60歳以降も再雇用で働き続けたら給与が下がった、親の介護のためにしばらく仕事を休まなければならない。こうした場面で雇用保険から支給されるのが「雇用継続給付」です。

厚生労働省によると、2026年8月1日から雇用継続給付の支給限度額が変更され、高年齢雇用継続給付の支給限度額は38万6922円から39万7369円に、介護休業給付金の支給上限額は35万6574円から36万6222円に引き上げられました。

本記事では、雇用継続給付のうち「高年齢雇用継続給付」と「介護休業給付」について、2026年8月1日からの限度額と、それぞれの対象者・支給額を解説します。

1. 雇用保険の「雇用継続給付」とは?2026年8月1日から支給限度額が変わった

雇用継続給付は雇用保険の給付のひとつで、ハローワークインターネットサービスでは「高年齢雇用継続給付」と「介護休業給付」の2つを案内しています。

1.1 高年齢雇用継続給付と介護休業給付は、対象になる場面が違う

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の方が、60歳到達時等に比べて賃金が75%未満に下がった状態で働き続ける場合に支給されます。

介護休業給付は、雇用保険の被保険者が家族を介護するために介護休業を取った場合に支給されます。どちらも、原則として事業主を通してハローワークに申請します。

1.2 支給限度額や賃金月額の上限は毎年8月1日に改定される

高年齢雇用継続給付と介護休業給付の支給限度額などは、毎月勤労統計の平均定期給与額の増減をもとに、毎年8月1日に改定されます。厚生労働省「令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について」から、変更前と変更後の額を確認しましょう。

雇用継続給付の支給限度額などは2026年8月1日から引き上げられた1/3

雇用継続給付の支給限度額などは2026年8月1日から引き上げられた

出所:厚生労働省「高年齢雇用継続給付金・介護休業給付金・育児休業等給付の受給者の皆さまへ」をもとにLIMO編集部作成

【高年齢雇用継続給付】(2026年8月1日以後の支給対象期間から変更)

  • 支給限度額:38万6922円→39万7369円
  • 最低限度額:2411円→2562円
  • 60歳到達時等の賃金月額の上限額:50万8200円→52万2000円
  • 60歳到達時等の賃金月額の下限額:9万420円→9万6090円

【介護休業給付金】

  • 支給上限額:35万6574円→36万6222円
  • 休業開始時の賃金月額の上限額:53万2200円→54万6600円
  • 休業開始時の賃金月額の下限額:9万420円→9万6090円

ハローワークのパンフレットによると、これらの額は2027年7月31日までの額です。※賃金月額が上限額を超える方(下限額を下回る方)は、上限額(下限額)を用いて支給額が計算されます。

2. 高年齢雇用継続給付の対象者と支給額は?2025年4月以降に60歳になった方は最大10%

高年齢雇用継続給付には、基本手当(いわゆる失業給付)を受けずに働き続ける方が対象の「高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当を受けたあとに再就職した方が対象の「高年齢再就職給付金」の2種類があります。

2.1 高年齢雇用継続給付の対象になるのは「60歳以上65歳未満・被保険者期間5年以上」の方

ハローワークのパンフレット「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」では、次の要件をすべて満たすことが必要とされています。

  • 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
  • 被保険者であった期間が5年以上あること
  • 原則として、60歳以後の賃金(みなし賃金)が60歳時点の75%未満となっていること
  • 高年齢再就職給付金については、再就職の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること

高年齢再就職給付金は、同じ就職について再就職手当を受けた場合には支給されません。どちらか一方を選ぶことになります。

2.2 高年齢雇用継続給付の支給率は2025年4月1日から「最大15%」が「最大10%」になった

厚生労働省のリーフレット「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」によると、2025年4月1日以降に60歳に達した方の支給率は次のとおりです。

  • 賃金の低下率が64%以下:各月に支払われた賃金額の10%
  • 賃金の低下率が64%超75%未満:10%から0%の間で、低下率に応じて設定される率
  • 賃金の低下率が75%以上:不支給

