3. 税金の支援|障害者控除で年間いくら軽くなる?

毎年の負担に直結する、所得税と住民税の障害者控除から確認します。

3.1 控除額は27万円・40万円・75万円(所得税)

所得税の障害者控除は、障害者で27万円、特別障害者で40万円、同居特別障害者で75万円です。

住民税では、それぞれ26万円、30万円、53万円が控除されます。

障害者控除の金額(所得税・住民税)1/4

障害者控除の金額(所得税・住民税)

出所:国税庁「No.1160 障害者控除」、葛飾区「住民税の障害者控除」、広島市「税負担の軽減(障害者)」をもとにLIMO編集部作成

同居特別障害者は、本人ではなく、同居している配偶者や扶養親族が特別障害者に当たる場合の区分です。

家族に障害のある人がいる場合も、控除の対象になることがあります。

3.2 税金はいくら軽くなる?税率別のイメージ

控除は、課税される所得を減らす仕組みのため、軽くなる税額は「控除額×税率」で目安を計算できます。

所得税の税率は、課税所得が195万円以下で5%、195万円超330万円以下で10%、330万円超695万円以下で20%です。

住民税の税率を一律10%として試算すると、障害者は所得税率5%で3.95万円、10%で5.3万円、20%で8万円の軽減になります。

特別障害者は、所得税率5%で5万円、10%で7万円、20%で11万円です。

同居特別障害者は、所得税率5%で9.05万円、10%で12.8万円、20%で20.3万円と、軽減額がさらに大きくなります。

障害者控除による税金の軽減額のイメージ(年間)2/4

障害者控除による税金の軽減額のイメージ(年間)

出所:国税庁「No.1160 障害者控除」、国税庁「所得税の税率とは」、葛飾区「住民税の障害者控除」をもとにLIMO編集部作成

なお、この金額は復興特別所得税や住民税の均等割を考慮しない試算です。

課税所得が控除額に満たない場合などは、実際の軽減額が小さくなることがあります。

3.3 控除は「申告」しないと反映されない

障害者控除は、会社員なら年末調整、自営業やフリーランスなら確定申告で申告して初めて、税額に反映されます。

本人だけでなく、同一生計の配偶者や扶養親族に障害のある人がいる場合も、同じ手続きで控除を受けられる可能性があります。

手帳の種類や等級によって、控除の区分が変わるため、申告前に手帳の記載を確認しておきましょう。

4. 暮らしの支援|NHK受信料・JR・高速道路の割引

続いて、毎月・毎年の支出を直接抑えられる、暮らしの割引制度を見ていきます。

暮らしの支出が軽くなる主な制度と金額の目安3/4

暮らしの支出が軽くなる主な制度と金額の目安

出所:横浜市「NHK受信料の免除」、NHK受信料の窓口「受信料額」、横浜市「鉄道運賃の割引」、NEXCO中日本「有料道路における障がい者割引制度についてのご案内」をもとにLIMO編集部作成

4.1 NHK受信料|全額免除なら年1万3200円が0円に

横浜市の案内によると、NHK受信料の免除には、全額免除と半額免除があります。

全額免除は、身体障害者手帳、療育手帳(横浜市では「愛の手帳」)、精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持つ人がいる世帯で、世帯の全員が市民税非課税の場合が対象です。

半額免除は、視覚障害または聴覚障害のある人、そのほか身体障害者手帳1・2級、重度の知的障害、精神障害者保健福祉手帳1級の人が、世帯主かつ受信契約者である場合が対象です。

