の指定講座を公表しました」
- 厚生労働省「教育訓練給付制度 専門実践教育訓練 Q&A」
- 厚生労働省「教育訓練給付金の講座指定について」
- 厚生労働省「教育訓練給付制度 検索システム」
齊藤 慧
