メモリー半導体大手の米マイクロンテクノロジー(Micron Technology)が、事業展開の生命線となる技術開発で存在感を強めている。DRAMでは1Znm世代で業界をリードする立場にあるほか、3D-NANDでは128層世代でRG(Replacement Gate)の新技術採用にチャレンジする。現地24日に米国サンフランシスコで開催されたプライベートイベント「Micron Insight 2019」でも、技術面での優位性をアピールした。
1Znmの量産開始をアナウンス
マイクロンのDRAM技術開発は、経営破綻した国内大手のエルピーダメモリ(現・マイクロンメモリ ジャパン)を傘下に収めて以降、大きく変わってきた印象だ。エルピーダの買収以降、DRAMのプロセス技術の開発については、広島工場と本社のあるボイジとのプロセス開発機能のインテグレーションを進めてきた。
エルピーダの技術がベースとなっていた20nmは、旧イノテラメモリーズの主力工場であった台湾・桃園工場へのプロセス移管を行い、これが旧エルピーダとボイジの初めての協業成果となった。その後、1Xnm以降はプロセス開発の体制を一本化したことから、効率化が進んだとみられ、競合メーカーとの微細化競争に関してもまったく引けを取らないレベルまで到達してきた印象だ。
こうしたなかで、19年度第4四半期(6~8月)から初期量産を開始した1Znm世代は、他社を上回るペースで進捗しているといえる。量産を開始したのは16Gb品(DDR4/LPDDR4)で、すでに顧客認定を一部で取得しており、Vice President兼Process Research and Development Operationsの任にあるScott Gatzemeier氏は、競合他社との技術ギャップについて「かなりキャッチアップできている」と自信を見せる。
さらに、1Znm以降の技術開発も複数世代にわたって進めており、1αnm は歩留まり改善に努めているほか、1βnmはプロセスインテグレーションの最中にある。1γnmについては現在、アーキテクチャーの検討を進めているところだという。
ちなみにマイクロンは以前からDRAMへのEUVリソグラフィー技術の適用について、1βnmまでは使う予定がないと明言している。EUVに比べてArF液浸+マルチプルパターニングの方がプロセスコストを低く抑えることができるとしており、当面は採用を見送る考えだ。
128層でRG技術を新たに採用
3D-NANDにおいては96層世代の量産を開始。技術開発レベルでは128層世代に取り組んでいる。同社の3D-NANDは他社と異なり、FG(Floating Gate)ベースであり、128層世代からCT(Charge Trap)方式のRG技術を採用する見通しだ。もともと、同社はFGベースの利点を生かし、ロジック回路をメモリーセル直下に置くCUA(CMOS Under Array)技術を採用しているが、RG採用の128層世代以降もCUA技術を継続して採用する方針であり、技術的にはここが大きな挑戦となる見通しだ。
また、ストレージクラスメモリー(SCM)の3D-Xpoint(3DXP)については、インテルとの提携を解消し現在単独の事業体制に移行している。データセンターでのAIおよびディープラーニングの進展に伴い、電力消費の低減が強く求められるようになってきている。同社では今回、新たにデータセンター向けSSDとして、「X100」を製品化。同社ブランドとしては初の3DXP応用製品を発表した。
X100は805GBの搭載容量で、最大250万のIOPSを実現。現時点で他社SSDに比べて3倍以上の速度を達成している。また、メモリーに3DXPを搭載し低遅延であることも特徴の1つで、NANDベースのSSDに比べて11倍優れた読み書きを実現している。
ひと昔前のマイクロンとは違う
ひと昔前のマイクロンといえば、日韓の競合他社に比べて、技術開発で遅れを取っている印象があった。しかし、エルピーダの買収、そしてSanjay Mehrotra氏をはじめとする経営陣の刷新以降、明らかに技術力で競合他社に肩を並べるまでに成長してきた。特にDRAMに関しては業界内でも「1Znmで他社をリードできるかもしれない」といった声も多く聞かれるようになってきており、今後技術力をてこに市場シェアの変動などが十分に起こりうる状況となってきた。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