NHKの案内では、地上契約の受信料は2か月で2200円で、12か月分では1万3200円です。

この金額をもとにすると、全額免除なら年1万3200円が0円に、半額免除なら年6600円の軽減になります。

免除を受けるには、お住まいの市区町村の窓口で、申請書に証明を受けてからNHKに申請する手続きが必要です。

4.2 JR運賃|第1種なら片道100km超の乗車券が5割引

JRの運賃割引では、手帳に「第1種」または「第2種」の割引種別が表示されている人が対象になります。

JR東日本の案内として紹介されている内容では、第1種の人は、片道100kmを超える区間の普通乗車券が5割引になります。

本人が12歳以上で介護者と一緒に乗る場合は、距離の制限がなく、本人と介護者の両方が5割引になる扱いもあります。

割引の条件は、手帳の種類や区分によって異なるため、利用前に駅の窓口などで確認しましょう。

4.3 高速道路料金|ETCの事前登録で半額

NEXCO中日本の案内では、障がい者割引を利用すると、高速道路料金が通常料金(ETC利用時はETC通常料金)の半額になります。

本人が運転する場合は身体障害者手帳を持つ人が対象で、介護者が運転する場合は、身体障害者手帳または療育手帳を持つ重度の人が対象です。

利用するには、市区町村の福祉窓口やオンラインでの事前登録が必要です。

精神障害者保健福祉手帳については、NEXCO中日本の案内に記載がないため、対象かどうかは事業者に確認してください。

和田直子
障害者手帳に関する制度は、税金、受信料、交通、貯蓄とそれぞれ窓口も条件もばらばらで、「手帳があればすべて自動で適用される」わけではない点が、分かりにくさの原因のように感じます。

とくに税金の控除は、自分で申告しなければ反映されません。年末調整の書類を出す前に、手帳の種類と等級を確認し、どの区分に当たるのかを書き出しておくのがおすすめです。

また、家族に障害のある人がいる場合は、本人だけでなく扶養している家族の分も控除の対象になる可能性があります。「自分には関係ない」と決めつけず、一度確認してみましょう。

5. 将来の備え|相続税・贈与税・マル優の特例

最後に、将来のお金にかかわる税制上の特例を確認します。

将来のお金に関わる主な税制上の特例4/4

将来のお金に関わる主な税制上の特例

出所:国税庁「障害者と税」、ゆうちょ銀行「非課税対象者公的書類一覧」をもとにLIMO編集部作成

5.1 相続税の障害者控除|50歳なら350万円

国税庁によると、相続人が障害者の場合、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)が、相続税額から差し引かれます。

たとえば、相続人が50歳であれば、85歳までは35年あるため、障害者は350万円、特別障害者は700万円の控除になります。

5.2 贈与税の非課税|特別障害者は6000万円まで

特定障害者扶養信託の仕組みを使うと、特別障害者である特定障害者は6000万円まで、それ以外の特定障害者は3000万円まで、贈与税がかかりません。

家族が障害のある人のために、まとまった財産を残したいときに検討される制度です。

5.3 マル優|元本350万円まで利子が非課税

障害者などを対象にした「マル優」では、元本350万円までの預貯金などの利子が非課税になります。

ゆうちょ銀行の案内では、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人などが対象とされています。

利用には、金融機関の窓口で手帳などの書類を示す手続きが必要です。

6. 申請前に確認したい3つの注意点

ここまでの制度を使うときは、次の3点に注意しておきましょう。

1つ目は、手帳の種類や等級によって、対象かどうかや金額が変わる点です。

2つ目は、NHK受信料の免除やJRの割引、自治体の助成などは、お住まいの地域や事業者によって、条件や手続きが異なる点です。

3つ目は、税金の控除や特例は、申告や手続きをしなければ適用されない点です。

制度の内容や金額は、今後変更される可能性もあるため、最新の情報は税務署、市区町村の窓口、各事業者で確認してください。

7. まとめ

障害者手帳で受けられるお金の支援は、「税金」「暮らしの割引」「将来の備え」の3つに整理できます。

税金では、障害者控除が所得税で27万円・40万円・75万円、住民税で26万円・30万円・53万円で、税率別の試算では年間3.95万円から20.3万円ほど軽くなる場合があります。

暮らしの割引では、NHK受信料の全額免除で年1万3200円、半額免除で年6600円の軽減になるほか、JRや高速道路にも割引があります。

将来の備えとして、相続税の障害者控除や贈与税の非課税、マル優といった特例も用意されています。

条件や手続きは制度ごとに異なるため、手帳の種類と等級を確認したうえで、年末調整や各窓口で漏れなく申請しましょう。

【免責事項】

  • 本記事は、障害者手帳に関する一般的な制度の解説であり、個別の事情に対する税務・法律上の助言ではありません。
  • 控除額や軽減額の試算は、一定の前提にもとづく目安です。実際の適用の可否や金額は、税務署、市区町村、各事業者、税理士などの専門家にご確認ください。

参考資料

和田 直子