親の介護が始まると、毎月の介護サービスの利用料がどこまでふくらむのかが気になります。介護保険には、ひと月の自己負担に上限を設ける「高額介護サービス費」があります。
厚生労働省が2026年9月29日に公表した「介護給付費等実態統計月報(令和8年6月審査分)」では、介護サービスの受給者1人当たり費用額は月20万6500円でした。要介護5では月32万9300円です。
この記事では、要介護度別の費用と高額介護サービス費の上限を並べ、親と子が住民票上の同じ世帯かどうかで戻る額がどう変わるかを、計算例で確かめます。
1. 介護サービスの費用は要介護5で月32万9300円。令和8年6月審査分の介護給付費等実態統計
まず、介護サービスに実際にかかっている費用を、介護給付費等実態統計月報の令和8年6月審査分で確認します。
1.1 介護サービスの受給者は490万3500人、1人当たり費用額は月20万6500円
令和8年6月審査分の介護サービスの受給者数は490万3500人で、前年同月より0.5%増えました。
受給者1人当たり費用額は20万6500円で、前年同月の20万5800円から0.3%増えています。
この費用額は、介護保険から支払われる保険給付額、公費負担額、利用者負担額を合わせた額です。受給者1人当たり費用額は、費用額を受給者数で割って求めています。
1.2 要介護1は月11万7400円、要介護5は月32万9300円
要介護度別に見ると、介護の必要の度合いが高いほど1人当たり費用額は大きくなります。
【介護サービスの受給者1人当たり費用額(月)】
- 総数:20万6500円
- 要介護1:11万7400円
- 要介護2:15万6700円
- 要介護3:24万3000円
- 要介護4:29万900円
- 要介護5:32万9300円
サービスの種類別では、施設サービスが33万2400円、地域密着型サービスが18万3200円、居宅サービスが12万6600円でした。
2. 高額介護サービス費の上限は、親本人ではなく「世帯」の住民税で決まる
介護保険の利用者負担は原則1割です。高額介護サービス費は、ひと月の利用者負担の合計が上限額を超えたときに、超えた分を介護保険から支給する仕組みです。
2.1 高額介護サービス費の上限は月1万5000円から14万100円まで
厚生労働省の介護サービス情報公表システムと福岡市の案内をもとに、上限額を並べると次のとおりです。
- 課税所得690万円以上の65歳以上の方がいる世帯:14万100円(世帯)
- 課税所得380万円以上690万円未満の65歳以上の方がいる世帯:9万3000円(世帯)
- 住民税が課税されている方がいる世帯(上記以外):4万4400円(世帯)
- 世帯全員が住民税非課税:2万4600円(世帯)
- 世帯全員が住民税非課税で、公的年金等収入金額とその他の合計所得金額の合計が82万6500円以下の方:2万4600円(世帯)、1万5000円(個人)
- 生活保護を受給している方など:1万5000円(個人)
「82万6500円」は2026年8月1日から使われている基準額です。
2.2 高額介護サービス費の「世帯」は住民基本台帳上の世帯
介護サービス情報公表システムは、上限の「世帯」を住民基本台帳上の世帯員と説明しています。上限は、その世帯で介護サービスを使った方全員の負担を合わせた額にかかります。
親本人の住民税が非課税でも、住民票上同じ世帯に住民税が課税されている子がいれば、区分は「住民税が課税されている方がいる世帯」の4万4400円になります。
一方、利用者負担の割合(1割・2割・3割)は、本人の合計所得金額と、同じ世帯の65歳以上の方の年金収入などで判定します。65歳未満の子の所得は割合の判定に入らないため、1割負担のまま上限だけが4万4400円になることがあります。
2.3 食費・居住費や福祉用具購入費は高額介護サービス費の対象外
上限と比べる利用者負担には入らない費用もあります。厚生労働省は、福祉用具購入費や食費・居住費などを除くとしています。
福岡市の案内では、住宅改修の利用者負担や施設での日用生活費も対象外として挙げています。
3. 【計算例】要介護5の平均費用32万9300円で、世帯ごとの高額介護サービス費を比べる
ここでは、要介護5の受給者1人当たり費用額32万9300円が、すべて1割負担の対象になったと仮定して計算します。実際の自己負担は、使うサービスの組み合わせや負担割合で変わります。
3.1 1割負担なら自己負担は月3万2930円
32万9300円の1割は3万2930円です。介護サービスを使う親が1人だけの世帯として、区分ごとの上限と比べます。
3.2 子と同じ世帯で子が住民税課税なら、高額介護サービス費は支給されない
住民税が課税されている子と同じ世帯なら、上限は4万4400円です。3万2930円は上限に届かないため、支給はありません。
3.3 世帯全員が非課税なら月8330円、年金収入などが82万6500円以下なら月1万7930円
世帯全員が住民税非課税なら、上限は2万4600円です。3万2930円との差の8330円が支給されます。
さらに親本人の公的年金等収入金額とその他の合計所得金額の合計が82万6500円以下なら、個人の上限1万5000円が適用されます。この場合の支給は1万7930円です。
同じ費用でも、世帯の区分によって戻る額は0円から月1万7930円まで開きます。12か月続けば、1万7930円は年21万5160円になります。
要介護5の受給者1人当たり費用額は月32万9300円で、1割なら3万2930円です。高額介護サービス費で戻るかどうかは、親本人の所得だけでなく、住民票上の世帯の住民税で決まります。
親がどの区分にあたるかは、住民票の世帯の構成と、世帯員それぞれの住民税の課税状況をそろえれば、市区町村の介護保険の窓口で確かめられます。
ここからは、両親がそろって介護サービスを使う場合の合算と、高額介護サービス費を受け取るための手続きを見ていきます。
高額介護サービス費の「世帯」は、同じ家に住んでいるかどうかではなく、住民票上の世帯で見ます。
親の住民票の世帯に誰が入っているかを家族で一度確かめておくと、上限の見当がつけやすくなります。