2025年3月31日以前に60歳に達した方は、これまでどおり最大15%(低下率61%以下で15%)です。※その日時点で被保険者であった期間が5年に満たない方は、5年を満たすこととなった日で判定されます。

2.3 賃金月額30万円の方が月18万円に下がると、支給額は月1万8000円

支給額は、60歳到達前6か月間の平均賃金(賃金月額)に対して、各月の賃金がどこまで下がったかで決まります。パンフレットに載っている、賃金月額が30万円の方の支給額の例を見てみましょう(2025年4月1日以降に60歳に達した方の支給率)。

賃金が60歳到達時の75%未満に下がった月だけ支給される2/3

賃金が60歳到達時の75%未満に下がった月だけ支給される

出所:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」をもとにLIMO編集部作成

  • 支払われた賃金が26万円:75%未満に下がっていないため不支給
  • 支払われた賃金が20万円(低下率66.67%):1万4545円
  • 支払われた賃金が18万円(低下率60%):1万8000円

各月の賃金が39万7369円以上の場合は支給されません。賃金と給付金の合計が39万7369円を超える場合は、39万7369円から賃金を差し引いた額が支給されます。

また、計算した支給額が2562円以下のときも支給されません。

2.4 高年齢雇用継続基本給付金は「65歳に達する月まで」支給される

高年齢雇用継続基本給付金の支給期間は、60歳に達した月から65歳に達する月までです。各暦月の初日から末日まで被保険者であることが必要です。

高年齢再就職給付金は、再就職日の前日における基本手当の支給残日数が200日以上なら2年、100日以上200日未満なら1年です。いずれも65歳に達した月が限度になります。

3. 介護休業給付の対象者と支給額は?休業開始時の賃金の67%が93日分まで

介護休業給付は、家族を介護するための休業中に、休業前の賃金の一部を雇用保険から支給するものです。ハローワークのパンフレット「介護休業給付の内容及び支給申請手続について」から、要件と支給額を確認します。

3.1 介護休業給付の対象は、休業開始前2年間に12か月以上働いた被保険者

介護休業給付の支給対象になるのは、次の要件を満たす雇用保険の被保険者(一般被保険者・高年齢被保険者)です。

  • 介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12か月以上あること(11日以上の月が12か月ない場合は、賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として数える)
  • 負傷や疾病などにより、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある家族を介護するための休業であること
  • 休業の初日と末日を明らかにして事業主に申し出て、実際に取得した休業であること

対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。※介護休業を始める時点で、休業終了後に離職することが予定されている方は対象になりません。

3.2 介護休業給付金は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で計算する

介護休業給付金の支給額は、原則として「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です。休業開始時賃金日額は、原則として介護休業開始前6か月間の賃金を180で割った額です。

  • 支給日数:1か月ごとの期間は30日、休業終了日を含む期間はその期間の日数
  • 賃金月額(賃金日額×30日)の上限:54万6600円
  • 1支給対象期間(1か月ごとの期間)あたりの上限額:36万6222円
  • 賃金月額の下限:9万6090円

たとえば、休業開始前6か月間の賃金が合計180万円(月30万円)の方なら、賃金日額は1万円で、30日分の支給額は1万円×30日×67%=20万1000円と計算できます。

休業中に会社から賃金が支払われ、賃金と給付金の合計が賃金月額の80%を超える場合は、超えた分が減額されます。1か月の期間中に就業している日が10日を超える場合も支給されません。

3.3 介護休業給付金は同じ家族について93日まで、3回に分けて受け取れる

介護休業給付金は、同じ家族について93日を限度に、3回まで支給されます。1回の介護休業期間は最長3か月です。

パンフレットでは、6月1日から7月31日まで61日分を受給したあと、同じ家族について9月1日から10月2日まで32日分を受給し、通算93日になる例が紹介されています。

和田 直子

60歳以降の働き方や家族の介護は、家計の収入が変わるきっかけになります。高年齢雇用継続給付と介護休業給付はどちらも事業主を通して申請するため、対象になりそうなときは早めに勤務先に伝え、支給額の目安を確認しておくと安心です。