親の言うことをなんでも聞く、どんなときも真面目に勉強する、そして成績はトップクラス…。わが子に対して「そんな子どもに育ってほしい」と考えている人も多いのではないでしょうか。

ところが、その思いが強すぎて子どもに負担をかけているケースも珍しくありません。よかれと思って行なった努力が、「教育虐待」になっている可能性も。いま一度、子どもとの接し方を振り返ってみましょう。

親のいうことを聞きすぎる子どもも危ない?

「うちの子は素直で助かる」「親の指示に子どもが従っているだけだから虐待ではない」と安心してはいませんか?一見良好な親子関係でも、子どもは目に見えぬ不安や圧力を感じているかもしれません。以下の項目に当てはまる方は、子どもが何も言えない状況になっている可能性があります。

・受験校は親が決めた
・両親、もしくはどちらかが厳しく指導している
・「こんな問題も解けないの?」と責めることがある
・他の家庭の進路状況が気になる
・「自分の理想の人生を子どもに歩んでほしい」と考えている
・「親は子どものために常に寄り添い、助言すべきだ」と考えている

ここで抑えておきたいのは、「なぜ子どもが親の指示に従うのか」という点です。素直な性格だから、親の意見に納得しているからという理由ではなく、「親が怖いから」「怒られたくないから」という考えで従っているのかもしれません。

このような状況が続くと、子どもが自立できない、反抗期にうまく反抗できず行動や健康面に支障が出るといったデメリットが発生します。

ときには子どもの考えや意見を尊重し、ある程度の自由を与えてみては。親にとっても、「こう育てなければ」というプレッシャーから解放されるメリットが得られるでしょう。

「教育虐待」が起きやすい家庭とは

では、どのような家庭に「教育虐待」が起こりやすいのでしょうか。実際に教育虐待を目の当たりにした方々に、その状況を聞いてみました。

・「同じ小学校に通っていた友人が、『親が勧めるから』という理由で中学受験をしました。お父さんの厳しい指導により、なんとか志望校に合格。しかし、父親に言われた通りに入部した野球部では万年補欠、友達もほとんど作れず、会うたびに『学校が楽しくない』と言っていました。結局は公立の中学校に戻ることになったのですが、『他の親の目が気になるから』と学区外の学校に通っていましたよ」

・「知り合いのママが『女の子はピアノとバレエを習うべき』と考えているらしく、娘に週4で通わせています。本人は『水泳がしたい』『ピアノはもういい』と言っていましたが、聞き入れてもらえない様子。泣きながら通っている姿も目にします。それなのに、『そろそろ週5に増やそうかしら』と言っているママ…。さすがに、ちょっとやりすぎなのでは?」

・「幼児教育の教室に通いつめていたものの、お受験に失敗してしまった知り合いがいます。両親は落胆し、子どもはしょっちゅう『ママ、ごめんね』と謝っていましたよ。最近では、『今度こそ!』と中学受験に向けて進学塾に通い始めたそうです。わが子から聞いた話では、『お勉強しないとママが怒るから…』と言いながら通っているそうですよ」

このような状況は、子どもを「支配」しているとも考えられます。親は「子どものためにしていること」と捉えているため、教育虐待になっているとは気が付きにくいでしょう。

しつけることと支配することを区別しよう